別の悲しみで鳴いている(和泉式部集完)
「同じように聞こえない」 「Dog photography and Essay」では、「和泉式部集」の研鑽を終了して「紫式部日記」に移ります。 秋霧に 行方も見えず わが乗れる 駒さへ道の 空に立ちつつ[正集八六五]秋霧で行き先も見えないで わたしの乗っている馬も道の途中で宙に浮いているような感じ 鳴く虫の ひとつこゑにも 聞こえぬは 心ごころに ものや悲しき[正集八六一・詞花集秋・後葉集秋上]虫の鳴き声が同じように聞こえないのは あの虫たちもそれぞれに別の悲しみで鳴いているからだろうか もの思へば 雲居に見ゆる 雁が音の 耳に近くも 聞ゆなるかな[正集八六四]物思いに沈んでいると はるか遠くに見える雁の鳴き声も 耳の近くで鳴いているように聞こえる 「和泉式部集」を終了し明日より「紫式部日記」に移ります