昔、強化拷問合宿と称して、数名で奈良県と三重県の県境である高見山を征服しに行くことにした。高見山は、樹氷でまあまあ有名で、簡単に観光ツアーも組むことができる平易な山であり、標高も1200メートル程度であり、足慣らしにはまずまずの所であった。どこの駅で降りたかは忘れたが、長時間バスに乗り、バス終点近くになると、我々だけになってしまった。
そこに、小学生が2人乗り込んできて「今日は、乗っている人多いなあ~」とタマゲていた。そしていよいよ終点間際に乗ってきた爺さんが森田さんであった。
終点に着くと、犬が走ってきた。森田家の犬である。運転手は言った。「森田のじっちゃん、財布忘れたんか、また今度でええで」
我々はほのぼのとした空気の中、SWATばりの重装備で、犬をびびらせたのであった。村には、この時代にありながら、恐ろしくも、家の門に「穢多入るべからず」と札が貼ってあり、我々の背中から冷や汗が垂れた。早くこの村を離れなければえらいことになると、危険察知能力に長けた我々は、早速登山口を探し出し、逃げるように山の中へ入って行った。
計画は無謀ではなかったのであるが、後輩の体力が無謀であった。高校時代にテニスで鍛えたとホラを吹く後輩Sは、みるみるうちに顔が高潮し、体が硬直し始め、たった25キロの無駄なものの入った拷問ザックが肩に食い込んでいた。
彼のせいで、夕刻は早々と迫り、秋口だというのに、計画を大幅に遅れ、ついに日が暮れた。私の同期と私のありがたい叱咤激励にも関わらず、2番目を歩いていた彼は、ついにダウンし、カエルのようになり、犬のように腹を見せて降参の合図をした。
その瞬間である、1番先頭を歩いていたYが叫んだ。「頂上に着きましたよ~」
なんとも暢気な声であった。2番目を歩いていたSは頂上5メートル前において、ダウンし、今後30年間そのことについていびられることが決定したのである。
今年も、そろそろ、いう時期が来た。
「あと5メートル歯を食いしばっていたらこんなことにならなかったのに。アホやなー」そうやって酒の肴伝説は量産されていくのであった。
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最終更新日
2004.12.26 22:02:51
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