小説 「scene clipper」 Episode 28
前回はここら・・・多分。「私なら、一人で大丈夫だから」「いや、俺が大丈夫じゃないから」「・・・世話の焼ける男だこと・・・」北沢ロフトの入り口が爆笑に包まれた。 小説 「scene clipper」 Episode 28 あれからリョウとマリは明大前で京王線に乗り換えて笹塚で降りた。甲州街道を渡る歩道橋の途中でマリが口を開いた。「ねえ・・・」「ん、?」「さっきどうして代田橋で降りなかったの?」「ドアが開いた時に何故それを聞かなかった?」「・・・降りて欲しくなかった、からかな」 つい振り返ってしまう。「そんな可愛いこと言ってると、食べちまうぞ」「いいよ・・・」 もう我慢できなかった。リョウはマリをグッと引き寄せると彼女の唇を塞いだ。自分でも意外なほど、けっこう濃厚なキスになった。(こんなに好きになっていたのか俺は・・・) マリの唇を解放すると喉の渇きを覚えた。「ビールは何をおいてある?」 (時に無神経と言われるのはこのあたりか?)「キリンかな・・・?」「じゃあコンビニに寄るか、俺アサヒ党だからさあ」「お腹も空いたしね」「おでんとかでいいかい?」「うん、あと、あれもね」「まかしとけ・・・」 買い物済ませてマリの部屋に着いたはいいが、焼け木杭に火が付き結局ビールもおでんも二人の口に入ったのはそれから1時間後だった。 翌朝、俺はコーヒーの香りで目を覚ました。気配を感じたのかマリがキッチンから顔をのぞかせた。「おはよう・・・」男物かな・・マリは膝の上まである大きめのシャツを着ていて裾の脇から白い太ももが見え隠れする。 「おはよう、マリちゃん」「ちゃんはないでしょ、ちゃんは」「だね・・・」大きく頷いてみせるマリ。「マリ・・・」「なあに・・」「腹減ったよ、何かある?」「トーストと・・」 冷蔵庫の中を確認してから「ベーコンエッグならできるけど」「いいねえ、それ頼める?」「もちろん・・・じゃあその間にシャワー浴びてらっしゃいよ。あ、着替えないか」「大丈夫・ゆうべコンビニで買っといた」そう言って俺はコンビニの袋の中からパンツを取り出して見せた。 「おー、用意周到だね」とマリは笑った。 というわけで俺とマリは一晩でステディとなったようである。上妻と水城の顔が浮かんだ。次に会った時、異常な「好奇心」があいつらの顔に浮かんでいたら、どうやって誤魔化す?・・・いやいや何も誤魔化すこともないか。こういうところ、俺って気い小っちゃいんだよなあ・・・。いつも応援、コメント頂きありがとうございます。今日もよろしくお願いします。(^^♪