一晩中、砂漠の一本道を鉄道は走り、朝に
ジョードプルに着いた。
駅には、極菜色のサリー姿が幻想的である。服の輪郭が、朝焼けに照らされてぼやけている。手や首に巻きついたリングが美しい。インドでは、どこでだって、朝は掘っ立て小屋で1杯のチャイから始まり、朝の営みを眺めることから始まる。
どこまでいっても、時間はのんびり流れる。砂漠の灼熱の時間まであと、数分、今は肌寒いぐらいだ。次のデリー行きまでの列車まで、12時間待ち。
泊りではないが、100円程度の部屋を1室とった。3階のバルコニーから人通りを見ていると、結婚式の行列が始まった。国際結婚華やかであるが、ヒンドゥー教徒と他の宗教の者と結婚することはまずないし、まだまだ、自由恋愛はなく、結婚式当日初めて二人が顔合わせということが多いようだ。国際的な仕事をしているビジネスエリートだって例外ではない。
踊りながら、道行く行列の人々が、面白がって写真を撮っている私を見つけ、こっち来いこっち来いと手招きし、私は降りていく。そして、写真班のカメラと、私のニコンの一眼レフを見比べて、オマエもこの写真班の横についてバンバン写真を撮ってくれと、何故か俄か写真班に組み込まれ、一番いい席を確保したのであった。
その後、まだ時間があったので、冷房を楽しむ為、映画館に行った。映画は長く、途中休憩があり、例によってインド人に囲まれ「インド映画は最高だ」を大声で主張された。インドは世界一映画を量産している映画大国であり、一本の映画にアクション、ラブ、コメディなどが網羅されており、すべてが凝縮されていなければインド人も満足しない。そして、辛い現実を忘れられる貴重な夢の時間帯なのである。