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2013年01月27日
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カテゴリ:明治の群像

飲食店にしても、駅のホームにしても・・・。

最近は、禁煙になっているところがほとんどで、
愛煙家にとっては、肩身が狭い昨今です。

身体に悪いから、やめた方がよいと、わかってはいても、
なかなかやめられないのが、タバコです。


タバコというのは、元々、アメリカ大陸から伝わってきたものでありますが、
中でも、一番最初に喫煙を始めたのは、マヤの人々であったといわれていて、
彼らは、儀式や魔除けという意味あいでタバコを吸っていたのだそうです。

大航海時代になると、船乗りの間でタバコが広まっていき、
当時、喫煙には様々な薬効があると信じられていたのだといいます。

日本にタバコが伝わってきたのは、室町時代。

ポルトガルの宣教師により伝えられたといい、
その当時の認識も、やはり高価な薬品というものだったようです。

それが、手頃な価格に値下がりしてきて、江戸の中期になると、
庶民の間にも、喫煙の風習が広まっていくことになりました。

ただ、この頃のタバコというのは、今のような紙巻形のタバコではなくて、
煙管(キセル)を使って、煙をくゆらせるスタイルのもの。

今のような形の紙巻タバコが普及していくのは、明治以降のこととなります。


と、以上、タバコの歴史を概観してみましたが、
今回、取り上げようとしているのは、
明治時代に紙巻タバコの製造販売で大成功し、
「煙草王」とも称されたという実業家・村井吉兵衛のこと。

タバコの大ヒット銘柄を次々と生み出し、
今の日本タバコ産業の原型を築いたともいえる彼の生涯について、
以下、まとめてみたいと思います。


***


村井吉兵衛が生まれたのは、幕末期の文久4年(1864年)、
京都で煙草商を営む商家の家に生まれたといいます。

とは言っても、家計は貧しかったようで、
吉兵衛は、叔父の家に養子に出され、
やがて、そこで吉兵衛は、煙草の行商を始めることになります。

この吉兵衛。
なかなかに商才や、利殖の才があった人のようで、
煙草の行商によってお金を蓄え、やがて、煙草の製造をも手掛けていくようになっていきます。

当時、明治初年の頃というのは、文明開化の風潮の中、
タバコにおいても、紙巻形のものが西洋からもたらされ、
これが、その手軽さとともに、ハイカラさの象徴であるとして注目を集め始めていました。

この紙巻煙草を製造する会社も、日本で何社か現われてきており、
吉兵衛も、これに目をつけます。


タバコといえば、今はフィルターがついているのが一般的ですが、
この当時は、まだ、フィルターつきのタバコというのは世に現れておらず、
吸い口にストローのような巻紙をつけた口付きと呼ばれるものが一般的でした。

しかし、吉兵衛はこの口付き式ではなく、
端から端まで葉が詰まっている「両切り」というタバコを研究しました。
今でも販売されているゴールデンバットのようなものですね。

吉兵衛は、これを日本人の嗜好に合うようにということで研究を重ね、
製品の開発を進めていきました。


こうして生み出されたのが、日本初の両切り紙巻き煙草「サンライス」。

さらに、吉兵衛は、これのポスターを作って広告するなどの宣伝にも力を入れ、
それにより「サンライス」は、たちまち、大ヒット銘柄となっていきます。

その後も、自らアメリカに渡ってタバコの製造方法を研究、
その成果を持ち帰って、次に、吉兵衛が開発したのが「ヒーロー」という銘柄でした。

この「ヒーロー」は、パリ万博で金賞を受賞するなど、世界的にも認知される銘柄となっていき、
その生産量は日本一を記録し続けます。

こうして、煙草業界で確固たる地位を築いていくことになった村井吉兵衛。
やがて、彼は世間から「煙草王」と称されるようになっていきました。


ところで、吉兵衛には、この頃、
もう一人、強力なライバルがいました。

それが、東京で「天狗煙草」という口付き煙草を販売し、
人気を博していた岩谷松平という人物。

岩谷は、軍に煙草を納入することで実績を上げ、
又、その一方で、派手な宣伝広告を行うことにより、煙草の売上を伸ばしてきていました。

この頃には、吉兵衛も販売拠点を東京に広げていましたが、
そこで、この両社の熾烈な広告合戦が、繰り広げられます。

岩谷のイメージキャラクターは天狗で、シンボルカラーが赤。

岩谷は、赤い衣装で赤い馬車に乗り込み、自らを大安売りの大隊長と称して街中をパレードし、
「天狗煙草」をPRして回ります。

一方の吉兵衛もこれに対抗。

吉兵衛のシンボルカラーは白で、
白いのぼりを揚げた楽隊を編成し、
これに、商品のテーマソングを演奏させて街路を行進しました。

さらに、この頃、「ヒーロー」には“たばこカード”をおまけとして添付するなど、
当時としては斬新な販促策を打ち出し、こうしたことでも販売効果を上げていたようです。

両社の広告合戦はエスカレートし、時には騒動を巻き起こすこともあったようですが、
状況としては、アメリカでの見聞を広めていた吉兵衛が、
モダンで洗練されたデザインを前面に押し出して、
岩谷の「天狗煙草」を凌駕していたようです。


しかし、このような販売競争を繰り広げていたタバコ産業に、
やがて、大きな転機が訪れることになります。

それが、タバコの製造販売に対する国家の介入。

当時、財政難に陥っていた明治政府が、
こうしたタバコ販売の活況ぶりに、目をつけたのです。

まず始めは、日清戦争が始まった頃のこと。

新たに煙草税を導入しましたが、ただ、この税制は思ったようには機能せず、
結局、税収効果を上げることが出来ませんでした。

そうしたうちに、勃発したのが日露戦争。

政府は、戦費調達の必要に迫られることとなり、
タバコを国家専売制に切り替えることにより、この財源にあてようとしました。

これにより、村井吉兵衛も岩谷松平も、
煙草業からの撤退を余儀なくされることとなってしまいました。

こうして、約30年続いてきたタバコ民営の時代が、
終わりを告げることになります。



それでも、吉兵衛は、
この時、煙草専売制に切り替えるということで、
国から莫大な額の補償金を受け取りました。

吉兵衛は、その資金を元手に村井銀行を創設し、
また、それ以外にも印刷・石鹸製造・カタン糸などと事業を広げていきました。
村井財閥の成立です。

しかし、それも、それほど長くは続きませんでした。

大正15年に、吉兵衛が死去。
その翌年には、昭和恐慌により村井銀行は破産し、
村井財閥は崩壊してしまうことになります。



長楽館.jpg



京都・円山公園の隣に建つ、「長楽館」という西洋風の瀟洒な建物。

今は、ホテルとなっていますが、
元は、村井吉兵衛が国内外の賓客をもてなす迎賓館が必要だとして、
私財を投じて建てたものでありました。

レトロな「長楽館」の、その外観からは、かつての煙草王の華やかなりし生活のさまが
うかがい知れるようにも思えます。


もし、吉兵衛が、そのままタバコ業を続けられていたら・・・。

村井吉兵衛の生涯も、そうした意味では、
国策により翻弄された人生であったと言えるのだと思います。






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最終更新日  2013年01月27日 07時26分45秒
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