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テーマ:試写会で観た映画の感想(679)
カテゴリ:洋画(は行)
原題: THE HURT LOCKER 監督 : キャスリン・ビグロー 出演 : ジェレミー・レナー 、 アンソニー・マッキー 、 ブライアン・ジェラティ 、 レイフ・ファインズ 、 ガイ・ピアース 、 デヴィッド・モース 試写会場 : 科学技術館サイエンスホール 公式サイトはこちら。 <Story> 2004年夏。イラク、バグダッド郊外。 アメリカ軍の爆発物処理班は、死と隣り合わせの前線の中でも最も死を身近に感じながら爆弾の処理を行うスペシャリストたち。 ある日も爆弾の処理を行い、退避しようとした瞬間に突如、爆弾が爆破。 一人が殉職してしまう。 新しい中隊のリーダーに就任したウィリアム・ジェームズ二等軍曹(ジェレミー・レナー)は、基本的な安全対策も行なわず、まるで死に対する恐れが全くないかのように振舞う。 補佐に付くJ.T.サンボーン軍曹(アンソニー・マッキー)とオーウェン・エルドリッジ技術兵(ブライアン・ジェラティ)は、いつ死ぬかもしれない緊張感、特に一瞬の判断のミスが死に直結する爆発物処理の任務のなかで、徐々にジェームズへの不安を募らせていく。 彼は、虚勢を張る只の命知らずなのか、それとも勇敢なプロフェッショナルなのか…。 そんな男たちの想いとは無関係に、激しい戦闘行為が繰り返される日常は続き、爆弾処理の毎日が過ぎていく…。 ブラボー中隊、任務明けまで、あと38日。 [ 2010年3月6日公開 ] ![]() ハート・ロッカー - goo 映画 <感想> キャサリン・ビグロー作品は初めての鑑賞。 今年のアカデミー賞の目玉ということでこれはぜひ観たかった。 早々に当たってラッキーです。 自分的には、本命?の『アバター』よりもこちらの方がたぶん好きなジャンルなんだろうなと事前に予想。 この戦争の是非を問うような議論がどうしても前面に出がちだけど、 本作はそれにはあまり言及せず、 あくまでも「爆発物処理班の兵士たちの日常」を描くことを選択した。 「そこに爆弾がある、だから俺たちは任務としてそれを処理する」という信条の下、兵士たちは淡々と爆弾処理をする。 だが、そこに横たわる様々なものを映画は写し出す。 まず、爆発物処理に当たって味わう恐怖。 これは、爆弾処理の時に爆発するかもしれないという恐怖と、処理の瞬間を狙って新たに自分が攻撃されるかもしれないという、2つの恐怖である。 もちろん周囲で援護しているが、警戒していたとしても、一般市民に紛れてしまったら一体周囲の誰が敵なのかを見分けることは容易ではない。 遠隔操作が簡単になってからは、ちょっとした相手の動きを見逃すだけでも死に繋がる。 それを瞬時に判断しないといけない極限状態に常に晒されている彼らの心情。 これは言葉で表すことは難しい。 その恐怖、緊張感を増幅させているのは、背景の音楽(というか、この場合は効果音になるのだろうか)。 不協和音を中心に、否応なしに観客もその極限へと連れて行かれてしまう。 このあたりは実にうまい。 その証拠に、極限状態のシーンから普段基地にいる場面に移ると、こちらまで体中が脱力するくらいである。 普段基地で過ごす彼ら。 しかし、ただ単に開放的に過ごしているわけではなく、その過ごし方にもどこか暴力的、刹那的な部分があるのは、 恐らく任務によって荒んだ心の状態が大きく影響している。 自分が置かれている現状と、自分の普段の生活を引き比べるとき。 そして究極の状態から生還した時。 生きているという実感がありありと見えてくるのだろう。 1つの任務に向かう時、その向かい方も人それぞれであり、 その統率方法を理解するのにも途方もない道程が必要ということがわかる。 従来のやり方に従わないジェームズ二等軍曹。 彼のやり方に周囲は苛立つ。 瞬間の判断が生死を分ける戦場では、いい加減という概念はあってはいけないはずなのに、自分がくぐってきた修羅場の経験を頼りに切り抜けていくジェームズ。 一見破滅的に見える彼の言動の裏にも、実は滲み出てくるものがあり、それが戦場で交流した人たちへの鎮魂となってくる場面にはやられてしまった。 非人道的なことを目の当たりにした時、助けてやりたいと思う本能がある。 しかしながら助けてやれない非情な現実の前に残るのは、虚しさと怒りだけである。 最初はサンボーンが主役と思わせるが、実はそうではない作りになっている。 ジェームズの視点と、サンボーン、エルドリッジの視点の食い違いは、個々の兵士の戦争への対峙の仕方が全く異なる事実を表している。 ドライで刹那的に見えても、自分を待っているもののためには、生還したいという欲求が先立つ。 何故ここにいる? という問いに対しては、様々な理由があるのだろうけど、それを支えているのは紛れもなく、「自分が守るべきもの」である。 そしてここに描かれていることは、現実に世界で起こっていることであるというスタンスも、忘れてはいけないのだろう。 おまけですが、ガイ・ピアースとレイフ・ファインズは、今回は脇役に徹しています。 でもこの使い方は結構思い切っていますね。 贅沢です。 思わぬ場面で登場なので、お見逃しなく。 *********************************** 今日の評価 : ★★★★☆ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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