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カテゴリ:原子力発電所
新潟中越沖地震により東電刈羽原電が受けた被害は原子炉が緊急停止をした点では想定内の被害でしたが、クレーンの破壊、変圧器からの出火、原子炉建屋からの放射能漏れは想定外でした。危機管理能力のなさが露呈されました。
原電の耐震想定震度を倍以上上回る揺れは想定外でしたが、原子炉が緊急停止をしたので大事には至りませんでした。原電は原子炉が停止さえすれば単なる核燃料棒の集合体に過ぎませんから、安全性が保障されたともいえます。 しかし、東電の危機管理には重大な瑕疵がありました。自営消防隊が機能せず、消防署とのホットラインも機能しませんでした。東電の職員は変圧器の炎上を2時間もただ見守るだけでした。消防機能の欠如は人為的なミスです。 事故の報告も遅れ、経産相が怒りの記者会見をしたぐらいでした。事故報告も五月雨式にしかできず、放射能漏れの報告は深夜にずれ込みました。事故の全容までは解明できなくても、国、地元に対する報告は速やかにすべきでした。 翌日になり50件という数字が出ましたが、数字が漸増していきました。東電の危機管理の欠如、事故に対する対応の不誠実さは事故隠しを疑わせました。柏崎市による原子炉の運転停止命令は地元住民の東電に対する不信任状です。 さらに原子炉を開閉するクレーンの部分的な破壊、プルサーマル燃料棒の貯蔵プールから水があふれ出したのも想定外はでしたが、致命的な故障ではありません。地震の揺れの記録が消去されてしまったのも東電の人為的なミスです。 新潟県が国際原子力機関(IAEA)の査察を求めたのも、国がIAEAの査察を拒否したのに対する不信感から来ているのでしょう。IAEAは核査察が専門ですから原電の安全性を保障できませんが、藁にもすがる想いなのでしょう。 海外には放射能漏れで重大な被害が起きたとも報道されたようです。サッカーチームが来日を取りやめたぐらいです。黒煙を上げる原電の様子が海外のメディアで報道されれば、チェルノブイリを連想した人も少なくないでしょう。 東電は事故隠しで原電が稼働停止を命じられたときにも数千億単位の損失を出したはずですし、今回の事故でも原電は数年間は稼働できず、数千億円単位の損失が見込まれますが、風評被害も数千億単位には達するでしょう。 東電の危機管理能力のなさが生み出した経済的な損失に加えて、炭酸ガスの排出量の増大は地球的な損失です。地球温暖化対策の切り札である原子力に対する不信感を全世界にまき散らし、日本の原電産業の信頼を傷つけました。 原電は炉心の緊急停止機能が正常に機能すれば、安全性は確保されていますが、電力会社の事故隠しは緊急停止機能の信頼性に疑問を持たせました。耐震設計でも原子炉建屋以外の施設の耐震性が十分に考慮されていませんでした。 原子炉本体は直下型地震でも重大事故を起こしませんでしたが、原電の維持、運営、管理の面では重大事故に匹敵する瑕疵がありました。電力会社の原電の安全神話を前提とした危機管理能力のなさはヒューマンエラーの典型です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007/07/26 04:24:07 PM
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