「霊魂論」エチカ詳解79
アリストテレスによれば、世界内存在に何に故をもって其れが存在しているのか、何に故に其れが生じたのかの源元(みなもと)を知らなければ、人間は物事を知っているとは云えないと思惟しています。事物の存在の原因を重視する此の思考法は、アリストテレスが哲学のみならず自然科学の研究を探求している経緯で、すべてが目的を持って整合的に動いていることを確信し、何事にもそれが存在するに至った原因がある筈だと捉えた思考の産物です。此の思考法は相対性理論のアインシュタインにも影響を与えています。彼のアリストテレスは、原因とは質料因・形相因・起動因・目的因の四つの要素からなるという四原因説を説きます。質料因とは其の事物の素材となっている原質だと示します。現代科学の素粒子論からは些か心許無いのですが、事物の素材だということで意味合い的には合点がゆきます。形相因は、其の事物がその事物であるための本質的構造を示す。単純に例えれば目玉焼きの形相因は、平らに広がった白身が黄身を囲んで目玉模様を作り出している形であり手をくださないならば単なる因相におわります。質料因と形相因はその事物自体が持っている内在因であり、「その事物は物質的にどのような特徴を持っているか」を示します。起動因は、動力因亦は作用因などとも呼ばれ、その事物の存在を引き起こしたものを示します。その事物が置かれている「状況」を生み出した動力そのものです。現代の日常会話で「原因」という言葉を使った場合は、大抵この起動因を意味しています。目的因は、その事物が存在している目的を示すとしています。起動因と目的因は、外部からその事物の運動や変化を引き起こす外在因であり、「その事物は何の目的でその場所に存在しているのか」の答えとなっていおり、此の事に関してのスピノザの「目的論批判」の対象ではなく、寧ろ演繹論そのものであり「エチカ」の論理です。スピノザの目的論批判の矛先は人間の源元が空白的な「自由意思」の目的概念にあるのです。
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