イタリア的な、あまりにイタリア的な「副王家の一族」
★副王家の一族(2007年・イタリア=スペイン 晩秋、Bunkamuraル・シネマにて公開予定) 19世紀半ば、イタリア統一前夜のシチリアを舞台に、ある貴族の一族を描いた大河ドラマ。1894年に発表されたフェデリコ・デ・ロベルトの小説を、ネオ・レジスタの1人、ロベルト・ファエンツァが映画化した作品で、久々にイタリア映画らしいイタリア映画を見た充実感を感じさせてくれる。 イタリア統一前夜、シチリア、貴族とくれば、ヴィスコンティの「山猫」を思い出す。旧世代と新世代の葛藤でくり広げられるドラマという点でも、共通点は多い。もっとも、ヴィスコンティとファエンツァでは世代も個性も違うので、その違いを確認しながら見るのも面白い。 「山猫」との最大の違いは、登場人物に対するシンパシーではないだろうか。ヴィスコンティは、滅び行く旧世代に貴族の出である自分を重ねている。抗うことのできない時代の流れの中で、滅びていくしかない者たちへのレクイエムを奏でているような重厚な趣がある。 それに対し、本作は新しい時代の息吹と新しい権力者の誕生に焦点を当てている。ファエンツァの視線は、その権力の形成過程がイタリア統一前夜にとどまらず、今もなおイタリア社会に生きているのだと主張しているかのように思える。 すなわち、ヴィスコンティの「山猫」が豪華絢爛な芸術で埋め尽くされているのに対し、ファエンツァの「副王家の一族」は論理的な考察で組み立てられているのだ。確かに「山猫」と比べれば華やかさには欠けるし、2時間ちょっとという上映時間は少々駆け足に感じられる(「山猫」は3時間超)。 しかし、その視点がまったく別のものであり、21世紀の今、19世紀のドラマを映画化する意味を考えれば、ファエンツァのアプローチもまた、充分に見ごたえのあるものだと思う。何よりも、こんなにもイタリア映画らしい作品にめぐり合えたことに感謝したい。(C)2007:Jean Vigo Italia, RAI CINEMA Spa, RAI FICTION Spa, Isitut del Cinema Catala