2019年01月の記事一覧 | 映画ドラマ・千一夜

迷わないで

評点　★★★　脚本・演出ともに緻密性に欠ける　心理的にもだいぶ無理があるなあ・・・。迷わないで DVD-BOX 1 [DVD]●2009年度　韓国ドラマ　全98話　SBS　演出：ハン・ジョンファン　脚本：カン・ユンギョン　オ・ソンニョン　出演：（役名が先）◇チャン・スヒョン／イ・テイム　女性パティシィエ◇ハン・テウ／イ・サンウ　天才パティシエ　デリシューの開発チーム長となる◇チェ・ミンヨン／キム・ヨンジェ　スヒョンの恋人　司法試験に合格する◇オ・ソナ／ペ・ミニ　スヒョンの高校生時代からの友人◇イ・ジョンス／イ・ヘスク　ミンヨンの母　デリシューの大株主◇チャ・ヨンナン／キム・ヘオク　スヒョンの母　一人で姉弟を育てる◇チャン・スホ／キム・ヒジュン　スヒョンの弟　モデル志望◇チャ・ダルス／キム・ヒョンボム　ヨンナンの弟●あらすじ　8年付き合っていた恋人ミンヨンからプロポーズを受けたスヒョン。だが、彼の母ジョンスは、貧しい家庭出のスヒョンを受け入れず、結婚に強く反対する。あれこれ悩んだミンヨンは肝臓を傷め、意識のない状態に。愛する息子のため必死に移植提供者を探すジョンスだが、身近では誰もが反対し、スヒョンのみが、結婚目的ではなく愛のために、と言って提供を受諾する。　一方、スヒョンの友人ソナは、ミンヨンとの一夜で妊娠し、妻の座を得ようとする。手術の日、ソナはそのことをスヒョンに告げ、スヒョンは疑惑に包まれたまま手術を受け、意識が戻らないまま3年の月日が経つ。●感想　よくまあ、４人の出演者にまつわる話題だけで98話ものお話が展開できるなあ、と思うのですが、話はあっちに行ったりこっちに行ったりして、こねくり回し的展開でした。テホがパティシエとして厳しいのは分かるけれども、どうも演出があまり上手くなくて彼の性格とのピッタリ感がないし、それまで勤めていたホテルになんの連絡もなくスヒョンが3年休むなんて、そんなことってありますかね・・・。随所、無理のある部分が多くて、荒い演出に感じました。　それは医療の部分の演出もそうで、医者の言う移植の理屈の話の辺りもすごく大雑把。内容が雑です。また、セットも展開もその辺のものでやっていて、かなり低予算で作っている、というのは、すぐに気づいてしまいます。スヒョンが意識のない時に見る夢などは上手に出来ているので、もう少し緻密にして話を絞ると、もっと良かったかな？　愛憎すさまじい割には、最後あっさり全員幸せ的に終わり、まあ、何とも、と思ったお話でした。●加えていえば、イ・サンウさんは笑顔がすがすがしいですね、羨ましい。イ・テイムさんも魅力がよく出てました。

少年マイロの火星冒険記

評点　★★★☆~★★★★　物語の発想が良い。昭衛40年代のSF映画を彷彿とさせる雰囲気で、どこか懐かしかった。少年マイロの火星冒険記 [ セス・グリーン ]●2011年度　アメリカ映画　ディズニー　監督：サイモン・ウェルズ　脚本：サイモン・ウェルズほか　原作：バークリー・ブレスト「少年マイロの火星冒険記」　声の出演：セス・グリーン、ダン・フォグラー、ジョーン・キューザックほか●あらすじ　高度な文明を誇る奇跡の星、火星。そこではすでに、地球の家の家族が生活する映像さえも取得できるような技術が開発されていた。　9歳の少年マイロは、ゴミを捨てなさいとか、ブロッコリーを食べなさいとか、口うるさいママといつもケンカばかり。ところが、本を読んで居眠りしている間に何者かが家に現れ、ママを連れさらおうとする。必死に追いかけたマイロは、背中のシャツを引っかけられて、ついにはロケットで未知なる宇宙に飛び出してしまった。　やがてロケットが到着した場所は火星。そこでマイロは捕らえられたママを発見するが、「侵入者」として地下墓地にある未来型監房に閉じ込められてしまう。何とか脱出した先は、地下のゴミ捨て場。誰もいないと思っていたその場所には、言葉をしゃべらない奇妙な人間達がいた。　背中に付けられた発信機で追跡を受けるマイロは、危ういところを飛行船に助けられ、陽気で騒々しいメカ・オタク、しかも英語を喋るグリブルという男と知り合いになる。マイロはグリブルの助けを借りて、何とかママを探し出そうとするのだが・・・。●感想　物語全体が、昭和40年代に流行っていたSFドラマの発想で、すごく懐かしい感じがしました。マイロの活動場所となるのが火星であったり、そこに飛んで行く宇宙船が流線型の一体ボディでシンプルなデザインであったり、火星の文明が地下にあったり・・・。その当時、最高水準であった発想をすべて取り入れ、そこに現代ＣＧの技術を駆使して火星人を造形して色付けしていおり、それは誰でも一度は考えつく方法だろうけれども、実現するにはベースとなる技術も必要。諸所、映像はしっかりしていて、見てゆかれました。　マイロが遭遇することになるグリブルは中年男性ですが、心は少年のまま。この存在も「オズの魔法使い」のライオンさんのようなイメージで、物語というのはみな、どこかで繋がってますね！●火星人であるのに、地球の文化を知ってグリブルに協力する女性が出てくるとかして物語は上手く進行します。地下のゴミ捨て場の絵などはかなりよく書き込みされていて、エレベーターや空中線でマイロたちが空間を上下する感覚は、スターウォーズと同じような雰囲気。全般的にこじんまりしていますが、家族で楽しめるSFアニメという感じで、子供向け好編かと思いました。　さすがにディズニー、はずしませんね・・・。

アンゴルモア元寇合戦記

評点　★★★★~★★★★☆　この時代をテーマに選んだ着眼点が良い。物語進行が上手く、少し短いながら大変良い出来と思いました。九州での戦いなど、（全然別の登場人物で良いから）続編もあるといいなあ・・・。アンゴルモア元寇合戦記 DVD BOX 上巻 [ 小野友樹 ]●2018年度　日本アニメ　原作：たかぎ七彦『アンゴルモア元寇合戦記』（KADOKAWA 「Comic Walker」連載）　監督：栗山貴行　助監督：羽原久美子　アニメーション制作：NAZ　製作：アンゴルモア元寇合戦記製作委員会　声の出演：◇朽井迅三郎：小野友樹◇輝日：Ｌｙｎｎ◇鬼剛丸：小山力也◇白石和久：乃村健次◇張明福：斎藤志郎◇阿無志：堀江瞬◇火垂：竹内良太◇導円：小林裕介◇男衾三郎：浜田賢二◇宗助国：柴田秀勝◇阿比留弥次郎：鈴木達央◇少弐景資：立花慎之介◇長嶺判官：小野賢章●あらすじ　文永11年（1274年）、鎌倉武士・朽井迅三郎は或る事件により、罪人として対馬へ流刑となる。島を治める地頭代の娘・輝日は、対馬へたどり着いた流人たちに、蒙古の大軍勢が対馬へ迫っていることを伝え、ある命令を下す。「さぁ、お前たち。この対馬のために、死んでくれ」死罪となる代わりに捨て石となれと命じられ、是非も無い流人たちは、蒙古軍との戦いへ身を投じることに。太宰府からの援軍が到着するまでの7日間、迅三郎たち対馬勢は、蒙古軍の猛攻を防ぎきろうと尽力する。●感想　この時代を題材とした作品は大変珍しく、それだけでも貴重な存在に思いました。絵が上手いのと、主人公の朽井の立ち位置が優れ、物語進行に緊張感があって飽きるところがない。普通なら二重の描写になるような場面も巧みに回避していて、登場人物の一回の発言で物語の状況を表現してゆく辺りの描き方は、実力が高いなあ、と感じました。　刀による統治であったのは、どの国も似たような状況だったあの時代、病気によって命を失うことも当たり前で、兎も角、日々を生きてゆくことだけでも精いっぱいだった。そうした生活の貧しさ・厳しさを底に感じさせながら、苦労して土地を守り、作物や生活を守ることで一生懸命に生きてきた島の人々。そこに突然、大陸の亡者、野蛮人達が遣ってくる。　奴隷を取り、食料から宝物から何から力ずくで分捕り、自らの欲望のため大侵略を開始する。その手口は今更語るまでもなくあまりに酷く（ある一つの城を取り囲んで攻略し、女子供まで皆殺し、残忍な軍団であるという恐ろしい噂を流布させ、周りの住人を恐怖で屈服させ従わせる・・・その後、大陸ではこういう手法が、常道のように広まってしまった・・・）、野蛮人によって悲しくも蹂躙されてゆく対馬の平穏な日々や人々の命のことが、非常に辛く感じられました。●中間部、蒙古の侵略が始まって、島を守ろうとする人たちが戦うその場面展開は秀逸で、一定の速度感を維持しており、また、朽井が提案する合戦の作戦が当を得ていて、彼の視野の高さ、相手の武器に対する洞察の速さ、人間心理の把握力の高さを随所に伺わせ、その辺りの描き方は上手かった。　どこまでが歴史に忠実なのか定かではありませんが、安徳天皇が出てくるあたりは奇異に感じる、だいぶ作者の創作が混ざっている感じですが、物語はやがて数と兵器に勝る蒙古が、ほぼ瞬く間、という速度で島を蹂躙して終結する、それは史実のままでしょう。　刀で勝負をしようとする（男として正々堂々、実力で戦おうとしている）朽井が、大鉄砲や火器のせいで敗れてゆく様は、人間対鬼（＝人を殺めることを何とも思わず、機械的にもっとも効率的に命を奪う、というより、生命体を破壊する恐ろしき生き物）の戦闘を思わせ、立ち位置の差異を際立たせていました。●犯罪者が逃げ込む場所のない島国では、大きな犯罪は起こりにくい。何をやっても、逃げればそれで無事に済んでしまう大陸は、無法地帯化し易い。大学の漢文の先生が、その辺の事情を授業で巧みに講義してくれましたけれど、その辺の事情は、このアニメを見るだけでも十分に伝わってくるものがあるかと思いました。「やあやあ我こそは」と名乗りを挙げて、武士の誉れを競っていたような田舎の国＝倭の島は、近代戦に目覚めた鬼集団に、いつか取って喰われるのです。そういう未来の予感さえも感じさせる、なかなか秀逸なアニメでした。

パラノーマン　ブライス・ホローの謎

評点　★★★★　ストーリーはともかくとして、登場キャラクターのデザインは凄い！　感嘆レベルです。パラノーマンブライス・ホローの謎【アニメ中古 DVD】メール便可レンタル落ち●2012年度　アメリカ映画　監督：クリス・バトラー　サム・ウェル　脚本：クリス・バトラー　声の出演：コディ・スミット・マウフィー　タッカー・アルブリジー　アナ・ケンドリック　ほか●あらすじ　かつて魔女狩りの現場となったという町ブライス・ホロー。ここに暮らす少年ノーマンには、死者と話せる特殊能力があった。しかし、そのせいで周りからは変人扱いされ、学校ではイジメに遭う。ある日、魔女を封印していたという叔父さんが遣ってきて、ノーマンにある使命を託したまま死んでしまう。その使命とは、300年前に封印された魔女の魂が悪霊を呼び覚まして町を滅ぼそうとするのを阻止せよというものだった。やがてノーマンの前に、墓場から蘇った死者が姿を現わす。●感想　総合的にはよく仕上がっている作品かと思います。まずは映像面。とにかく登場する人物の絵が凄いです。チェコのパペット人形を思わせるような作りで、それぞれの人間のデザインに同じ傾向が一つもない。人間の頭の形、顔の形、それに体の形に対する観察が、非常に細かいところにまで行き届いており、色の使い方も秀逸。その出来を見るだけでも価値ありと思いました。　また、死者たちの色使いや造形も優れていて、もとはこういう人間だった、という原像があって、そこに骨や髪を色付けして作られている。この技量には参りました。　ストーリーも悪くはありません。魔女狩りは、ヨーロッパではその昔、普通に行われていた社会制度、というか社会習慣というか・・・。一説には、国や郡を治める側の者たちが兵士を必要とし、その人口を確保するために、堕胎の技術を持っていた女性を虐げ排除した、というようなことも聞いたことがありますが、人知で容易に解決できない不可解な事件や、目に見えないものの影響で起こる病気などが町に広がると、その真因が分からない中世の人間はやみくもに恐怖に襲われて、どこかに解決口を探したのでは？とも思われ、ここでは人間の持つ恐怖が、不幸の源という解釈で物語が作られています。（自分たちに都合の良くない人間を、あれこれと口実を設けて排除しようとする異端者排除的な行為も多かったことと推測されますが・・・）　町の人たちが、登場した7人の死者たちと戦いを起こし、銃をぶっぱなしたりする様子は、彼らが「常に戦って邪魔者は排除する」という論理に支えられて生きているらしき背景をも伺わせ、魔女と、一人の少女を裁判で死に至らしめた人間の側の痛恨も語られている。なかなかに高度な人間心理背景から生まれた脚本であることを伺わせました。　ただ、物語進行には若干の時間平衡感というか、進行に対しての微妙な揺らぎなどが少なく、ワッと強く盛り上がらせる感じが弱い。後半の盛り上がり部をもう少し工夫しても良かったかな、と思われました。●でも、ともあれ、技量は確かなものが感じられ、アカデミー賞はノミネートだけに終わりましたが、独自性のある作品に思いました。　