長沢芦雪
「長沢芦雪(ながさわ ろせつ)」。「応門十哲」と呼ばれた、円山応挙の優秀な弟子10人の中のひとりです。駒井埼と並び、特に美人画の名手と謳われ彼は、後世には奇想派とも呼ばれ「伊藤若冲」・「曽我蕭白」らと並び称されます。そんな芦雪の展覧会が、滋賀県信楽のMIHO MUSEUMで開かれており、芦雪ファンが訪れてます。私が初めて芦雪の絵と出会ったのは忘れもしません。大学一年生の秋、特別拝観中であった建仁寺久昌院(きゅうしょういん)でした。掛け軸だったのですが、笛吹童子と説明されており、牛の背に乗った少年が笛を吹いているのですが、その様子がいかにも軽妙で、風の如き爽やかさを感じさせてくれる牧歌的水墨画でした。その画題が「牧童吹笛図」と聞いたのはそれから二十数年後のことでした。いやいや画題のことはどうでも良いのです。問題はその描き方でした、何と筆ではなく、指を使って描いたという「指頭画」。こんあ筆法が江戸時代にあったんだ!と強く衝撃を受けたものです。指で描かれただけあって、その描線が柔らかく、そのタッチが少年の純朴さをよく表現していました。ちなみに芦雪は丹波の生まれ、師匠の応挙が亀山(現在の亀岡市)ですから、すぐご近所ということになります。水清く、実り多き丹波の里。豊饒な地は芸術家の感性を育てる風土でもあるようです。「長沢芦雪展」は6月5日(日)まで。何とか時間を作って見学に行きたいものです。自由奔放な芦雪の表現力が一堂に会するのですから。