小説 「scene clipper」 Episode 34
小説 「scene clipper」 Episode 34 「水道道路レイバン事件」 ある年のある日。都内の某「〇〇〇ヶ丘高校」正門前、目の前に杉並区 と新宿区を結んで甲州街道と平行に走る「水道道路」がある。正式名を「東京都道431号角筈和泉町線」という。 この道は、かつて東京の広範囲に飲料水を供給するために設けられた淀 橋浄水場(淀橋は現在の新宿駅・西口の一帯・新宿区 西新宿を指す地域 の旧称)から杉並区の和泉給水所を結んでいた玉川上水新水路を埋め立 ててつくられたため、「水道道路」と呼ばれている。因みに、かのヨドバシカメラの屋号は旧地名「淀橋」に由来するのだ そうだ。 正門の前にバス停があって、リョウたちが通りかかると女子高生たち が、集まっていて何やらざわざわしてる。テレビかなんかの撮影でもしてるのか?と立ち止まってみた。 そこには、彼女たちの視線を一身に集めてる男が一人。バーバリーのコートをさりげなく着こなし、レイバンかけていて、そ れもキマっていた。ハードボイルドだ! そうだお前はゴルゴだ! 中野通りも近いこと だしさいとうプロダクションのスタッフが通りかかるかも知れない。 女子高生たちの熱い?視線を浴びた彼の思考回路は、きっと冷却ファン を必要とするほどにヒートアップしていたのかも知れない、いや、きっ とそうに違いない!その爛れそうに熱を帯びた思考が彼をして、何らかのパフォーマンスを 見せてあげなければ!それが彼女たちの視線に応えることだ!とでも行き着いてしまったのだ ろうか?アイドルでもないのに・・・ その時、夏でもないのに「アンパンマンみたいに飛んでみたら?」など という異常な妄想にとらわれつつあったリョウの目の前で、それは起き てしまった!彼の妄想がゴルゴモドキに移ったのか? 彼は跳んだ!片手をコートの ポケットに入れたまま歩道からガードレールを跳び越えて水道道路へ!そう、ゴルゴは、たとえモドキと言えどもバスなんか待っててはいけな いんだ! そうだタクシーに乗ろう! 選択は正しかった・・・だが着地がまずかった! ガードレールは予想外に高かったのだ。彼は、あろうことかガードレールに足を引っ掛けてしまい、顔面から着 地したのである!! 無残!!慌てて起き上がった彼は、愚かにも女子高生たちを振り返っ た。 私は目撃した。レイバンは片方だけそのままで、もう片方は真ん中で折 れ曲がり今にもズレ落ちそうだ。 おまけにレンズも無くなっている!なんという哀れな姿!! 女子高生たちの溜息は、大爆笑に変わった。頬のすり傷も痛々しいレイバンの男は、丁度通りかかったタクシーに助 けを求めた!さらばだゴルゴ未満の男よ! お大事に・・・以来、笹塚を中心に「レイバン事件」は長く語り告がれ ていく・・ 広めたのは誰だ・・・? 「リョウさんしかいないでしょ!その時目撃したのはリョウさんなんだ から!」 マリと水城が声を大にしてそう決めつけるのだが 二人のこの見解を、私は未だ、認めたわけではない・・・ 女子高生なのかも知れないじゃないか・・・。 何時も応援、コメント頂きありがとうございます。 今日もよろしくお願いします。