トラック100キロの速度制限緩和
ひっ迫する物流のトラック運転手不足に対して政府が打ち出した方針が「高速道路の速度制限を80キロから100キロにする」という・・・ いや、そうじゃねえだろうって!そもそも現在のトラック運転手不足の原因は過酷な労働環境と低賃金が嫌われてなり手がいないことが原因。たとえば自分の子供のころ、トラックの運転手というのは「学歴がなくても腕一本で稼げる、肉体労働でも花形の職業」のひとつであり。特に我が家の近くにもありましたが、個人所有の大きなデコトラを持っていた30代ぐらいの運転手の兄ちゃんとか。彼らの年収はそれこそ1000万を超えるような(もちろん、ガソリン代やその他経費は自分持ちですが)高給取りで。また、個人でなくても大手運送会社の大型ドラックドライバー求人には「月収50万以上保障」といった景気のいい言葉が並んでおりました。 それがバブル以降、どんどん収入が低くなり、また、労働環境も悪くなり。特に荷物の運搬だけのはずが荷下ろしの作業まで「当たり前の仕事」とやらされるようになったり。その結果、大型免許の取得率も低くなって現在の運転手の高齢化も含め、その人たちの引退するあと5年程度で急速にひっ迫する状況になる。 これらは運送業界だけでなく、建設や土木、農業、あらゆる産業で社会を維持できない数まで労働人口が減る状況になっております。 最初の話に戻りますが、トラックの速度制限を100キロにすることで物流量が増えることを期待しているのだと思いますが、単純に危険が増すことの方が大きく。先日ラジオでご自身も元トラックドライバーでありつつ現在は物流関係の本を書かれている方が今回の規制緩和について「トラックというのは積み荷の量で制動距離が大きく変わる。それによって発生する事故、特に雨天や夜間などでの危険性が倍増する。そもそも、近年までトラック業界で問題になっていた長時間労働を規制するために運転時間の規制が行われたのに、今度はその時間内で間に合わせるためにトラックドライバーや他のドライバーの危険度を増すようにするのは間違っている」と・・・まさにその通りで。それに、80キロから100キロになるということは、それまでドライバーに割り当てられていた時間帯ノルマが増えるということに…また、その方も自分の経験談から「大きな荷物を積んでの高速走行はドライバーに常に緊張と疲労を強いる。特に日本の高速道路は緩急が大きく、疲労度がまったく違う」と。 世の中、ネットや情報はどんどん高速化していきますが、直接にモノを運ぶのは物質転送のような技術ができない限り不可能で。「人が足りないから安全基準の規制緩和しよう」ってのは、ちょっと待て、順番がおかしくないか!と思います。