ウナギの不思議な生態について
土用の丑の日は過ぎたのだが、絶滅危惧種にも指定された二ホンウナギ(アンギラジャポニカ)を私は今年も食べてしまった・・・・。 何とも無責任な自分にやや失望するが、かつて調べたこともあるウナギの生態について考えをめぐらしてみた。以前に書いたBlogをここに再度コピー&ペーストしつつ書きなおしながら考えて行くことにする。二ホンウナギ(アンギラ・ジャポニカ)は東北アジアには広く分布しているが、日本の太平洋側では北海道・日高地方以南、日本海側では石狩川以南に分布しています。 海で生まれて、川で5年~10数年生活し、9~11月頃に産卵のため、再び川を下ります。 産卵はマリアナ諸島海域の水深3000mもの深さにあるスルガ海山付近で行われ、産まれた幼魚は川を目指します。 夜行性で、エビ、昆虫、小魚などを食べる肉食性の魚ですが、太平洋側に比べ、日本海側での漁獲高は非常に少なく、特に能登半島以北では激減するそうです。 太平洋側では利根川水系が非常に大きな漁獲高をあげていて、それ以北はやはり激減するのだそうです。 大西洋には北米大陸に遡上するうなぎとヨーロッパ、ユーラシア大陸に遡上するうなぎが知られていて、脊椎の数が違います。 最も分布数、種類が多いのはインド洋、および南太平洋周辺で、うなぎの種の殆どがインドからニューギニアにかけての地域に生息しているそうです。 大西洋ウナギを調べてゆくと、起源はゴンドワナ大陸とローラシア大陸の間に開けていたテーティス海を嘗て赤道に沿って地球を一周していた古環赤道海流に乗って西へ流されていったウナギの幼生であるレプトケファルスは今の地中海(テーティス海のなごり)を経て大西洋に達したと考えられ、やがてゴンドワナとローラシアは地続きになって、ウナギは産卵場所の南太平洋の深海へ戻ることが出来なくなり、ふるさとの南太平洋のボルネオ島近くの深海に似た大西洋のサルガッソー海の深海で産卵することで種を繋ぐようになったと考えられ、ミトコンドリア遺伝子の調査でもそれを裏づけているそうです。ウナギの幼生であるレプトケファルスは海の中でフワフワ漂うのに適した形であるため、海流によって長い距離輸送されることで生息域を広げたことになり、日本に遡上するウナギは黒潮に流されて太平洋の西を漂いながら成長できる汽水域や淡水域を探して遡上すると考えられているが、太平洋のニホンウナギが揚子江や朝鮮の河川に遡上するものと同一種であり、それぞれ母を育んだ川や湖沼を目指しているかどうかは解っていない。それに対し、ヨーロッパウナギ(アンギラ・アンギラ)とアメリカウナギ(アンギラ・ロストラータ)は同じサルガッソー海付近の深海で生まれた後バーミューダ島付近で幼生期を過ごした後、それぞれ北米とヨーロッパに誤り無く向かうのだそうで、自分の親が大西洋を隔てた別の大陸でそれぞれ過ごしたということを記憶できる訳でもなく、海流で運ばれた先で決まる訳でもなく、あたかも意志を持って自分の親が成長した第二の故郷を目指すように行動する理由は、今なお解明されてはいない不思議な生態なのです。 実際に大西洋のサルガッソー海の深海で産卵するウナギは2種類で、成長するに従って北米とヨーロッパに遡上しますが、ニホンウナギ(アンギラ・ジャポニカ)のようにかなり小さな個体のうちに海流に乗って流れて沿岸の川に遡上するのと少し生態が異なっています。 文献の記述によれば、バーミューダ周辺の海域で幼年期をすごした後に、海流に流されるのではなく、自ら泳いで北米とヨーロッパを目指すと言うのだ。もちろん脊椎の数が異なるこの2種類の大西洋ウナギは、誤り無く父や母の過ごした故郷の川がある大陸を目指すと言う。こういう生態に進化するまでに彼らの種に何があったかを想像するのは非常に困難だが、必ず事実に繋がる整合性の有る理由が何処かにあるはずです・・・・。さもなければ同じ海域で生まれたウナギの子が、自分が誕生する以前に母ウナギや父ウナギが棲んでいた大陸を目指し得るわけも無く、誤って北米大陸に遡上するヨーロッパウナギがかなり居たとしても不思議ではないし、その逆にヨーロッパに向かう北米ウナギがいたとしてもおかしくは無い、と考えられるだろう。 私はその道の研究者ではないから、実際に大西洋を泳ぐウナギを探しにいかないし、そこまでして調べなければ気がすまないと言うほどの事でもないのだが、興味があり、そうなった理由を、推理することが楽しいだけだ。 推理であるからして、当然ながら「正しい」と言えるものではないのをご承知願いたいし、結論のような仮説も立てるまでには至らない。ヨーロッパウナギも北米ウナギも、元々は今の太平洋のボルネオ島やフィリピン付近の深海で生まれたウナギの仲間であったことはミトコンドリア遺伝子を分析することで確実視されているし、1億年の昔はゴンドワナ大陸とローラシアが離れていて、今のアラビア半島の辺りはテーティス海と呼ばれる海で、いずれ地中海になる海域と繋がっていて、現在の大西洋まで、当時はには古環赤道海流と呼ばれる海流があって、レプトケファルスと言われるウナギの幼生は漂うように海流に流されて長い旅を経て、今の位置には無いが、その後北米大陸やヨーロッパになる地域へと流れて到達したと考えるのが自然だろう・・・。ここで考えることは、大西洋ウナギが2種類のみで、その脊椎の数が北米を目指す種とヨーロッパ・ユーラシアを目指す種では異なると言う点で、恐らくこの2種の大西洋ウナギは当時同一の種がゴンドワナとローラシアの衝突によって太平洋に帰れなくなった後に種類が分かれたのではなく、テーティス海が開けていた時代でもかなり以前に分化した種が、ある時代的な隔たりをもってそれぞれ今の北米になる地域とヨーローッパになる地域に別々に流されて到達していて、それぞれ2種類とも親ウナギは、はるばる産卵のため太平洋の故郷の海域まで泳いで帰って来る。と言う生態があったと考られないだろうか?(北米ウナギとヨーロッパウナギは遺伝的には近い種と言われれては居るが)しかし、移動する大陸の衝突によって2種とも産卵のために地中海を越えて太平洋に戻ることが出来なくなってしまい、地中海を彷徨い、ジブラルタルから再び大西洋に出て、南下してサルガッソー海付近の深海を故郷と間違って・・・或いは止むなくそこで産卵に及んだ固体が出現することになったのだろう。 当時の海流の状態が、大陸の移動とともに少しずつ変化して行ったであろうことは容易に想像が出来るが、ウナギやその他の海洋生物の移動や生息にとって決定的な変化となるような地殻変動が数千万年と言う単位では起きていたと言う事だろうが、今の私だけでなく1億年以前の海流を詳しく知ることが出来る術は無いだろうし、その海流がウナギの産卵と回帰にどんな影響をおよぼしたか?想像するだけで、詳しく解明することは当時の地形が失われていることもあり不可能に近いことだろう・・・。それにしても2種の異なったウナギだが、やはり自分が生まれた環境に近い場所を探し当てて産卵に及んだことで、北米から太平洋を目指したウナギもヨーロッパから太平洋を目指したウナギも同じサルガッソー海付近の深海を第2の故郷と決めたことは、ほぼ必然的に起きたことだったと言えるのだろう・・・。(元々近親の種であったとすれば尚更だろう)と、ここまでは特になんでもない推理だが、淡水域の上流で生まれて海に降り、成熟して再び故郷の川を目指す鮭の生態なら、川の水質による匂い等を記憶していてそこへ戻れると言う事実もメカニズムとしては想像し易いが、ウナギの場合、海に戻る頃は卵も胎内には無く、産卵地へと泳ぐ途中で抱卵すると言う事が研究によって解っているから、母ウナギの半分の遺伝子情報を減数分裂によって得ただけであり、親ウナギが過ごした川や湖沼の環境因子を卵子が記憶できることではないと普通には思える。(最新の研究では獲得形質であっても遺伝させることが可能であると言われ始めているが、その立場を取らない限り不可能に思える)つまり卵子には、周囲の環境情報を論理的に記憶するフィールドは無いと大方信じられるから、難しいことになるわけだ。 本能と言ってしまえば実に簡単に思えるが、ウナギの幼生のレプトケファルスが海流で流され易い形をしていても、南太平洋のボルネオ島付近やマリアナ海域で生まれた全てのウナギの種が黒潮に乗って太平洋西沿岸に広く分布しているわけではなく、ごく限られたボルネオやニューギニアにしか見られないウナギの種もあるという事実は、たとえ流され易い幼生でも何らかのメカニズムで遡上する川を選ぶ能力があると言えると思うし、産卵のために数千キロの海を故郷の深海まで戻る能力があることは間違い事実だ・・・。 鮭の稚魚が川を降って大洋に出ても、その川に戻ってこられる能力と同じに、ウナギの稚魚が海流に乗って遠く流れて行っても、成熟すればやがて生まれ故郷に戻れると言うことはほぼ同列に考たとしても、同じ海域で生まれた2種類のウナギの稚魚がしばらくバーミューダ諸島の浅瀬付近で過ごした後、誤ることなく母や父の過ごした北米大陸とヨーロッパユーラシア大陸に向けてそれぞれ泳ぎ出し、やがてそれぞれが大西洋を隔てた別の大陸の川に到着するというメカニズムは依然としてどのような仕組みがあるのか謎であることには変わりは無い。ウナギの産卵は研究の結果から、新月の日に行われると言うことが解っていると言う、さらにウナギの婚姻は産卵地で行われるが、同じ水系の雄雌で行われることが一番多く、次に同じ地方の川で育った雌雄が婚姻に及ぶことも研究で解っているが、アメリカウナギとヨーロッパウナギの交雑は確認されていないと言う。それらを考えると、少なくともウナギは海面下数百メートルの深さで産卵するのだから月光は当然届くはずも無く、彼らは視覚によらず月の月齢を感じる能力があり、晴れていようが、曇って月が見えていなかろうが、新月であると言うことを知る能力が有ると言うことになる。 月の運行は地上のさまざまな生物のバイオリズムに関わってるのは知られたことだが、この月の引力の何かが関わるようなメカニズムが働いていると考えることで何かが切り開けないだろうか?それ以外では、かすかな匂いを嗅ぎ分ける能力が人間とは比較にならない程鋭敏であることが挙げられるかもしれない。 自分が育った川から海に降り、数千kmも泳いで自分の生まれた深い海にたどり着き、真っ暗な深海で出会うウナギの雄と雌が互いに同じ故郷の出身であることを認識した後に産卵に至ると言うだけでも信じがたいことではあるが、同じ海域で出会うはずのわずかに違った種と交雑しないと言う事をどう理解すべきなのだろう・・・。 暗く深い海の中の事であるから互いの種の識別や出自の地方や川を判断できる理由は匂いと考える他思いつかない。 嗅覚と言うセンサーが生物の存続に果たす役割は、我々人間の貧弱な嗅覚を思うとにわかには信じられないことであるが、生物全体の事を考えれば、我々人間の想像を超えた大きな因子であると言うことを認めるべきだと思うのです。親のウナギが過ごした淡水域の匂いの情報を卵子に遺伝的に伝えることが出来ないとしても・・・、実際のウナギの卵を構成する膜などに、親の卵巣の粘膜組織やそこに居るかもしれない微生物等が影響し、その卵巣の粘膜組織が親の過ごした淡水域の化学成分を何らかの形で反映することによって、卵から孵化するウナギの幼生に、卵を取り巻く外皮粘膜の成分として先天的に近い嗅覚情報をインプットしているという可能性はないだろうか・・・?それぐらいしか、親の棲んだ川を子孫のウナギの子が目指せる理由を特定できる論理は無いのではないだろうか・・・? 幾ら考えても、今は、残念ながらこの程度しか想像できません・・・・。しかしながら、もし匂いの情報を卵の外皮から受け継いだと仮定しても、バーミューダ付近の海中に居る小さなウナギがヨーロッパへ向かう方角を正しく決定できるのか?ヨーロッパの河川の匂いがバーミューダにそのにおいを追跡できるレベルでつながっているのか?それは解りません。もちろんアメリカウナギにとっても同様です。話は一気に現実的なものになりますが・・・・。 私としては、ウナギを絶滅させないうちに、完全養殖技術を確立してくれることを祈る他ありません。 私一人がウナギを食べることを止めたとしても、それは自分の気持ちの問題だけで問題は解決しないと思えるからです。 人間が生物を食べることを止められない以上、今はそれを実現していただく他ないのです。 二ホンウナギは絶滅危惧種なのです・・・・。