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コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~

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風とケーナ

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紅子08@ Re:コンドルの系譜 第十話(152) 遥かなる虹の民(10/23) New! おはようございます! いつもありがとうご…
neko天使@ Re:コンドルの系譜 第十話(152) 遥かなる虹の民(10/23) New! こんばんは。 いつもお優しいコメントをあ…
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これまでの主な登場人物


登場人物イメージイラスト


物 語 目 次


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これまでのストーリー


第一話 ビラコチャの神殿


第二話 邂逅(1)


第二話 邂逅(2)


第三話 反乱前夜(1)


第三話 反乱前夜(2)


第三話 反乱前夜(3)


第三話 反乱前夜(4)


第三話 反乱前夜(5)


第三話 反乱前夜(6)


第四話 皇帝光臨(1)


第四話 皇帝光臨(2)


第四話 皇帝光臨(3)


第四話 皇帝光臨(4)


第五話 サンガララの戦(1)


第五話 サンガララの戦(2)


第五話 サンガララの戦(3)


第五話 サンガララの戦(4)


第六話 牙城クスコ(1)


第六話 牙城クスコ(2)


第六話 牙城クスコ(3)


第六話 牙城クスコ(4)


第六話 牙城クスコ(5)


第六話 牙城クスコ(6)


第六話 牙城クスコ(7)


第六話 牙城クスコ(8)


第六話 牙城クスコ(9)


第六話 牙城クスコ(10)


第六話 牙城クスコ(11)


第六話 牙城クスコ(12)


第六話 牙城クスコ(13)


第七話 黄金の雷(1)


第七話 黄金の雷(2)


第七話 黄金の雷(3)


第七話 黄金の雷(4)


第七話 黄金の雷(5)


第七話 黄金の雷(6)


第七話 黄金の雷(7)


第七話 黄金の雷(8)


第七話 黄金の雷(9)


第七話 黄金の雷(10)


第七話 黄金の雷(11)


第七話 黄金の雷(12)


第七話 黄金の雷(13)


第七話 黄金の雷(14)


第八話 青年インカ(1)


第八話 青年インカ(2)


第八話 青年インカ(3)


第八話 青年インカ(4)


第八話 青年インカ(5)


第八話 青年インカ(6)


第八話 青年インカ(7)


第八話 青年インカ(8)


第八話 青年インカ(9)


第八話 青年インカ(10)


第八話 青年インカ(11)


第八話 青年インカ(12)


第八話 青年インカ(13)


第八話 青年インカ(14)


第八話 青年インカ(15)


第八話 青年インカ(16)


第八話 青年インカ(17)


第八話 青年インカ(18)


第八話 青年インカ(19)


第八話 青年インカ(20)


第八話 青年インカ(21)


第九話 碧海の彼方(1)


第九話 碧海の彼方(2)


第九話 碧海の彼方(3)


第九話 碧海の彼方(4)


第九話 碧海の彼方(5)


第九話 碧海の彼方(6)


第九話 碧海の彼方(7)


第九話 碧海の彼方(8)


第九話 碧海の彼方(9)


第九話 碧海の彼方(10)


第九話 碧海の彼方(11)


第九話 碧海の彼方(12)


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2006.10.30
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深夜遅くに、ロレンソに伴われてインカ軍に帰還したトゥパク・アマルの姿を見て、側近たちはもとよりインカ軍の兵たちは皆、深い安堵に包まれた。

「トゥパク・アマル様、よくぞご無事で!!」

あの勇猛なディエゴも、あまりに深い安堵の念から、この時ばかりは殆ど泣き出さぬばかりの面持ちである。

感情を統制することにかけては他に類を見ないあのビルカパサさえ、「トゥパク・アマル様、本当に良かった…。」と、思わず、その目が潤んでいたほどであった。

そんな側近や兵たちの心を映し出すかのように、先刻までどんよりと曇っていた空も、嘘のように今はスッキリと晴れ渡り、明るい月がインカ軍の陣営を照らし出している。


側近や兵たちに、包み込むようなあの眼差しを返しながら、「皆の者には、ひどく心配をかけた。かたじけないことであった。」と、トゥパク・アマルが深く礼を払う。

それから、彼はロレンソに改めて視線を注ぎ、「そなたの導き、誠に的確であった。深く礼を申すぞ。」と、クスコに辿り着いた時と同様に丁寧に礼を送った。

ロレンソはとても恭しく頭を垂れ、「わたしは、ただ単に道案内をしたのみ。そのような身に余る御言葉、勿体(もったい)のうございます。」と、真に深く恐縮している。


そんなトゥパク・アマルとロレンソを、今、アンドレスもまた、深い安堵と敬意の眼差しで見守っていた。

(トゥパク・アマル様、ロレンソ、無事に戻られて、本当に、本当に良かった…!!)

アンドレスの揺れるような眼差しを受けて、トゥパク・アマルもそれに応えるように穏やかな微笑みを返す。


アンドレスはそのトゥパク・アマルの視線に深く感じ入りながらも、しかし、次の瞬間、胸に何かが突き刺さるような激しい感覚に憑かれ、無意識にその目をそらした。

トゥパク・アマルは、そのようなアンドレスの様子を見逃さない。

彼はすっと目を細めて、真っ直ぐアンドレスに視線を注ぎ続ける。

アンドレスは、その視線に耐えかねるように、大柄なディエゴの陰に、まるで逃げ込むように身を隠した。


突然、己の傍に身を翻してきたアンドレスを、当のディエゴはやや鬱陶しそうに、その太い腕で軽く払うようにして、再び、トゥパク・アマルの方に向き直る。

「それで、フィゲロア殿との話し合いはどうなられましたか?

トゥパク・アマル様。」

トゥパク・アマルはまだアンドレスの方向を見ていたが、ゆっくりディエゴの方に視線を戻して、「少々、面倒な方向になった。」と、彼はありのままの経過を説明した。

「そうでしたか…。」と、側近たちは、やや肩を落として溜息をつく。


そんな彼らにトゥパク・アマルは落ち着いた声で、「案ずるな。」と言いながら、全員の方を丁寧に見渡した。

「あの者ならば、必ず、わかってくれる時がこよう。

それまで、我々も辛抱だ。」

トゥパク・アマルは静かにそう言った後、今度は力強いゆるぎない声に変わって、「この後も、今は『敵』といえども、褐色兵たちに決して刃を向けてはならぬ。そのことだけは、しかと肝に銘じよ。」と言う。

皆、「はっ!!」と、深く頭を下げて、恭順を示した。

トゥパク・アマルは、再び、深く頷いた。


それから、一応、その晩は散会となり、各人は己の天幕に戻っていった。

他の側近たちに紛れながら、いつになく素早くトゥパク・アマルの元を立ち去ろうとするアンドレスを、トゥパク・アマルが静かに呼び止める。

「アンドレス。」

アンドレスは、ギクリとした横顔で、しかし、足を止めざるをえない。


普段は、トゥパク・アマルの前であろうと、敬意を払いつつも、その態度は堂々としているアンドレスには珍しく、今はおずおずと視線を漂わせるその姿に、トゥパク・アマルは「何かあったのか?」と問うてくる。

「いえ…。」と、視線を微妙にはずしたまま、アンドレスは「今宵はこれにて失礼いたします。」と、最後にビルカパサが出て行くタイミングを逃すまいとするように出口に踏み出しかけた。

「待ちなさい。」と、トゥパク・アマルがはっきりとした声で呼び止める。


ビルカパサも、ちらりとこちらに視線を投げたが、トゥパク・アマルが「そなたは、行って構わない。」という視線を送ると、ビルカパサは恭しく一礼をして、そのまま天幕を後にした。

トゥパク・アマルの元に一人残されたアンドレスは、不安定に瞳を揺らしながら、しかしながら、この期に及んでは、ともかくも平静な表情を装おうと無理に笑顔をつくろうとする。


「フランシスコ殿のこと、そなたも気にかけていたようだが…。」

トゥパク・アマルのその言葉に、いきなり直球を投げつけられたような感覚に襲われ、アンドレスの不自然な笑顔は、いっそう引きつった。

「やはり、何かあったのだな。」と、トゥパク・アマルは低く言うと、貫くような目でアンドレスの瞳の奥を覗いた。

「何があったのか、申してみよ。」

 

◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆

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Last updated  2006.10.30 19:05:37
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