「霊魂論」エチカ詳解86
スピノザは神を原因としてそこから事物が生じるという起動因と、神がそうした事物を産出するように働く作動因とを同一視、同一概念だと看做しています。勿論のこと、此の神を起因とする作用は他から決定あるいは強制されて生じるようなものではなく、ただ神自身の本性にのみ由来する能動的なものです。此の事により、スピノザの作出原因とは、第一義的には神が自身の本性そのものによって自然の各事物を産出するような能動的な力を示します。更には、作出原因は有限な個物相互間の作用をも規定するものであると思考しています。何故なら、神の無限の力は、有限的事物の存在のみにとどまらず其の作用の原因でもあるからです。此のスピノザの思考は、とある個物の作用・運動は第一起動・作動者としての神存在によって創造と同時に宇宙全体に導入された運動が外的な事物の連鎖を経て当該の個物に伝達・受容されることによって生じるというデカルト的な運動の起源説、其れだけに尽きるものではありません。勿論のこと、世界内存在のありとあらゆる有限な個物は、他の個物によって形成される因果系列から決定されない限り、存在あるいは作用することは出来得ないできないのですから、外からの作用は個物の存在および作用の必要条件でしょう。其処でスピノザは更に付け加えて言います。ます。延長の概念のみから、諸物体間の運動の相互伝達のみからいかにして物体的事物の多様性が導出されるかというチルンハウス(Ehrenfried Walter von Tschirnhaus/1651-1708)ドイツの数学者にしてライプニッツ、ニュートン、スピノザ、ホイヘンスらと交友ライプニッツとは生涯の友人であった彼の問い「諸物体間の運動の相互伝達のみからいかにして物体的事物の多様性が導出されるか」という彼の問いに対して答えます。外からの作用は個物の存在および作用の必要条件であるだけでは充分ではないのですと答えています。
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