蒲田行進曲
総合点:87 お勧め度:★★★★(ストーリー展開)=9 (発想)=9 (インプレッション)=9●1982年 日本(松竹) 監督:深作欣二 製作:角川春樹 プロデューサー:佐藤雅夫 斎藤一重 小坂一雄 原作・脚本:つかこうへい 撮影:北坂清 音楽:甲斐正人 出演:松坂慶子(小夏) 風間杜夫(銀四郎) 平田満(ヤス) 高見知佳(朋子) 原田大二郎(橘)●ラーラシドーシドシ・ラーラシドーシドシ・ミーミー・ミーレドシラというあの主題曲が非常に印象に残る映画です。題名も好い!●時代劇のメッカ・京都撮影所では、折りしも「新撰組」の撮影がたけなわ。颯爽と土方歳三に扮して登場する、その名も高い「銀ちゃん」。彼は役者としての華もあり、確かに人情家でもあるのだが、感情の起伏が激しく時に激昂するのが玉にキズ。しかし、大部屋俳優のヤスはそんな銀に憧れ、或る意味、惚れこんでいる。ヤスの目からすれば銀ちゃんは悪人ではなく、一流の美学を持っているだけなのだ。 或る日、銀ちゃんは女優の小夏を連れてヤスのアパートに遣ってくる。彼女は銀ちゃんの子供を身ごもっていて、スキャンダルを怖れ、ヤスと一緒になってヤスの子供として育ててくれと言うのだ。何とも身勝手な要望だが、ヤスはそれを承諾する・・・。●配役の妙があるのです。銀ちゃん役の風間さんも好ければ、ヤス役の平田さんがまたいい! 松坂慶子さんも、シチュエイションに嵌っている! この三者の微妙な関係が、この物語を非常に旨く進行させます。 金のないヤスが銀ちゃんと小夏のために、非常に危険な「階段落ち」をやる決心をする。「階段落ち」は「新撰組」のクライマックスで、斬られた役者が数十メートルもの階段をころげ落ちて、主役に華をもたす危険な場面のこと。これに臨むヤスの心意気も、不安の表情も、まあ、こういう職業についた男達の、何とも不思議な、周囲を笑わせさえする「危機に出会ったときの対応の様子」が、大変旨く描かれていて、その才にはつくづく参りました。 今も蒲田駅では、電車の出発合図にこの曲が使われています。日本映画にもいいものはあります。