こ れ で お し ま い
ま え が き
人生というのは、長く生きてきたけれど、
何もわかりませんよ。
こうしてただ生きてきたんだと思うだけで。
でもそれでいいと思う。
この百余年ばかりこの世に生きて、この宇宙、
人生、そういうものをわかろうなんて思ったって、
そりゃあ無理です。
でも人間には記憶力というものがあるから、昔こう
いうことがあったなと思いだしたりする。
人生には、これから訪れるかもしれない希望、現実、
過ぎた思い出というのがある。
希望どおりにいかないのが現実。
だけど、思い出は悲しかったことでも、楽しかった
ことでも、思い出があるということがとてもいい
ことだなと思いますね。
あのときはああいうことで楽しかったなあとか、思い出に
残ることがあるといい人生だったと思える。
何かをするときも、後々、印象として残るようになりたい
と思うようになって、人生への心意が生まれてくる。
時間というものをいい思い出になるように持てたら、
人間はいいなと思いますね。
著者: 篠 田 桃 紅( しのだ とうこう )
美術家、1913(大正2)3月28日生まれ。
5歳の頃から父に書の手ほどきを受け、桃紅と
いう雅号が付けられた。
戦後まもなく墨を用いた抽象表現という新たな
芸術を切り拓く。 1956年に単身渡米。
ニューヨークの一流ギャラリーで作品の発表を
続け、世界的な評価を得る。
作品は国内外の美術館、海外王室、宮内庁、
政府公共施設など数十ヵ所に収蔵されている。
2021年3月1日永眠。
著書に
「百歳の力」「103歳になってわかったこと」
「桃紅105歳好きなものと生きる」など・
2021年3月28日 第1刷発行
2021年5月20日 第5刷発行
発行所: 株式会社 講談社
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最終更新日
2021年10月28日 09時37分49秒
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