テーマ:社交ダンス(8651)
カテゴリ:アートのはなし
上野の国立西洋美術館で開催されている『プラド美術館所蔵 ゴヤ 光と影』に行ってきました。
レッスンが夕方6時からだったので、午後はずっとここでプラドを堪能していたんです。 今まで開催されたプラド展で見た事のある作品もありましたが、何と言っても今回の目玉は日本で40年ぶりに公開される『着衣のマハ』。 『着衣の』とわざわざことわっているのはこれと対になる『裸のマハ』があるからなんですが、今回裸の方は来日していませんでした。 スペインのプラド美術館から二つとも貸し出し中で不在だったらわざわざ訪れた人はがっかりしますもんね。 マハというのは、小粋な下町娘といったような意味で名前ではないそうです。逆に粋な男の子のことはマホと言うそうですよ。 ゴヤが生きた18世紀後半には、まだ裸の女性を描くのは神話に出て来るビーナスとかに限られていたんです。 それなのに下町娘の裸なんか描いてしまって当時のスペインでは大問題になったとのこと。 裁判の末、約100年もの間この絵はプラドの地下に眠っていて、1800年代に生きた方々はこの絵を拝むことができなかった訳です。 プラド美術館からはこの他に素描や版画を含め72点が来日していて、国立西洋美術館が所蔵する版画も合わせると全部で123点もの作品が一堂に会したゴヤ展になっています。 今回は時間がたっぷりあったので音声ガイドを借りてじっくり見て回りました。 以前プラド展で見たとき惹き付けられた『魔女たちの飛翔』が再来日しています。 魔女が若者をさらって行く所に出くわしてしまった二人の旅人が、見つからないようにやり過ごす様子なんですが、音声ガイドは全く別の解釈を投げかけてきました。 この尖った帽子をかぶる3人の魔女は『進歩や変革』なんだそうで、その息吹を若者に注入している所なんだそうです。 見ないように地面に伏せたり布をかぶっている男たちは変革を恐れる愚鈍な民衆で、暗闇の中のロバは無知の象徴だと言っていました。 この時期ヨーロッパはフランス革命があったりナポレオンが出て来たりする激動の時代だったんですよね。 13歳で絵の道に志したゴヤは、最初タピスリーの原画を描く仕事をしていました。『日傘』もその一つで、彼が31歳のときの作品です。 タピスリーはフランス語で、英語ではタペストリー。壁にかける織物です。 上流階級のお嬢さんにマホが傘を差掛けています。まだ戦争もない平和な時代で、階級の上下関係がくっきりと描き出されているそうです。この絵も以前見たことがありましたが、その時は兄妹なのかと思っていたんです。 やっぱり解説聞くと勉強になりますね。 43歳で国王カルロス4世の主席宮廷画家まで上り詰めたゴヤでしたが、ナポレオンの侵略で戦争状態に陥ったスペインで、彼の関心は次第に人間の心の闇に向って行くようになります。 ゴヤの描いた素描は今で言う風刺漫画のようで、グロテスクで気味の悪いものが多いです。 以前ご紹介した『我が子を喰らうサトゥルヌス』も彼の作品です。 しかしゴヤの創作意欲は82歳の生涯を閉じるまで衰えることなく、真っ白な髭に覆われ両手に杖をついて歩く自画像に『まだ学ぶぞ』と走り書きがしてあるんですね。 この精神は学びたいと思います。 ゴヤ展は2012年1月29日まで開催されています。 詳しい情報はこちらのサイトからご覧下さい。 プラド美術館所蔵 ゴヤ 光と影お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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