「オリエントの神々」序章12・天地創造と人間の創造
中東・オリエントの神話の特徴として、先ず挙げられるものに、「旧約聖書」の創世記にも見られる天地創造と人間の創造神話があります。ヘブライ(ヘブル)びとはシュメールよりかなり後代の、しかも中東西部に展開した民族ですが、彼等はノアの子孫系列の一つ「セム族」に属し、父ノアの異母兄弟ハムの知られざる別系の子孫シュメールとの関連も当然に見られるわけで、有名な「ノアの方舟」の後に、その子孫が東に移りシナルの地に平野を得てバベルの塔を建てたと語られ、そのヘブライ神話にある「シナル」というのが「シュメール」であるとされています。その天地の創造の物語ですが、初めに「天」と「大地」が造られ、そして「チグリス」「ユーフラテス」の河が造られ、そして天には「天神アヌ」「大気の神エンリル」「太陽神ウトゥ」「大地と水の神エンキ」がおり、神々は相談して次ぎに何を創ろうかということになって「神々に仕えるものとして人間を造ろう」と云う事にり、「女神アルル」を召し出して人間を造らせ、そこに「穀物や知恵の神ニバダ」を送ります。ここにある「人間を神々に仕えるものとして創造した」という話しはヘブライ神話での「アダムとエバ」の物語にそのまま現出しています。また人間界に穀物ばかりか「知恵」が必要であったというこの神話はヘブライ神話での「人間が禁断の木の実、つまり知恵の実を食べてしまい地上に追放された」という物語と相通じています。