柔道家 塚田真希
オリンピックの柔道は、日本勢が不振とはいえ手に汗握るものがあった。特に私が感動したのは、中国の選手と日本の塚田真希の決勝戦だ。終了の数秒前まで、ポイントで上回っていたし、ほとんどの日本人が金メダルを確信した直後、捨て身の技に宙を舞ってしまった。決められた技が一本背負でもあったし、大逆転負けといっていい。あそこまで追い詰めて、手に仕掛けた勝利をふいにしてしまうのだから、号泣して「悔しい」と絞り出すしかなかったのは、とてもかわいそうであった。しかし、やっぱり武道家だのだと感心してしまったのは、その後のコメントと塚田の表彰台の笑顔だ。「覚えていない。これが実力です」「悔いはありません。」派手な、逆転劇を食らった敗戦でも、攻め続けた自負もあったと思う。この戦いっぷりと潔さが素晴らしかった。男子柔道が不甲斐ないのかどうかは、よくわからないけれど、女子柔道家、塚田真希の見せた態度は鮮やかな印象を残した。