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株式会社SEES.ii

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2017.01.31
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カテゴリ:ショートショート
―――――
 
 彼は最近ツイていた。
 麻雀も競馬も競輪も競艇もとにかく勝ち続けていた。別に攻略法を発見したわけではない。
高い金を支払い結果を予想したわけでも、特殊なアプリを使用したわけでもない。ただただ、
ツイていた。
「信じられない」
 呟いた。ひとりでそれくらい呟いてしまうほど、彼の手には多くの現金が転がり込んできた。
最初に競馬へと手を出した時、彼の財布には1000円ほどしか入ってはいなかった。それが今では
財布に入りきらずポケットから札がハミ出している。
 何か運命じみたものを、彼は感じていた。直感的に、彼は自分が何か偉大な人物へと変化した
とさえ思った。驕りや油断が皆無とは思わなかったが、それ以上に彼の運気は異常であった。
 最近、勝ち続けている……何をしてもだ……どうして?いや、この幸運は果たしていつまで
有効なのだろうか?しばらくギャンブルを止めるか?いや、負けるまでトコトンまで攻めるか?
半ば結論ありきの困惑だ、そんなことはわかってんだよ……。

「最近調子イイみたいだな。どうだ?ここに行ってみろよ」
 悪友から誘われたのは都内にある裏カジノ。信頼のある会員からの紹介文で参加できる
高レートの賭場。普段なら、というか一般人であれば絶対に近づきもしない場所だ。普段なら、
「いやいや、無理無理」と笑い冗談話にするところではあるが……彼は迷った。ギャンブルとは
止め時が肝心だ。そんな当たり前の事は彼自身よく理解している。大した学歴も無く、
自慢出来るような技能も無く、あらゆる分野においての経験も浅かった。だからこそ、
自覚が足りていない今だからこそ、彼は甘い誘惑に乗った。

 繁華街の隅にある雑居ビルの5階、階層の案内板を思い出す。どうやらテナントはこの店と
1階の不動産屋だけのようだ。どうでもいい、くだらない推察をして気を紛らわせる。
 緊張していた。つくづくそう思う。手に汗がにじむ。仕方なくシャツの袖で拭う。
 ……情けねえ。
 この幸運はいつまで続くのだろう?今日?明日?友人の言う事が本当ならばかなりの優良店らしい。
支払いもキチンと即日払い。ツケは不可能。最高レートでも10万。……多少負けこんでいたとしても、
即日支払えるだけの現金はある。まあコンビニも近いしな、いざとなれば下せばいい。
 決断する時が来た。
 ならば自分の限界とはいかほどかを確かめたい。
 知りたい。自分の手にできる限界はどこなのか?
 掴みたい。金だ。できる事なら自分の力で手に入れたい。
 彼はゆっくりとした足取りで、またゆっくりと階段を下りて行った。

 廊下に立つ案内の男に紹介文を見せ、免許証を見せる。男は無言で免許証を眺めた後、
スマホで裏表を撮影した。撮影現場をわざとらしく見せるあたり、口止めと脅迫の意味も
あるのだろう。廊下の先にある
磨りガラスの自動ドアを抜けると、すぐ左に小窓と小さなカウンターがある。
窓にはブラインドが設置され、半分ほどが落とされている。視線を落とすと茶色の
小銭トレーが置かれていた。
「いらっしゃいませ、いくら遊ばれますか?」
 両替所だ。
「これを」
 50万を差し出した。心臓の鼓動がドクンと音を立て、緊張が一気に高まる。
 これでもう後戻りはできない。
 教えてもらおうか、俺自身の限界を。
 
―――――

 ルーレット。カジノやギャンブルの知識が無い彼にとって最も手軽に遊べるゲーム。
無論、彼は最初からこのゲームに挑戦するために足を運んだ。
 しかし……。
それはあまりにも、あまりにも残酷で、およそ正気を保つことさえ困難な状況だった。
「れ……Red 9」
 ディーラー役の若い男が声をうわずらせて宣言した。「失礼……36倍ですね…」
1枚10万のコインが36枚、震える手に抱えられながら移動する。
「……マジかよ」
 コインが手前に到着する。これだけで360万。それを3連勝。カジノに到着して早々から
勝ち続け、ベッド金に関わらず全勝する。店に還元するつもりで賭けた1目賭けもあっさりと5連勝。2000万は勝っている。緊張も歓喜も全て飲み込む、そんな恐怖を感じずにはいられなかった。
「す、すいません……」
 誰に対して謝ればいいのかと考える余裕すら無かった。コインが増えるたびに気色ばんでいた
表情も、今では懺悔する罪人のように蒼白としていた。
 なぜ、勝つ?なぜ、負けない?
 俺は、何もかもが未熟で幼稚と思っている。たまたま勝っていたのは偶然で、俺なんかが
大金を手にするなんて事は不可能だ。キッパリ負けて、さっぱりして帰ろうと思ってたんだ!
それなのに……それだけだったのに……どうして?
 自分の限界が知りたいだとか、そんなことはもうどうでもよかった。
「……そろそろ、帰り、ます、ね」
 ディーラーにそっと告げ、彼は席を立とうと膝を上げた。すると突然、背後から肩を強く
押し下げられた。無理矢理に椅子へと腰を打ち付けられ、彼は後ろを振り向いた。
「まあまあ待って下さいよ。兄さん、調子イイみたいだね。幸運の女神様に愛されてますってヤツ?」
 朗らかな口調だがドスのきいた低い声で男が言った。いかつい体形で見るからに危険な
匂いの漂うチンピラ風の男。緊張が背筋を走る。
「……いえ、それほどでも、ないです。あの、俺もう帰りますんで…」
 男の顔は見ず、できるだけ平静を装い話す。やはり裏カジノなど来るべきではなかった。
男は落ち着いてゆっくりと彼に告げた。
「他の客は帰らせました。まあ数人しかいないし、今日は店じまいということで。で、お客さん、
よろしければ少しお話を聞かせてはもらえませんか?ルーレットの攻略法なんか参考にさせては
いただけませんかね?」
 有無を言わさない雰囲気で男が言う。ディーラーは椅子に腰かけ煙草を吸い始めた。入口の
ドアからは先ほどの男が部屋に入ってくる。……何で俺がこんなメに。
「いえ、明日も仕事が早いので…失礼します」
 言い終わる前に、男の拳が彼の上顎に直撃した。「ギャァッ!」痛みと同時に口内から血が
噴き出し、ルーレット台へと盛大に滴り落とす。
「ううっ………」くそっ……口が切れやがった。こんな事になるなんて…。この店に来る前、
このような流血沙汰になることなど想像はついていた。だがそれはあくまで想像であり、
中学生の妄想と何ら変わらないレベルでの話だ。認識の甘さを思い知る。
 だが、
 そんな、
『そんな認識の甘さ』程度の話で済む次元ではもう既に……無かった。
「ぐっ」
 発したのは彼ではない。今彼を殴打した男、そしてその背後にいる男、目の前のディーラーが
ほぼ3人同時に呻き声を漏らした。そして、3人がどさりと崩れ落ちた。
 何が起きた?眠っているようにも見えるが、そうでは無い気がする。
「おいっ、おいっ」倒れた男の肩に手を当て揺するが反応が無い。奥の男も、ディーラーも
同様だった。頭を揺すろうが頬を張ろうが、これといった反応が無い。背筋に冷たい風が抜け、
首がブルルと震えた。
 まさか…な。予感が的中するとは考えられず、試しに男の胸に耳を当ててみる。「嘘だろ?」
当然のように何の音も聞こえない。心臓どころか胃腸の動く音さえ無い。

―――――

 気が付くと、彼は見知らぬ公園のベンチの上に座っていた。どこをどう歩いたのか、
どの方向から歩いて来たのか全ての記憶が消えていた。覚えていることは、そう――。
 死体だ。あの3人、そして部屋を飛び出す時に見た両替所の男の死体。
 4人が一度に死んだ。原因は考えるまでも無く、わからない。わからないままの方がいい。
「……俺のせい、じゃないよな?」
 彼は頭を抱えてうずくまった。その手には最初、免許証を撮影されたあの男のスマホが
握られていた。
 もう、いい。もういいよ……クソッ、これから俺はどうなるんだよ…畜生、畜生がっ!!
「何が幸運の女神だよ、そんな女欲しいわけがねぇ。クソ女がっ!
 彼がそう呟いた次の瞬間――、
 彼の意識の外で、彼が認知もしていない『何か』が、彼の内部から飛び出した。
 それは目に見えない『何か』であり――彼が知る事も触れる事も叶わない『何か』が……。
 遠くでパトカーのサイレンが聞こえる……。


                                     了
 


  ネタはともかく内容がヒドい。構想1日書き3時間。編集なし。添削なし。
 文章もヘタクソだわ。見ていただいた方々すいません。次回はもちっと真剣に考えてヤリます。
こちらは今話がオモロければ…ぽちっと、気軽に、頼みますっ!!……できれば感想も……。

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Last updated  2017.05.04 23:06:52
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