宿に荷物を置いて函館の街を歩く。金森倉庫のある海側の賑やかさから逃れて、ぽつんぽつんとあかりのともった店を眺めて歩く。そんな中でやっているのかいないのかと思いながらも、どうにも気になる建物を見つけた。それが「まつ本」だ。近づくと中からあかりがこぼれている。「天丼」と半紙に書かれた貼紙の筆文字が妙に食欲をそそる。
L字のカウンターに8席。小上がりに3卓。壁は剥がれ落ち、天ぷら鍋の脇は油染みで黒くなっている。カウンターの角に座り、まずはビール¥600を頂く。カウンターは厨房側に傾斜していて、ビールを置くとビールも傾いている。人の手の温もりを感じるカウンターだ。先客が3人あり、出前も入っているとかで大童だ。それでも鋭い手捌きで次々に注文をこなしていく板さんの仕事ぶりが気持ちいい。天丼¥1000を注文。キス2尾、エビ2尾、シシトウ、茄子の乗った天丼は丼から具がはみ出している。上天丼は¥1100。¥100の差が何かは謎だ。江戸前の濃い味だが、見た目以上に歯触りがサクサクしていて重たい印象はない。刺身類もよくはけている。お腹に余裕があれば食べたいところだが、丼もので満腹。こうして函館の夜は更けていくのであった。
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