カテゴリ:読書
「生活のなかの遊び」の章では、絵巻物、襖絵、掛け軸など、 日本古来の絵の見方を「動き」という点から、解説している。 簡単に言えば、昔の画家たちは、ふすまを開いたり閉じたりし た時や掛け軸を開いた時の視覚効果を強く意識していたとのこ と。特に長澤芦雪の作品を多く取り上げて、説明しているので 嬉しい。奈良県立美術館で見た「虎図」や「富士越え鶴図」。大 倉集古館で見た「大仏殿炎上図」など、最近見たばかりの芦雪 の絵が中心に論じられているので、興味津々。 次の「視点の遊び」の章でも、先般「美の巨人たち」でも取り 上げられていた歌川国芳の「寄せ絵」や「影絵」を題材に、江 戸絵の見た目の面白さを解説。国芳は本当にアルチンボルトの 絵を眺めたことがなかったのであろうか。 最後の「かたちの遊び」の章では、猿の図像学として、ニホン ザルやテナガザルの絵の面白さを述べている。テナガザルが水 に映った月かげを取ろうとして溺れ死んだ「猿猴取月図」。身の 程をわきまえずに無理なことを望むと災いをうけることのたと え。我が身の戒めにしなくては。それにしても、多くの画家た ちが何ともユニークでかわいい猿たちを描いていること。 上記以外にも、多数のおもしろ絵画が紹介されており、ますま す日本画への興味が深まる一冊だった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
|