見逃していた映画を、、、 『蝶の舌』
【中古】【DVD】蝶の舌 特別版(’99スペイン) (洋画)【マラソン2011冬_趣味】今日の朝食;かぶとキュウリのぬか漬け、がごめ昆布と小松菜の味噌汁、玄米小豆粥1杯。先日のクラブカップ、サッカーはすごかったみたいですね。圧倒的にバルサの勝利。メッシはやっぱりすごいです。 さて、年末なのになかなかその気になれず、掃除以外は進まない毎日です。一応、年末年始の手配はしているんですけど。 急に寒くなって、家から出る気がしないので見逃していた映画を観ています。これ、ずっと気になっていた作品です。 予告編で見て、美しい自然の映像と少年の表情が印象的でした。スペインの「長い夜」、フランコ将軍独裁政権 直前の映画です。雨の多い、緑豊かな町に暮らすモンチョ少年。仕立屋の両親と兄の4人暮らし。一年遅れて学校に上がることになりましたが、遠目に見た先生はとても怖そう。お兄さんは学校では先生にたたかれるものだといって脅すし、恐怖心は広がる一方。 いざ、学校へ行ってみると気後れして逃げ出してしまいます。。。。 学校で出会うグレゴリオ先生とモンチョ少年の心の交流。自然豊かな風景をバックに、少年の淡い初恋、成長、友情が描かれています。 グレゴリオ先生は顔は怖いのですが、博学で温厚、子供にも親身になって話をしてくれる優しい先生。公平で高潔です。子供から「死んだらどうなるの?」と聞かれても宗教に逃げないんですね。その方が簡単なのに。そう、彼は共和党の無神論者なのですが、普通教育の現場では隠すもの。が、高潔な故 子供にも自分の信念に沿って話します。 グレゴリオ先生は田舎の教師なのでいろいろな教科を教えるのですがもっとも好きなものはどうも生物の分野。自然界に対して子供たちに目を開かせます。変わった鳥の話、蝶の舌がらせんになっているということ、蟻が家畜を飼っている話、、、、。 以下、ネタバレを含みます。******************でも、幸福は長続きしません。 フランコ将軍の独裁政権。いわゆる「アカ狩り」が起こります。日曜日に協会に行かないような人物、共和党員は思想犯。捕まえられてしまいます。ある日、モンチョ少年のお母さんはお父さんの本、新聞、党員証を焼きます。そう、モンチョ少年の父親も市長も、友人たちもみんな共和党員だったのです。が、生き残るためには隠さねばなりません。母親はモンチョに「お父さんは神様を信じているし、共和党員ではない。市長の友人でもないし、グレゴリオ先生に背広も作っていない」と言い含めます。すべて嘘。モンチョ少年が先生によくしてもらっていたので、お父さんはお礼に背広を作ったんです。 そしてあの、ラストシーン。捕まえられていく人達を町の人達が広場で見ています。皆、仲良くしていた人達ばかり。列の最後にはグレゴリオ先生もいます。が、生活のため、みなののしり、関わり合いを否定します。トラックに乗せられる人達に「アカ、裏切り者、不信心もの、、」と罵倒。そしてモンチョの両親も子供にそうするように促します。 ここからが、原作と違っていて賛否両論あるところ。モンチョ少年が先生に「アカ、アテオ(不信心もの)、、、」とののしるんですね。そしてトラックを追いかけて石を投げます。そして教えられた鳥の名前と一緒に「蝶の舌」と叫びます。(原作では「アカ、アテオ」とはののしりません。投石行為も、ほかの少年がしたこと。ヒキガエル(先生のあだ名)、鳥の名前、蝶の名前をつぶやくだけなんです。)ただ、そのときモンチョ少年が感じていたのは哀しみではなく、「怒り」だと明記してあるので、監督はそれを表現したかったのでしょうね。 状況がわからない、自分の幼さ。大人の自分勝手さ、理不尽な社会。また、自分の両親や町の人達のように、本心を隠してでも普通に暮らそうとしなかったグレゴリオ先生の高潔さにもいらだちを感じたかもしれません。 子供の目線でこの時代をとらえたいい映画だと思います。 賛否両論あるのは、この投石行為と罵倒。ない方が感動できたのでは?という指摘です。「蝶の舌!」と先生に叫ぶだけだったら、、、と。確かにその方が原作に近いし、叙情を好む日本人向きです。が、あえて原作から変更したと言うことは監督のメッセージ。この時代への監督自身の考えを表しているのでしょうね。 今、子供の視点からこの時代を捉え直した映画が数多く作られています。どれもいい映画が多いです。 ちなみにこの映画は原作短編小説3つを融合させたもの。日本映画でも例がありますね。『羅生門』とか『ツゴイネルワイゼン』、『陽炎座』。うまくまとめてあると思いました。