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カテゴリ:番外編
今日はサーカスはお休み。番外編です。なのにちょっと長いです、すみません。
「王と鳥(Le Roi et l'oiseau)」(それに先立って公開された際の邦題が「やぶに らみの暴君」)というアニメーションをご存知の方はどれくらいいらっしゃるだろう か。 1979年、監督ポール・グリモーによって発表されたフランスのアニメーションで ある。 半年ほど前、たまたまタワー・レコードでDVDが目についたので買ってみた私。 一見、ディズニー映画にも見える、ほのぼのとした絵柄であるが、見れば見るほど、 うむむむ、なんかディズニーとはやっぱり趣が異なる…やっぱフランスだわ。 絵面に反して、な~んか物悲しい…音楽もめちゃめちゃ玄人ウケする感じのものばか り…。 そしてラストに至り、勧善懲悪、かと思いきや、え?えぇ~?!なに、これで終わっ ちゃうの! …という具合に、見るものを困惑に陥れたまま、エンドロールに突入するのである。 と、見ている側の感情のみ表現しても何がなんだかわからないので、あらすじを言い ます。 巨大なお城が砂漠のようになーんにもない世界にぽつねんと、(フランスのモン・サ ン・ミッシェルをご存知の方はあんな感じをイメージしてください。ただし周りが砂 漠、建物はもっとアナーキーっていうか、アヴァンギャルドな感じです。)建ってい ます。 このお城は城下町を従えていますが、目に見える部分だけではありません。実は地下 にも城下町は続いているのです。日の光も届かない、活気も希望もなくなった町が…。 この国を治めるのは一人の王様、そう、「やぶにらみの王様」です。 やぶにらみ、っていうかアニメでは可愛らしいちょっぴり寄り目の王様です。 しかしこのルックスにだまされてはいけません、かなり傲慢で残酷な人のようです。 そしてこの城の上を自由に飛び回るのが、そう、もう一人の主役、「鳥(Oiseau)」 です。 孤独な王様は誰も信用できません。一人っきりに、完全なる一人っきりになれる部 屋、巨大の城の頂上付近にある、目もくらむような高いところにある部屋が、唯一安 心できる場所なのです。 部屋に飾ってある美しい羊飼いの女の子の絵に、王様は恋心を抱きます。しかし片思 いです。なぜなら羊飼いの絵の横には、名もない煙突掃除の男の子の絵が飾ってあり、2 人はお互いに心を寄せ合っているのですから…。 王様が羊飼いを自分の妃にしようとしていることを知り、恋人たちはそれぞれの絵の中から逃げ出し ます。 王様は必死で追いかけます。自分が操る巨大なロボットで、地下にまで2人を追い込 み、ついに捕えて羊飼いをもう少しで我が物にできそうになったのですが、「鳥」の 活躍により、結局は王様の傲慢な想いが果たされることなく、「鳥」に操縦桿を奪われた 自分の巨大ロボットによって、王様は地の果てまで飛ばされてしまうのでした…。 さぁ、こう書くと、勧善懲悪、わかりやすいわ~、と思いますよね。 しかしですよ、第一のナゾ、それは、実は羊飼いと煙突掃除が逃げ出すとき、本当の 王様は城の中の落とし穴に落され、描かれた王様の絵が王様になりすまして2人を追 いかけるのです。本当の王様はどこへ行っちゃったの?! そして第二のナゾ、それは、最後にあわや王様に嫁にとられそうになった羊飼いを救 うため、「鳥」が巨大ロボットの操縦桿を握って王様を退治するんですが、その間 に、鳥がロボットの操縦に慣れていないせいか、どんどん城や城下町を壊して、つぶ して、踏みつけていきます。 王様はめでたく飛ばされました。しかし、最後に何が残ったのでしょう?最後の場面 に出てくるのは、小さな檻に入れられた小鳥、その小鳥を巨大ロボットが檻から出し てやり、画面に残されたのは巨大ロボットだけ、小鳥のピーピーという声だけが響 き、最後にロボットが空になった檻を拳でガン!と潰してENDです。 羊飼いは?煙突掃除は?そして地下に住んでいた住人たちは? 「善人」役のはずの人々の消息がわからないのです。生き残ったのは小鳥だけ? 見れば見るほど謎で不可解で、でも不快ではなくて、心に残るんです。 DVDの解説を読むと、この中に表現されているのは、当時社会で起こっていたことの隠喩だといいます。 どなたか、このアニメーションを見事に分析して見せてくださる方、いませんか? それとも分析しないからこそ、心からどうしても離れないのかもしれません。それな らこのままの方がいいのかなぁ。 強引ですが、フランスつながりで書いちゃいました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005年10月01日 22時45分20秒
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