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小説盆栽物語 12話 遣唐船嵐でニ隻難破、空海長崎で説法会
806年11月21日に明州の港を出港した遣唐船4船団は真っ直ぐ対馬を目指していた。この航路は目印の島がなく星座が唯一の羅針盤だったが、この時期は比較的海は穏やかで熟練の船長と乗組員30名は一番早い航路を選んでいた。最澄も空海も天文学や気象学を学んでいたが、やはり、こうして星座を頼りに星明かりだけで暗い海を航行する乗組員を尊敬しながらも最澄と空海は実践の天文学、気象学と航海技術を船長から学んでいたので退屈はしなかった。 4隻の船の乗客は学者、医師、土木設計技術者、造園技能士などそれぞれの専門家ですべて官位がある公務員で朝廷から遣唐使を命令されてそれぞれの年数の任務を無事終えて日本への帰路だった。彼らの部署の長の官位はすべて従三位以上で随行員も従五位以上と最澄の従六位、空海の従七位とはかけ離れた高級貴族になる。彼らが無事日本に帰れば最低でも官位が一階級上がるのは間違いはない。 しかし、この遣唐使を自分から志願する貴族はもちろんいないからある面ではこの遣唐使に選ばれた高級貴族と随行員の貴族はいわば左遷扱いになっていた。最澄や空海の身分は民間人だが、朝廷は民間人の僧侶や宮大工や医師、造園師なども遣唐使として積極的に留学させ唐国の文化を持ち帰らせていた。もちろんこれらも公務として留学費等々は朝廷が出していた上に無事帰れば官位従十二位(最下位の公務員)のご褒美が待っていた。 船団は大陸と対馬の中間点まで嵐にも海賊にも遭遇しないで順調に12月1日の朝を迎えていた。この一日というのは平城天皇の命により最澄と空海が官位を剥奪される日でこの日から無位の僧侶になっていた。第一船には最澄、盆景和尚と樹齢300年の岩茶の盆栽と樹齢100年以上の盆栽が25鉢乗っていた。これらの盆栽は暗い船倉で二段に積まれていたが、盆景と日本に帰る造園師の手で昼間はなるべく日光浴をさせてなんら平地と変わらないようだった。 盆景も乗客の中の日本の専門分野の学者から色々なことを教わり船の旅を楽しんでいた。最澄も空海も酒好きで信じられないほどの酒の瓶を船に積み込んでいた。これは自分で飲むだけでなく乗客や乗組員にも飲んでもらい比叡山のことを宣伝、または人脈作りの戦略でもあった。第二船でも空海が最澄と同じことで人脈を広げていた。その中で高級貴族で従三位の藤原弘成と空海は気が合い、夜になるとどちらかが酒を誘っていた。そんな中で弘成に実は空海は官位を剥奪された上に博多で船を降ろされて5年間謹慎させられると打ち明けていた。 弘成との話しの中でこの弘成の弟の従三位の広活が太宰府の長官(九州地区総括本部)をしていることが分かった。弘成は船が博多港に着くと荷揚げや水、食料の補給に2日間は停泊する時に空海を広活に紹介すると約束してくれた。この太宰府や九州には比叡山の末寺はなく奈良仏教の独壇場だった。空海は都に帰ると同時に最澄から独立して新しい宗派の真言宗を立ち上げる予定をしていたが、博多で足止めの予定になっていた。 九州には奈良仏教系の末寺が約450寺ほどあったが、これは最澄が天台宗を立ち上げる前は仏教といえば奈良仏教の系列しかなくやむを得ない。最澄も空海も最初に入門したのはやはり奈良仏教になる。空海はこの博多での謹慎処分を神から与えられた千載一遇の出来事と捉えて空海の真言宗の布教を九州全土に広げると誓っていた。 船団はまだ対馬の島影が確認されない深夜に嵐に遭遇した。この嵐を事前に予測していれば小さな無人島の島影に錨を降ろして待機できるが、この時は不意打ちで嵐に見舞われていた。この嵐で第三船と第四船が転覆して乗客と乗組員の約200人が海に投げ出されていた。第一船と第二船で付近を捜索して板切れ、積み荷などに掴まり漂流している人を丸二日間探して助けたが、この結果56人の行方不明者が出たと船長が航海日誌に記録していた。最澄と空海はこの船の遭難現場で一昼夜通して祈り続けていた。 残った船団ニ隻は西に大きく流されて当初予定の寄港地に決めていた対馬から五島列島の福江島に変更して福江島大宝港に807年1月3日に寄港していた。この港でも3日間停泊するために最澄と空海は大宝寺を訪れていた。この大宝寺は奈良仏教三輪宗の九州別格本山で住職は道重で最澄と空海とも若きころ同じ寺で修行し仲間だった。その後、最澄は比叡山で修行して天台宗を立ち上げ、空海は最澄の弟子になり、道重は九州本山へ赴任していた。 この大宝寺の九州地区の末寺は九州だけで125ヶ寺もあり奈良仏教の九州地区の末寺455ヶ寺の約三分の一の勢力になっていた。道重貫主は奈良仏教と対峙する比叡山の最澄、空海と唐国の僧侶大使の盆景和尚が大宝寺に表敬訪問したことに驚いたが、道重は丁重な扱いだった。空海はこの九州で自ら立ち上げる真言宗の布教をするために太宰府に真言宗創建の寺を建立することを道重貫主に打ち明けて理解を求めていた。 福江島に停泊中の最後の夜には空海の説法会が予定されていた。道重は傘下の125ヶ寺の末寺の住職にこの空海の説法会に参加するようにと空海が大宝寺に到着と同時に各寺に通知を出していた。この九州には奈良仏教六宗派七大寺院の貫主や幹部はまったく布教するために訪れたこともなく九州仏教会は奈良の本山への不満が長年蓄積していた。そんな折に京の都の官営東寺の官主に内定している空海の説法が聞けるというこで末寺の僧侶ばかりかこの末寺の檀家総代まで説法会に参加していた。 ★★★★★新連載小説をはじめました。 小説盆栽物語 1話 空海唐から盆栽50鉢持ち帰りへ 小説盆栽物語 2話 宗景造園業に弟子入りで盆景和尚となる 小説盆栽物語 3話 盆景(盆栽)のルーツ、雅山少年が発見 小説盆栽物語 4話 宗景、玉林の禁断の恋から若者たちが盆景を爆買い 小説盆栽物語 5話 玉林、宗景皇帝に祝福され結婚…豆盆栽 小説盆栽物語 6話 日本茶のルーツは武夷岩茶の盆景になる 小説盆栽物語 7 話 椿の盆景が明懸尼寺を再興させた 小説盆栽物語 8話 玉林(ユーリン)に赤ちゃんが! 桓武天皇崩御 小説盆栽物語 9話 空海屁理屈禅問答で盆栽は戦争をなくす 小説盆栽物語 10話 玉林、盆景和尚長安での最後の別れの夜 小説盆栽物語 11話 最澄、空海官位剥奪の上5年間謹慎処分 ★★★ 小説西寺物語 1話 守敏と空海の因縁の争い・西寺跡発掘調査・女装小説家 オカマのイナコ 小説西寺物語 2話 九条葱が西寺を救った 小説西寺物語 3話 守敏、芹と葱で大僧正に! 小説西寺物語 4話 稲荷神社のお告げで長岡京遷都決定 小説西寺物語 5話 寺と村落ぐるみ乗っ取り大作戦 小説西寺物語 6話 東大寺権操、守敏長岡京へ抗議の旅 小説西寺物語 7話 東大寺僧兵300名稲荷神社と戦へ 小説西寺物語 8話 農民稲荷神社炎上を救う 小説西寺物語 9話 守敏僧都、都を代表する名僧に! 小説西寺物語 10話 最澄、空海唐へ、守敏奈良仏教から破門 小説西寺物語 11話 僧侶不足で奈良から僧侶引抜き大作戦 小説西寺物語 12話 神野親王武家源氏を旗上げ 小説西寺物語 13話 巨大権力(奈良仏教)には経済封鎖を 小説西寺物語 14話 皇太子の不倫…人妻・薬子の変 小説西寺物語 15話 平安時代の美魔女薬子の野望 小説西寺物語 16話 平安時代のスーパースター光源氏誕生 小説西寺物語 17話 薬子の限りない野望…その1 おかげさまで、この「伏見稲荷大社の物語」が大ヒット中で連日100ほどのアクセスで読まれています。さらに100話まで書く予定です。 無料の電子書籍…お笑い歴史コラム…「伏見稲荷大社の物語」~85話まで書けています。目次機能で好きなタイトルを探してゆっくりお読みください。 このコラムが少しでもおもしろかったら↓↓↓の画像をワンクリックしてください。ブログランキングに参加しています。現在5~7位どす。。。あなたの愛のワンタップが私に生きる勇気を与えてくれます。1位まではあと少し…よろしくおねがいいたします。 小説家ランキング ★★★…完全無料の大人気の電子書籍…ダウンロードしてゆっくり完読してください。 http://p.booklog.jp/book/108339/read ★…長編小説「トラック3姉妹・ダンプ姉ちゃん理恵」…31話・運輸・建設の職場には賃金の男女差別はなく高賃金でもう男なんどに頼らなくても子育てできる運輸業界、建設業界を確立した理恵社長の物語。女性に大人気の小説になっています。 ★…「働く女性たち 駆け込み寺居酒屋ポン吉」 1話2分で読める、51話まで書けている、少しHだが女性に大人気。目次機能がありますから好きなタイトルを探して読んでください。 ★…中編小説「天使の恋~美幸…明美…真弓…梨香…美雪…早苗…香奈~7名の恋の物語」…すべて京都のタクシードライバーが主役になっている少しHな若い女性のドラマ、女性に大人気で静かなヒット作になっている。二つの書籍から ★…天使の恋~美雪、早苗、香奈…3人の恋の物語も大人気 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020年02月21日 09時14分06秒
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