毒キノコの話
やっと天気が良くなったかと思ったら、今日は雨。でも、明日晴れたら、きっと沢山のキノコが生えてくるので、それも楽しみです。とくに、これからおいしいのは、シモフリシメジ。手打ちうどんと根菜と一緒に煮込むと、とても良い出汁がでておいしいのです。ムキタケもきっと明日は大きくなっていることでしょう。キシメジはもうおしまいですが、味噌汁や焼いて食べてもおいしいハナイグチももう少し楽しめそうです。先日キノコの本の紹介をしましたが、今日は少し毒キノコのお話をしようと思います。毒キノコを見分けるいろいろな言い伝えがあります。その地域に生えるキノコを見分ける時に役立つ指標になるのかもしれませんが、信用しない方が良いと思います。「茎が縦に裂ければ食べられる」「毒キノコは色が華美だ」テングタケの仲間は縦に裂けます。テングタケ科のドクツルタケは「死の天使」と呼ばれ、致死率が高い危険なキノコですが、見た目は真っ白です。逆に、私が食べてみたいタマゴタケは、赤と黄色の派手派手しい色をしていますが、美味だそうです。毎年中毒の被害者がでるカキシメジは、縦に裂け、色はとても地味で、シメジ型をしていて、よくみかけますし、とてもおいしそうなのですが、激しい胃腸炎を起こし、「きのこ食中毒の御三家の1つ」とも呼ばれています。キノコが怖いのは、その成分や働きが未解明のものが多いからです。例えば、2004年に、食べられるキノコとして有名なスギヒラタケを食べて、急性脳症を起こし死亡する症例が多発しました。(59人が発症、19人が死亡)死亡者に共通したのは、腎臓病患者ということですが、原因は解明されていません。また、テングタケ科には死にいたる猛毒をもつキノコが多いのですが、テングタケは味が良く、死亡例が少ないので毒性が弱いと勘違いされ、十分な知識を持たずに食べられることがあります。テングタケの症状は、嘔吐・下痢・視力障害・うわごと・興奮・瞳孔縮小&拡大・痙攣・意識不明・昏睡などが知られていましたが、平成15年に呼吸困難に陥った例がでてきました。気道切開が間に合ったので一命をとりとめましたが、毒成分が複雑なため、症状も複雑であることが分かっていただけると思います。さらに、胃腸だけでなく中枢神経がやられるため、中毒の最初の症状である酒酔い状態で車の運転をしたために死亡した例もあるそうです。では、中毒が多いキノコを例に、少し整理してお話をしますね。キノコ中毒は、中毒症状により、3つに分けられています。1.胃腸炎型:ツキヨタケ、カキシメジ、クサウラベニタケ、テングタケ等食後30分から2時間で嘔吐・下痢などの症状が現れます。数時間から2日以内で症状は治まりますが、重症の場合は、のたうちまわるような苦しみが続き、意識が低下することもあります。2.コレラ型:ドクツルタケ、タマゴテングタケ、コレラタケ等食後6時間から半日で、まるでコレラにかかったかのような強烈な腹痛を伴う嘔吐や激しい下痢の症状が現れ、脱水症状を引き起こします。体力がないと、脱水症状で命を落とすこともあります。1日から2日で症状はおさまるのですが、中には、症状が悪化し、肝臓や腎臓の組織が破壊され、さらに呼吸困難・ショック状態・昏睡状態に陥り死亡することもあります。回復できても、後遺症が残ることが多いです。この中毒は、マニタトキシンという毒成分によってひきおこされます。3.脳症型・神経型:ベニテングタケ、テングタケ、ドクベニタケ、ドクササコ、ワライタケ等キノコの種類によって、症状の現れ方がかなり異なります。摂取直後から1日で発症し、大抵は、1日で回復します。神経が傷害されるため、身体がほってったような感覚や逆に悪寒から始まり、酩酊状態、視力障害、狂騒状態になったりし、重症の場合は、死亡することもあります。特に怖いのは、ドクササコで、発症に1習慣かかることがあり、発症すると、手足に火傷のような赤い腫れが生じ、激痛に襲われ、それが1ヶ月以上続くことが多いのです。キノコの毒は、地域によって強さも変わるそうです。ある地域で食べられているからといって、気候風土の違う地域で食べられるとは限りません。また、毒キノコを食べる地域では、長い間培われた知恵による、毒抜きが行われています。塩蔵や天日干しも、手順や期間など、気をつけて行わないと、毒が抜けないことがあります。また、キノコの摂取量や食べた人の体質により、発症までの時間も症状もさまざまに変化するので、昔から食べられているキノコであっても、大量摂取には気をつける必要があります。もし毒キノコを食べてしまったら?毒を排出するしかありません。医療機関で胃の洗浄を行ってもらうことが推奨されています。また、勝手に胃薬や下剤を飲まないように、と言われています。何よりも、毒キノコを食べないこと!!これが大切です。「知らないキノコは食べない。」知っていても、なんだかおかしい、と思ったら、食べないこと。知っているキノコに混ざって毒キノコが生えていることもよくあります。山間部の冬の間の蛋白源として利用されてきたキノコ。そのキノコに含まれる高分子多糖体(β-グルカン等)には、がん細胞を攻撃するNK細胞やマクロファージ・キラーT細胞などを活性化させて、低下した免疫力を回復させ、がん細胞の増殖を防ぐ働きがあるそうです。また、菌が作り出す栄養が見直され、発酵食品などの菌食が注目されていますが、キノコも酵母と同じ、菌の仲間です。健康のためにも、いざという時のためにも、安全な天然のキノコを見極める目を養いたいものです☆・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・今日おすすめの、きのこの図鑑→『日本のきのこ』ボリュームたっぷり、写真もたっぷり、このシリーズは眺めていてとても楽しいです♪