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株式会社SEES.ii

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2020.06.05
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カテゴリ:ショートショート
ss一覧   短編01  短編02  短編03​  短編04  短編05
​​
       《D》については短編の02と03を参照。番外としては​こちらから


―――――

 帰りたい。

 異世界に召喚されて1年が経った。
 召喚?
 そう。
 僕はとある国の王様に、「魔族を滅ぼして欲しい」という願いを込めた魔法によって、
現代の日本から呼び出されたひとりの学生だ。
 魔法?
 そう。
 この世界には"魔法"なる現象が実在し、地球で言う化学反応のような事象が現実として
証明される。
 魔族?
 そう。
 この世界には人間とは違う知的生命体が存在し、互いに憎しみ合い、終わりのない戦争
を繰り返していた。

 帰りたい。

 僕に与えられた"使命"とは、魔族を殲滅し、人間を救い、この世界に安定と平和をもた
らす……みたいなことだ。聞くと、魔族の姿は人間とほぼ同じであり、その違いを区別す
る材料はひとつだけ、らしい。
 材料?
 それを聞いて、僕は驚いた。
 でも、それは……後述することにしよう……。

 帰りたい。
 ああ、帰りたい。

 僕は異世界で寝て、起きて、訓練し、レベルを上げ、装備を整え……魔法の腕を上げ、
訓練し、勉強し、剣を握り、盾を構え、レベルを上げ、勉強し、わけのわからないメシ
を食らい、徘徊するモンスターを倒し、レベルを上げ、寝て、手から炎や氷や雷や水を
発生させ、盗賊を倒し、幽霊を浄化し、レベルを上げ、レベルを上げ、レベルを上げ……
レベルを上げ続けた……。

 帰りたい。
 そこら辺に転がるラノベの主人公と、僕は、違う。違うのだ。
 僕には愛すべき家族もいるし、恋人もいる。トヨタに内定を貰い、大学も卒業が近く、
頼れる友人も多い。
 なのに、どうして? どうして……僕が……こんなメに……。

 お世辞にも美しい、とは言えない国の王女は、「魔族討伐の暁には、莫大な褒美と地位
を約束し、望むのであれば私を妃とすることを許します」と頬を赤らめて言った。
 
 帰りたい。
 ああ、帰りたい。
 僕は望郷する。

―――――

 ふざけるな、とは言えなかった。異世界のルールなど知らないし、仮に僕が人間同士の
争いが原因で、地球に帰還できなくなるのが怖かった。だからこそ、僕は王の命令を忠実
に遂行した。従うしかなかった。でも、従いたくはなかった……。
 歯をギリギリと噛み、拳を強く握り締める。
 
「地球に帰してください」
 やがて僕は王に嘆願し、魔族の討伐を誓った。
 結果、王は約束してくれた。というより、最初に受けた召喚魔法のルールにより、"魔族"
の国の滅亡が達成されない限り、僕は地球に帰れない仕様らしい。
 つまりは、まぁ、呪いだ。

 帰りたい。
 ああ、帰りたい。
 飼っていた猫の顔を思い浮かべる。

―――――

 魔族を殺した。
 なんてことはなかった。
 彼らは僕より何倍も脆弱で、魔力も弱く、知恵も足りてないように思えた。

 魔族を殺し続けた。
 体が勝手に動いたような感覚すら、あった。
 
 良心は痛まなかった。何でも、"そういう魔法"が存在し、精神安定剤のような効果もあ
るらしかった。ふと我に返ると、大地には無数の屍が横たわり、河川は血で染まっていた。
 国の人間は歓喜し、僕も歓喜した。これで故郷に戻れる一歩が踏みだせたのだから。


「魔族がやっかいな理由は、その数と繁殖力ですから」
 と説明を受けたが、正直、深くは考えていなかった。
 多少の違和感はあった。僕が観察した限りでは、魔族は一対の夫婦を形成し、生まれて
くる子供は1匹~3・4匹程度の繁殖力しか持たないようにも見えた。……まぁ、どうで
もいいことだけど。

 帰りたい。
 ああ、帰りたい。
 恋人の顔を思い浮かべた。
 早く帰り、彼女を抱き締めたい。
 そう、思った。
 そう想い続け……僕は剣を握り、炎の魔法を魔族に向けて放った。何度も、何度も……。

―――――

 ついに、僕は魔族の王を倒した。その首を刎ね、体を燃やし、一族郎党を灰にした。
 異世界の人々は歓喜した。嬉々とした顔で魔族の土地を蹂躙し、鉱山や畑の資源を奪い、
領土を王族たちで区分けし、生き残った魔族たちを奴隷として扱いはじめた。その光景を
見た時、僕が感じたことはひとつだけ……正直、本当に正直に、こう思った。

 どうでもいい、と。

 僕が思うことはひとつだけ。ひとつだけ思うことがあるとすれは、ひとつだけ。
 そう。
 帰りたい。それだけだ。

 こんな腐った世界になど興味はなかった。
 異世界からの生還こそ、僕の欲望のすべてだった。
 優しげな父と母の顔を思い出す……けれど、それだけだった。2人を抱き締めて帰還を
叫び、喜びに涙を流す光景が……どうしても思い浮かばなかった。

―――――

「あなたの未来が幸福なものでありますように」
 王が言う。
「勇者様、私は生涯、あなた様をお慕い申し上げます……」
 王女が言う。
 ……早く、僕を帰せ。
 日本語で、僕は言う。『お前らも、滅びてしまえばいい』

 僕はワケのわからない光に包まれ、全身が溶けるようにゆっくりと消えかけ、異世界で
培った能力や体力や魔力が薄れゆくのを感じた。……ああ、これでやっと帰れる。

「ありがとう、勇者様っ!」
 人々の大歓声を脳の奥に刻みながら、僕は魔法陣の光の中に消えた……。
 心残りなどない、はじめから、無い。
 善意を施した、などとも思わない。
 思わない……思わない……思わない……。

 特に語ることもなく、僕の"異世界生活"は終わった。
 可愛らしいネコミミ少女がいるわけでもなく、ウマいメシが無限に湧いて出ることもな
く、美女たちとハーレムを作るワケでもなく、本当に――本当に、つまらない世界だった。

 心から、また――思う。
 帰りたい。
 望郷の念だけが、僕の生きがいで、僕のすべてで、僕の夢と希望だった……。
 さようなら異世界。
 帰ったら、ラノベの小説家のSMSに、ひたすらアンチコメントを送ることにする。
 さようなら……永遠に、さようなら……。

―――――

 ――波の音が聞こえる。
 どこかの海岸らしい。
 まどろみの中、ゆっくりと覚醒する。

 目を開ける。曇り空だ。サラサラとした砂の感触を手に感じる。
 ――そう。僕はどこかの砂浜に仰向けで寝ていた。
 
 ここは、地球……日本、なのか?
 
 自問するが、答えはない。
 しかし、直感はしていた。
 ここは地球で、どこかの国の、どこかの海岸で、僕はただの学生で、"異世界の勇者"な
んいう意味不明の職業ではなくて、魔法も剣も一切使えない、ただの人間であるというこ
とだけは――直感で理解していた。理解した気でいた。

 しかし――……。

「Who are you?  No problem?」

 誰かに声を掛けられた瞬間、
 僕は立ち上がり、
 砂浜に落ちていたサンゴか石か、なんだかよくわからない固い塊を手に取って、
 両手に高々と持ち上げ、渾身の力で――その誰かの顔面めがけ、降り落とした……。

「Oh, my God!!!」
 ゴンッ、と鈍い音がし、声を掛けてくれた"誰か"の顔面がグシャグシャに歪み、鼻と口
から盛大に血飛沫が飛ぶのを、僕は見た。聞いた。
 なぜ?
 なぜ、僕は、この人を襲った? 
 なぜ? わからない……。
 考えながらも、僕はこの人の顔面を踏みつけ、喉や頭を石で殴り続けた。
 なぜ?

 ……やがて、その人の体はピクピクと痙攣を始め、
 ……やがて、呼吸も止まり、完全に動かなくなった。

 遠くで人々の悲鳴が聞こえる……。
「Help me!! somebody!!」
「Murderer!!!」
「Call the police!!!」
 
 英語?……ここは地球? 
 でも、なぜ?
 なぜ? と思いながらも、僕は石を握り締め、悲鳴を上げる人々の群れに走った。
 もちろん、その人々を襲い、殺すためだ。
 なぜ?
 なぜ、"地球に帰還したはずの僕が"、"異世界での魔族である、有色人種"を攻撃し
なければならないのか?


 思い出す。
 そう。異世界での"魔族と人間との違い"とは、"肌の色"のみであるということ。
 僕は思い出していた。

 "肌の色の違う者を滅ぼすべく召喚された勇者"
 それが僕であるのなら……?
 "魔族"を滅ぼしていたのは、僕の意思ではなかった……? 

 それが、召喚魔法の使用理由で、条件で……呪い、であるのならば?

 最悪だ……最悪だ……。

 思いながら、僕はまた誰かの首を締める。
 涙を流しながら、砂浜に落ちていた鉄のパイプを拾う……。
 嘘だ……こんなハズじゃあ……。
 思いながら、僕は泣き叫ぶ子供の頭に鉄のパイプを降り落とす。

 ありえない……ありえない……。

 ガタガタと奥歯が震え、鮮血に濡れた拳がプルプルと震えた。
「……あのクソ王と、クソ王女……これが……帰還するための……呪い、なのか?」
 考えがまとまらず、推測と憶測と殺意と悪意が心の中で渦巻いた。
 どうすれば、この呪いが解ける?
 まさか……。
 世界中のほとんどの国を滅ぼし尽くすまで?
 嘘、だろ……? 
 
 帰りたい。
 いや、帰れる……のか?



 脳内で不思議な音と声がした。
 かつて――異世界でいつも聞いていたような、そんな、不可思議な声と"音楽"が脳内に
こだまする……。

 高らかに鳴り響くラッパの音、そして――

『レベルが上がりました』


                                  了 
 
 
















本日のオススメ!!!  また……岸田教団&THE明星ロケッツす……。











 岸田教団&THE明星ロケッツ……新曲アルバムと名盤たち……ちなみにseesはすべて
持っています(予約も完了す)。
  


 雑記

 お疲れ様です。seesです。



 クソ駄文ショート!
 ヤマなし。
 
 最近のとある米国のニュースと、異世界モノアニメ見て、
 2時間の急ピッチで作っただけ。
 あかんな、40点。
 おまけ作る気にもならなかった。
 


 seesに関しての情報はもっぱら​Twitter​を利用させてもらってますので、そちらでの
フォローもよろしくです。リプくれると嬉しいっすね。もちろんブログ内容での誹謗中傷、
辛辣なコメントも大大大歓迎で~す。リクエスト相談、ss無償提供、小説制作の雑談、いつ
でも何でも気軽に話しかけてくださいっス~。

 でわでわ、ご意見ご感想、コメント、待ってま~す。ブログでのコメントは必ず返信いたし
ます。何かご質問があれば、ぜひぜひ。ご拝読、ありがとうございました。
 seesより、愛を込めて💓



こちらは今話がオモロければ…ぽちっと、気軽に、頼みますっ!!……できれば感想も……。

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Last updated  2020.06.05 20:42:47
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Re:SEESのショートショート 17 『異世界からの望郷』(06/05)   千菊丸2151 さん
考えさせられる作品でしたね。

今の米国のニュースを見て、色々と考えるようになりました・・それをうまく小説に表現していきたいのですが、中々上手くいきません・・ (2020.06.05 21:52:17)

Re:SEESのショートショート 17 『異世界からの望郷』(06/05)   ★倉麻るみ子★ さん
アメリカって未だに顔の色が違うからってだけで迫害する国ですからね……
黒人である人が一度大統領になったこともあるから、少しは変わると思っていたけど、全く変わってないですよねー……

とまぁ、普段とは全く違った入り方をした、るみ子さんが、本日もコメントを書きにやってまいりました!!

私は「異世界も、戻った先での地球も、ただのバーチャルで、誰かが操作をしている殺戮ゲームなのかな?」と、読み終わったあとに思いまいました。
最後のレベルがあがった音が、聞こえたのが幻聴かそれとも実際に流れた音なのかはわからないですが、きっと誰かが操作しているゲームなのかなーみたいな。
キャラクターが帰りたいと思うのも設定で、家族や恋人もいるのも設定で……って感じの!
……多分解釈違いだと思うんで、こう思うのは私だけにします!!

うちのキャラには肌の色が違うキャラっていないので(るみ子さんアイコンの顔色こすぎるやつは省く)、今回のようなお話って書いたことないんですよね。
あとは……肌の色が濃い人って色塗るの難しいんですよね!
よって白人ばっかりいまーす(;´∀`)
ちなみに、るみ子さんアイコンがこすぎる感じになってるのは、学生の頃にノートパソコンで書いてたとき、角度で色が変わってしまう画面のせいで、現在のアイコンの肌の色が薄い色だと判断してしまっていたからです!!
カラーメーター見りゃ濃い色だってわかるだろって話なんですけど、動かしても薄い色にしか見えなかった糞ノートパソコンが悪いんです!

あ……自分語りしてしまったすみません><

ショートストーリー、楽しかったです!!(小並感) (2020.06.06 02:44:38)

Re:SEESのショートショート 17 『異世界からの望郷』(06/05)   きらら ♪ さん

こんばんは、

この小説はゲームの様な感覚の

小説なのかなと思いましたが、

続きがあるのでしょうか。7P

(2020.06.07 18:06:10)

Re:SEESのショートショート 17 『異世界からの望郷』(06/05)   クレオパトラ22世 さん
夢が覚めたと思ったら、また違う夢の中にいた。

文句を言ったらちゃんと地球に返してあげたから約束違反ではないと、異世界の王様は、居直るのかな。 (2020.06.07 19:22:46)

Layesyjoittee idnfa   futtHoorrellits さん
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