デミオディーゼルの燃費とJC08モードの欺瞞について・・・。
昨日のBlogにも書いたことですが、MAZDAのユーザーコールセンターに電話をして、「冬用の軽油がDPF再生の周期を短くしている事実は確認していますか」と言った趣旨の質問や、「エンジンについている酸素量センサーなどの様々なセンサーで、燃料のセタン価が下がっていることは判断できるはずだから、エンジンはそれに合わせて、噴射タイミングや噴射量などを変更できるのではないですか?実際はそうした制御をしてもDPF再生間隔の短縮が避けられないという事ですか」と言った質問を投げかけた見ましたが、回答はもらえませんでした。冬季の燃費悪化はMAZDAも知ってはいても発表してはいないという事と想像します・・・・。残念なことですが、新車販売戦略としては開示したくないネガティブな情報だということでしょう・・・・。PMと言う黒いススはエンジンの技術として、燃焼温度をもう少し高く設定し、吸入エアーの酸素含有量をふやせば生成をかなり抑え込めると考えられますが、そうするとNOXが多く出てしまうはずですから、そういうことでPMを減らそうとすると、フォルクスワーゲンのやったことと同じことをしたくなるかもしれません。(MAZDAの倫理観は褒められます)色々と考えるとMAZDAの苦労もよく解るのですが、方向性として、PMを減らすためには酸素リッチな燃焼が有利になりますが、窒素酸化物(NOX)をふやさずにそれを実現するには、酸素リッチな燃焼室で燃焼温度を下げる必要があり、燃焼温度が下がれば酸素の活性が下がって窒素と酸素が結び付きにくくなるという仕組みですが、MAZDAはそれを圧縮比をかなり下げることで可能としました。ですから、スカイ・アクティブ・ディーゼルエンジンは高い環境性能を持つエンジンなのですが、その実現のために現在では環境性能とパフォーマンスがギリギリのバランスでセットアップされていると想像され、運用条件によってはDPF再生の周期の短縮化が最も問題となってしまうと思われます。私は自動車工業には属していないフリーランスのエンジニアですが、飛行機好き車好きが嵩じてエンジニアの道に入ったので車一台をすべて設計しろと言われれば不可能ではない発明好きな人間です。従って、この問題は私も解決法を何度も考えてみましたが、最も可能性がありそうなのは、ブレーキング時の回生発電や排気タービンでの発電などによって電気をキャパシタに蓄え、DPF装置に昇温用セラミックスヒーターを追加し、通常運転時にPMを焼き切るには不足する熱量を間欠式に補助し、そのヒーターに通電する間はEGRからの無酸素排気ガスの還流量を減らして吸入酸素量を少し増やすか、DPF装置に排気管の熱で十分焼いた新気を吹き込むなどの方法でPMを短い周期で頻繁に焼き捨てる構造にして行くのが正解ではないかと思われます。しかし現在のディーゼルデミオはリッター30kmと言うカタログデータを達成するために非情とも言えるような軽量化を進め、燃料タンクさえも小さくして積載燃料の重量とタンクの重さを軽くしましたし、オートマティック車では搭載される回生キャパシタも取り払われています。当然、回生用の発電機を積みキャパシタも積めば重くなって、実際の運用燃費は大きく改善できるはずですがJC08モード試験でリッター30kmは謳えなくなるのでしょう。それに比べると、バッテリーを多く搭載して重量はかなりかさむのですが、ハイブリッド車はモーターを使って加速出来るため、JC08モード試験では非常に低燃費に見せることが出来るのです。MAZDAのスカイアクティブディーゼルエンジンも、燃費を悪化させるDPF再生が起きる前に試験を完了させてリッター30kmの結果を得ていると言えますが、JC08モードがコンベンショナルな内燃機車には厳しい設定がされていることもあり、その優れた実効低燃費性能を数値的には充分示せずにいます。私の乗っているディーゼルデミオ6MTの実用燃費は非常に良くて、リッター当たり27km程度は全く無理せずに出せますから、アクアの平均実用燃費24kmを凌駕します。(さらにガソリン価格との単価差で考えれば、軽油で27km/L走れるということば、ガソリン価格に置き換えて計算すれば32km/L以上走ることになります。)ですから実際にはそんなに無理してリッター30km等と言う謳い文句は必要がないと思います。JC08モード燃費試験ではハイブリッド車は、すでにフルに蓄えられたバッテリー電力を放電し続けながら試験を完了させているから見かけの燃費が良くなるだけで、実際の運用ではバッテリーが放電してしまえば搭載するバッテリーで重くなった車をガソリンエンジンで走らせる非効率な車になってしまうと言う実情を知らず、トヨタやHONDAの37km等と言うカタログデータに引っ張られてしまう、あまりその辺に詳しくない人達が多いため、MAZDAとしては止むを得ない戦略と言うことが出来ます。ここでJC08モード燃費試験の特徴を幾つか挙げてみます。1. エンジンが冷えた状態から試験を始める。→デミオディーゼルは内燃機関だけで走るので不利、アクアなどのハイブリッド車は殆どすべてモーターを使って走れるため非常に有利。2. 試験完了までの平均速度は24.4kmになるように走らなくてはならない。→現実的に休日ドライブで高速道路を1時間以上使う様な条件は考慮されていないからデミオディーゼルには不利、モーターだけでは高速で走れないのでハイブリッド車にはこの低速は有利。(参考までに言えば、私の平均燃費27~28kmは平均速度41kmですから、JC08とは全く違う条件で出ている記録といえます)3. 最高速度は81.6km出さなくてはならない。→最高速度を1時間続けるという規則は無いから内燃機だけの車のアドバンテージは無い、ハイブリッド車ではモーターで大部分がカバーできるので燃料をほとんど使わずに済むため有利。4. 試験所要時間は1204秒と定められている。(20分と4秒)→冷えたエンジンから20分では ディーゼルエンジンの効率を十分発揮するのは難しい、ハイブリッド車はエンジンが冷えていても大部分をモーターでカバーできるので有利。5. 走行距離は8172mで試験を完了する。→デミオではエンジンが温まるまで2000m程度走るからそれまでは多い燃料消費で走る、ハイブリッド車は8000mぐらいならほとんど電池だけで走れるしブレーキ時にも回生発電をするからエンジンをあまり使わず有利。ここまで書けば何が問題なのか大方の人は気づくはずで、極論すればJC08モードでの燃費記録を公式燃費データとして使用することを許容している現在の表示法に問題が多くあるという事で、これはトヨタやHONDAのハイブリッド車にとって実に有利な制度になっているという事を示していますし、今のトヨタやHONDAのハイブリッド車はこのJC08モードの試験結果を良くするために特化したような車になっているとも受け取れるものです。JC08モードが40年ほど前から運用されていたならまだしも、ハイブリッド車が登場してから策定された規則であることを考えれば、そこに世界第一位の自動車製造会社の力が関与したかもしれないと考えるのは私だけではないはずで、世界一位の販売台数を誇る世界企業だけのことはあるという事になります。しかし、ユーザーがもっと賢くなることはいずれにせよ必要なことですが、試験方法を改善するか、違う条件の試験結果も並列して義務付けることが急務ではないでしょうか、例えば現在のJC08モード試験を10回連続でバッテリーの消耗後も試験を続けるという試験法などが現実的で、どこからも文句が言えない精度の高いものと言えるようになるはずです。実際そのような試験法を追加してカタログデータとして併記するようにしようと運動できるのは誰でしょう?そしてそのような改正努力をどんな理由で誰が阻止しようとするのでしょうか?それは言うまでも無くそれによって不利な影響を受ける自動車会社という事になるはずです・・・・つまり最も不利になるのは世界第一位の自動車製造会社という事です。世界一位の自動車会社は市場占有率だけでなく日本の政治にも力が働いていているのではないかと容易に想像されます。(あくまで想像ですから、事実です!と私が言っているわけではありませんのでそこのところをお間違えなきよう願います。)ここまで考えてくれば、もしMAZDAがディーゼルデミオをアルミモノコックで軽量化してプラグインハイブリッド化したなら最強の省燃費車になり得ることが容易に想像できますが、価格はどうなるでしょう?それでも、MAZDAはやれることがたくさんあって、まだ弾が一杯残っている企業という事になりますね・・・・。