三つの思考形態はどう育つ?
台風が、太平洋側のビコール地方に上陸。マニラも今夜から暴風圏に入りそうということで、今日は朝から全ての学校が休校となりました。でも、全然雨なんか降ってません。それで、近所の子どもたちが、ゆっぴーとかりんと遊びに来ました。今日は我が家では普通に勉強する予定にしていたのですが、ゆっぴーとかりんも遊んできていいことにしました。どうせ、台風で雨が降れば、しばらく缶詰になるのですから、遊べるときに友達と遊んでくるのが一番です。*今夜あたりから、マニラも台風の影響を受けるようです。コメントへのお返事など、遅れる可能性がありますが、ご了承くださいね~。*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*さて、今日は、教育者で、アメリカで、ホームスクールをしている親のための教育書を書いているルース・ビーチック(Ruth Beechick)の著書「あなたも自分の子どもを教えられる」"You Can Teach Your Child Successfully"から三つの思考形態について、書いてみたいと思います。この三つの思考形態とは、「具体」「イメージ」「抽象」の三つの形態なのですが、これは、ピアジェや、モンテソリの理論では、「発達段階」と呼ばれる場合もあります。ビーチックは、この「段階」という言い方を、あえて避けています。それはどうしてかというと、「段階」というと、一般に、その段階は早くクリアして、次の段階へ行かなければいけない、と言う風に受け取られがちだからです。そうではなくて、ビーチックは、人間はこの三つの形態(モード)を、大人になっても使って思考しているよ、と言っているのです。つまり、思考の発達は、「具体」→「イメージ」→「抽象」というように移行するのではなく、「具体」+「イメージ」+「抽象」というように、付け加えられていくのだということです。1.具体的思考モードこれは、具体物、つまり実物や模型などを見たり触ったりすることで、学んだり考えたりする思考形態です。ごく小さい赤ちゃんは、目の前に実物が無いと、その存在を忘れてしまいますね。それは、頭の中でイメージが築けないからですね。でも、子どもが成長するにつれ、具体物を見たり触れたりして経験するうちに、頭の中に具体物のイメージができてきます。ですから、6-7歳ごろまでの子どもにとっては、具体物に触れて学ぶことが、特に重要なのです。しかし、上であげたように、大人も、この形態をつかって、考えることはあるのです。6-7歳を過ぎた子どもでも、同じことです。2.イメージ・モードもっと成長して、具体的なイメージを頭の中で描けるようになってくると、具体物の助けがなくても、問題が解けるようになってきます。ビーチックは、「子どもは具体物が不要になれば、自分から具体物を手離すのでそれを無理にとりあげてはいけない」と言っています。たとえば、計算するとき、指を数えさせてはいけない、と言われることがありますが、ビーチックは、「それは古くて悪いアドバイス」だと述べ、「子どもが指を数えるのは、充分なメンタル・イメージが頭の中にまだない証拠で、指を数えるのをやめさせたからといってイメージ力を無理に作り出すことはできない」と言っています。ビーチックは、具体物の必要な子どもには、タイルやブロックなどを使って数の概念がわかるようにすることを勧めています。「どんぐり倶楽部」では「デンタくん」という指をつかった数字のイメージトレーニングがあります。それは、手の指は、ブロックやタイルなどと違い、どこにでも持っていけるという強みがありますし、両手で10本の指があるので、いつでも10の補数をイメージできるから、これは素晴らしいと私は思います。(*でも、あくまで「危険回避」のためだということなので、糸山先生の注意書きを読んでお使いくださいね。)また、ビーチックは、具体物を使う代わりに絵を描くのも良いと言っています。文章題を、絵や図で内容を表すのは、イメージ力を鍛えるので、効果があると書かれています。これも、どんぐり倶楽部と同じ考え方です。このイメージ思考能力が、抽象的な思考も含めた思考能力を育てる前提条件です。また、言葉を用いて、身の回りのいろいろなことや感じたことを子どもに説明させることも、イメージ力の構築に大切だといいます。言葉で何か説明したり、その説明を書きあらわすことで、子どもにとって、あいまいだった考えがはっきりしたり、頭の中のイメージを言葉に置き換えることができたりするようになるのですね。3.抽象モード12-13歳になると、子どもは抽象的な考え方ができるようになってきます。でも、ある面で抽象的な考え方ができるからといって、他の2モードを捨ててしまったわけではなく、具体、イメージ、抽象の3つのモードを使えるようになってきたということです。具体モードとイメージモードという基礎を充分に持っていて、はじめて抽象モードが自然に使えるようになってくるので、早くから抽象モードへ切り替えようと教え込むべきではないのです。このように具体モードとイメージモードを充分に経験することで、抽象モードが育つことを考えれば、15歳まで数学は学ばせない、と両親が決めたため家には数学の教科書はなかったパスカルが、幾何の定理を自力で証明できたことも、全く不思議ではないと思います。子どもは、本来、そのように伸びる能力を持っているのですから、今、自分の子どもができていないことに目を向けるよりもできていることに目を向けて、本来ある能力を引き出していけるような教育ができればいいな、と考えています。