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テーマ:レアメタル(8)
カテゴリ:経済・ビジネス・投資
日本は中国をはじめとしてカントリー・リスクのある国々に希少金属(レアメタル)の供給をほとんど依存していて、多角的な対応が必要となっている。
レアメタルとはベースメタルと対になる概念である。ベースメタルが銅などの基礎的な金属であるのに対して、レアメタルは希少金属とも呼ばれ、地球上での天然の存在量がきわめて稀である31種類の金属の総称である。レアメタルは産出国が限定されており供給がきわめて脆弱である。この問題については読売新聞にも記事になったが、次の論文を入手できたので数回にわたって解説する。 本城薫「供給障害リスクに対応したレアメタルの動態的適正備蓄モデルに関する研究」 児嶋秀平「鉱物資源安定供給論」 レアメタルは次ぎの金属であり31種類ある。 ニッケル・クロム・マンガン・コバルト・タングステン・モリブデン・バナジウム・ニオブ・タンタル・ゲルマニウム・ストロンチウム・アンチモン・プラチナ・バナジウム・チタン・ベリリウム・ジルコニウム・レニウム・リチウム・ボロン・ガリウム・バリウム・セレン・テルル・ビスマス・インジウム・セシウム・ルビジウム・タリウム・ハフニウム・レアアースである。 従来レアメタルはこれまでその大部分が特殊鋼の添加原料として、鋼材の強度、耐熱性、耐食性などを向上させるために使用されてきたが、近年は個々のレアメタル固有の金属特性を活用する部材に使用されるようになってきた。 例えば、電子・情報関連では携帯電話のアンテナにはニッケル・チタン・ボロンが、液晶ディスプレイにはインジウムが、発光ダイオード(LED)にはガリウムが、発信機にはチタン・バリウムが、コンデンサーにはタンタル・チタン・バリウム・ストロンチウムが、コネクタにはベリリウムが、電力増幅器にはガリウムが、バッテリーにはコバルトとマンガンが使用されている。太陽電池にはテルル・インジウム・セレン・ガリウムが、自動車用排ガス触媒にはプラチナ・パラジウム・バナジウム・クロム・バリウム・レアアース・ジルコニウムが、石油精製脱硫触媒にはモリブデン・コバルト・ニッケルが使用されている。 これらの希少資源は、レアアースの88%が中国に、クロムの83%が南アフリカに、ニオビウムの90%がブラジルに、バナジウムの50%がロシアに賦存している。これらのレアメタルは、暴動や突発的地域紛争の起こりやすいアフリカあるいは南アメリカおよび旧共産国家に集中し、カントリーリスクが大きい日本にはないので数々の供給障害が過去発生している。 コバルトは1978年ザイールにおいて第二次ザイール・シャバ紛争で鉱山が操業停止となった。 タングステンは1989年に中国の天安門事件による国内混乱による出荷が遅延し、1991年に中国は鉱石に新規契約締結を一時中止した。 ニッケルは1987年に世界的にステンレス鋼増産出により価格が高騰した。1987年から1988年にかけてドミニカの輸出関税問題による輸出遅延があった。1997年から1998年にかけてインドネシアの旱魃による鉱山の減産があった。 タンタルは2000年にITブームによるタンタルコンデンサー需要急増により価格が高騰した。 モリブデンは1967年米国鉱山企業のストにより生産が停止した。また1978年から79年にかけて銅の減産によって随伴するモリブデンの供給が不足した。 クロムは1997年から1999年にかけてカザフスタンの精錬企業の内紛により出荷が停止した。 インジウムは2001年に中国広西省南丹県での鉱山事故により生産が停止された。 パラジウムは2000年にロシア政府の輸出割当の厳しい運用による価格高騰があった。 レアアースは2000年中国政府の輸出ライセンス発給の抑制による対日供給の抑制があった。 クロムは1999年インドでのサイクロンによる道路冠水などで流通が停滞した。 このような供給障害が発生すると、日本のものづくりに大きな影響がある。これに対応するためには備蓄・リサイクルに加えて、原産国との緊密なコミュニケーションが必要となる。明日はその点を見てみよう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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