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テーマ:昔の日本映画(74)
カテゴリ:日本映画(1951~60)
今では死語となってしまったであろう「文通」をモチーフにした、井上大助と江利チエミの主演による、石坂洋次郎原作の映画化。脚本は松山善三。
ラピュタ阿佐ヶ谷で開催中の「添えもの映画百花綾乱 SPパラダイス」での上映を鑑賞。併映は石原慎太郎(!)主演の『婚約指輪』。 『チエミの婦人靴』 評価:☆☆☆ 雑誌の投稿をきっかけに文通をはじめた二人の、淡い恋とすれ違いを描いた作品。 私の若かりし頃は、当然、携帯電話やインターネットなどは存在せず、たいていの雑誌には、文通コーナーやペンフレンド募集の欄があって、手紙が(電話とともに)遠隔地の男女間のコミュニケーションに大きな役割を果たしていた。 今となっては、ある意味で大変に危険な手段な気はするが、社会がおおらかだったのか、情報が隔絶していたのか、たぶんそれなりにトラブルはあったのであろうが、大きく社会問題化することはなかったのだから、よい時代だったのだろう。 私自身は文通の経験も、したがってそれに伴う淡い想い出もないが、映画を見ながら、そんな昔々を懐かしく思い出した。 映画が作られた1950年代は、さらに、一般家庭に電話が普及する前だから、遠く離れた男性と女性が連絡をとる手段は手紙しかなく(さらに簡易・緊急の電報はあるか)、その辺りのすれ違いや、連絡のとれないやきもき感がよく描かれた映画だ。 といっても話の筋は単純で、役者のファンでもない限り、わざわざ見に行くほどではないだろうが、単純で素朴な分、ストレートに訴えてくるものがあるのも事実。 当然、白黒映画なので、“赤い”ハイヒールの設定が効果的でなかったり、50分という短い尺なためか、三ちゃんとトンちゃんの設定がもったいなかったりもするが、 また、高度経済成長の前、地方の小さな町の若者たちの有り様や時代状況をとらえるのには良い作品だと思う。 なお、映画には関係ないが、世代的に「赤い靴」「赤いハイヒール」というと、太田裕美を思い出してしまった。 【あらすじ】(ネタバレあり) 小さな町の靴屋でボロ靴の修理に明け暮れる又吉が出した、「僕はハイヒールが得意の靴作り、チエミファンの僕と文通を」という投書が雑誌『明星』に掲載され、向かいの中華料理屋の店員で親友の三ちゃんにからかわれる。三ちゃんは同じ店に勤めるトンちゃんが好きだった。 間もなく早川美代子という娘から、「自分は江利チエミに似ている、よければお互いに励ましあいましょう」という手紙が届いた。大喜びした又吉は、美代子への返事を書きながら、彼女と会える日を夢想する。 何度かの手紙のやりとりの後、美代子はぜひ一度会いたいと連絡してきた。実際にはハイヒールなど作ったことのない又吉は迷うが、三ちゃんやトンちゃんに励まされ、日曜日に彼女と会うことになった。 駅で美代子と待ち合わせした又吉は、彼女が手紙に書いてきた通り江利チエミに瓜二つなことに感激する。町を一望できる山に登り、映画を見て、再会を約束して別れる二人。 又吉は、美代子の憧れという赤いハイヒールをプレゼントしようと決心し、靴屋の主人に頼み込んで、翌日から主人と一緒にハイヒール作りに没頭した。そして再会の日、又吉が赤いハイヒールを手渡すと美代子は大変に喜んだ。 ところが、それ以来、美代子の手紙が途絶えてしまった。がっくりと落ち込む又吉。三週間後、彼女から速達が届く。プレゼントの翌々日、又吉のハイヒールを履いてお洒落して出かけたところ、靴の踵が壊れたために足を骨折してしまい、寝ていたという。又吉は慌てて主人に休みをもらい、謝るために美代子の家に飛んでいった。 松葉杖姿で出てきた美代子は、自分の家は貧乏で父は飲んだくれ兄は不良、自分はしがない女工であることを隠していたこと、又吉の投書を見て、ハイヒールをプレゼントしてもらえるかも知れない、と思ったことを打明けた。又吉も、ハイヒールは初めて作ったと自分の嘘を打ち明けて、彼女に謝罪した。 「私たち、どんなに貧乏だったりしても、お互いに嘘はやめて、隠しごとはなくしましょう」という美代子の言葉に、又吉は再び靴の修理に励むのであった。 『チエミの婦人靴』 【製作年】1956年、日本 【製作】東宝 【監督】鈴木英夫 【原作】石坂洋次郎 【脚本】松山善三 【撮影】山崎一雄 【音楽】服部良一 【出演】江利チエミ(早川美代子)、井上大助(柴谷又吉)、江原達怡(三ちゃん)、青山京子(トンちゃん)、中村是好(丸井高助)、出雲八枝子<出雲八重子>(丸井みね)、佐藤喜美子(丸井久子)、桜井巨郎(郵便屋) ほか お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007.05.01 12:03:48
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