「人間は自由なんだから-ゲント現代美術館コレクションより」展に行ってきたぞな
金沢21世紀美術館で8月31日まで開催中の「人間は自由なんだから-ゲント現代美術館コレクションより」展です。 金沢市とベルギーのゲント市の姉妹都市提携35周年を記念した、この展覧会。昨年は各地で「ゲント美術館名品展」が開催されておりましたが、この現代美術館も、そのゲント美術館の一部として始まったらしいです。 詳しい経緯や、展覧会の意義などは金沢21世紀美術館のHPをご覧ください。 この展覧会、なかなか良い感じでした。通常「○○美術館展」ということになると、どうしても展覧会内容が散漫になりがちなのですけど、「人間は自由なんだから」という「自由とは何か」をテーマとしてコレクションをチョイスしてきているのが、全体的に特徴を持たせているように思えました。 アルトゥール・バリオというブラジルのアーティストの「終わりのない」というインスタレーション。 これには度肝を抜かれましたね。21世紀美術館の円筒型の部屋なのですが、床一面にコーヒーがぶちまけられ、中央や部屋の隅にはパンが積まれ、周りの壁は所々壊され・・・という情景が暗闇の中で白熱灯に照らされている作品。 見学者は、その部屋に入って散策するのも良し、置いてあるソファに座り込むのも良し。 美術館のHPに写真がありますので、見てください。 もう・・・・これには、参りましたね。ここまで突き抜けてくれると、ほんとうに。 体験としてのインスタレーションとして、強いパワーを持った作品で、こりゃその場で体験しないと得られないですよ。 バリオは「軍事政権下、軍や軍警察による逮捕、拷問、殺人が頻発する状況において、白い布の袋に血液や爪、毛髪、唾液、尿、糞を入れて紐で縛り、路上や海岸に放置する作品を製作・それを見る人の反応を写真亜フィルムで記録した」(カタログより) けっこう、昔から突き抜けた感じのする人ですね。 他には・・・ブルース・ナウマン。ビデオ作品で、白人女性と黒人男性が、それぞれ映っているテレビ。「グッド・ボーイ バッド・ボーイ」という作品。「I was a good boy, You were a good boy, We were good boys」と、まるでこうやって書いてみますと中学生のの英語のようにみえますが、それを、色々な表情や声の調子で表現していく作品です。 本当に、こうやって書いているとつまらなそうですが、言っている人の人種、性別、そして態度(途中でタバコ吸ってしまったり)、表情、声で、同じ言葉がどれだけ多様な意味を持つか、という作品です。 そういえば、パナマレンコの作品も数点、展示してありました。パナマレンコといえば、現在、東京の木場公園で開催中のカルティエ財団展にも、屋外に展示されている潜水艦を作った人です。 こちらには、UFOみたいなのと、プロペラがたくさんついた飛行機が展示されておりますが・・・。うーん・・・。彼のナンセンスさとか、おもちゃ感覚は面白いと思うし、作品の造形も「これで飛んじゃうの?」というサプライズがあって脱力系の面白さがあるのですが・・・ちょっと突き詰め方が甘いような。 できれば「71年のソンズベーク野外彫刻展に参加する際、これ(筆者注:飛行船アエロモデラー。未出展作品)に乗ってアントワープから会場まで移動することを試み失敗」(カタログより)のように、乗ってもらわないと作品として面白くないのかなあ・・・。 失敗してもいいので、そこまで出してもらわないと、どうも見学者としては、作者の腰が引けているように見えてしまいます。そこ成功/失敗を見ることで、科学や技術と人間の関係とかが出てくると思うのですが、始めから実現不可能なモデルを見せられても、ウケ狙いのように見えてしまうし・・・。 そこまでやるか!というところまで、やっぱり見せてもらいたいものです。ちょっとシャレがきついですけど。