どら平太
評点 ★★★☆ 配役は上手い。が、だいぶ直線的な展開ですね、古い時代を感じさせる。藩の経済に関する設定が少し・・・。【中古】 どら平太/(邦画),役所広司,浅野ゆう子,宇崎竜童,片岡鶴太郎,岸田今日子,市川崑(脚本),黒澤明 【中古】afb●2000年度 日本映画 監督:市川崑 脚本:四騎の会(黒澤明、木下恵介、市川崑、小林正樹) 原作:山本周五郎 出演:◇望月小平太/役所広司 小藩の役人の次男坊◇こせい/浅野ゆう子 江戸・深川の芸者◇仙波義十郎/宇崎竜童 小平太の幼馴染、藩の大目付◇安川半蔵/片岡鶴太郎 見回り役◇大河岸の灘八/菅原文太 大親分◇巴の多十/石倉三郎 親分◇継町の才兵衛/石橋蓮司 親分・金貸し●あらすじ ある小藩では、財政難を補うために「壕外」と呼ばれる無法者の町から莫大な上納金を集めていた。その上納金は藩の重職たちの懐に入り、壕外を束ねる三人の親分は無法を黙認され、その無法を暴こうとした町奉行は次々に辞職に追い込まれてきた。そんな中、江戸屋敷から新たな町奉行として望月小平太が赴任してくる。彼は居並ぶ重職たちの前で「壕外の大掃除をする」と宣言し、望月に全権を委任する藩主のお墨付きを見せつける。しかし、望月は江戸では遊び人として知られ、その評判を聞いていた国許でも人望がなく、若手藩士からは悪評が原因で命を狙われていた。友人の安川半蔵は、「誰かが意図的に悪評を流した」と考えるが、望月は「仕事をしやすくするために、もう一人の友人・仙波義十郎に悪評を流してくれるように頼んだ」と返答する。 ●感想 見る前は、昭和初期の田舎を舞台にした少年の物語かと思っていました。実際は、山本周五郎の「町奉行物語」を題材とした時代劇でしたね。 物語の前半、どら平太こと小平太が田舎に町奉行として赴任してくる頃は、なかなかの映像で風情があって良いなあ、と感じましたが、幼馴染が大目付の要職にありながら藩で大規模な不正が行われている、という辺りで、既に真犯人というか背後の人物がその大目付であることは判明してしまっていて、少し興味が落ち、その後の展開で、「藩の中に武士が入れない壕外」という場所があって荒くれ者が棲み、でも、そこからの収益が藩の重職に流れている、と語られるその構造そのものに、やはり無理があるような気がしました。そういう場所があるならあるで、3親分がもっと凄い感じで自分らのテリトリーを守る算段をしなければおかしいし、どら平太の繰り為すヘタな芝居に騙されて簡単に親分たちが落ちて行くなら、最初に構想されるやくざ者の世界が作る経済圏は構築できていない筈。どうにも小説用に作った感のある世界構築で、映画から覚めてしまいました。 が、細かな場面の演出はそこそこ良く、見ては行かれます。曲者ぞろいの重職の前でのどら平太の堂々とした態度には痛快感があるし、壕外での灘八親分の子分衆との戦いも絵にはなっています(ただ、一人で何十人も倒すのは噓臭い)。立ち回りも考えられてはいますね。 一方、主犯の最後の命じまいですが、立ち回りは無くて静かに閉じる、そこにも実は無理があるように感じました。そういう結論なら、何も「壕外」みたいな世界を作って物語を大々的に展開する必要もないでしょう? ⇒壕外システムがそんなに儲かる美味いシステムなら、それを上手く組み込んだ藩の経済体制を藩役人一致団結で作ってしまうような、「現代的資本主義に則った、幕府論理=ご正道多少無視の一大世界」を構築して生き残って行くような発想の方が、面白かったかと思うんですがね・・・。いかがでしょう?