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うたのおけいこ 短歌の領分

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2009年11月24日
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カテゴリ:シネマ/ドラマ
今年のNHK大河ドラマ「天地人」が、11月22日の「いい夫婦」の日(・・・別に関係ないけどうっしっし)、ついに完結した。

詳しいレビューは、楽天ブロガー仲間ののの雪さんのブログや、そこに付けられた多数のトラックバックに譲るとして、本当にすばらしい一年間だった。

直江兼続という人は、あの天下分け目の関ヶ原の合戦の口火を切った「直江状」という激烈なアジテーション・ビラ(アジビラ)を書いた人として、歴史ファンには夙(つと)に知られており、この時代を扱ったこれまでの大河でも毎回必ず登場していたが、やはり藩主・主君たる上杉景勝の陰に隠れて、かなり地味な存在だったのは否めない。

中央公論新社の、あの詳細厖大な「日本の歴史」にも、もちろん登場はするが、扱いは地味である。

関ヶ原で、結果的に敗者となった西軍側(豊臣方)に付き、危うく取り潰しこそ免れたが、一藩の安泰をも危うくしたという、政治家としての致命的な判断ミスも相まってのことである。

やはり、悲劇的な生涯であるという傾きは、どうあっても拭い去れないだろう。

その人に、初めてスポットライトを当てたコンセプトがまず新基軸で、意外性があった。

その悲劇的な境遇にありながら、決して捨て鉢になることなく、精いっぱい生き抜いて世のため人のために尽力した「愛と義の人」の生涯が、くっきりと浮き彫りにされたといえる。

主役を演じた妻夫木聡が、これ以上ないぐらいのはまり役で、同時代の誰もから好かれ尊敬され一目置かれたと伝えられる知将を具現化してくれた。

僕の考えでは、この役を演じられる男は、日本演劇界にもう一人だけいたかも知れない。
先日、大往生で天寿を全うされた森繁久弥の若い頃である。
森繁氏の30~40代ぐらいなら、見事に演じられただろう。

直江兼続は、口下手な社長に代わって大企業・上杉家を取り仕切る、智謀・教養・実務能力を兼ね具えた実力派筆頭専務といった役回りの人であったといえる。

豊臣側に付き、石田三成と刎頚の友となり、太閤秀吉にも重く見られたいきさつは、ドラマの展開を見ながら十分納得できた。

むろん脚色はあろうが、確かに、大筋あんな感じだったのだろうと思われた。

信長という巨人に射竦(いすく)められ、その天下を継いだサル殿には垂らし込まれ、その寵臣・石田三成と肝胆相照らすようになっていく過程は、全く無理からぬ運否天賦というべきであり、次第に家康と敵対関係になってゆくのも、やむを得ざる仕儀であった。

・・・いったい誰が、敢えてこの流れに抗し得たであろうか?

ところで、歴史上の巨人・徳川家康が、これほどはっきりと敵役・悪役として描かれたのも、大河史上初めてではないだろうか。

山岡荘八の大著「徳川家康」以来、隠忍自重と果断実行の大いなる偉人のイメージが定着しているだけに、この思いっきりDONな人物造形にはビックリした。

松方弘樹が、東映任侠映画の大親分のノリで、ケレン味たっぷり貫禄十分に演じ、文句なし、さすがの名演だった。

・・・あんなヤツに本気で睨まれたら、まず助かる見込みはあるまいショック

見ていて息苦しくなるほどの狸親父の実悪ぶり、折しも天下を制した小沢一郎氏と二重写しに見えたのは、僕ばかりではあるまい。

最終回で描かれた、臨終間近の家康を、兼続と独眼龍・伊達政宗が(うち揃ってかどうかは知らないが)見舞ったのは、史実であるという。

そこで、あのような会話が交わされたのも、十分にあり得たことだと思った。

役者同士の火花が散った、見事なエピローグだったといえる。

思えば、太閤秀吉の晩年には、無益と言わざるを得ない朝鮮の役や、無慈悲・無思慮な近親者の排除・失脚・処刑、また大阪城築城はともかくとしても、途方もない贅沢三昧やモラルの荒廃など、豊臣政権の信望はすでに地に墜ちており、長年の戦乱に疲弊しきった全国民にも厭戦気分が浸透し、社会の安定を切望していた。

関ヶ原前夜ともなれば、着々と諸大名・小名を掌握しつつあった家康の物言わぬ「義」の方が遥かに広汎な民心を得ていたと思われる。

家康の信仰・浄土宗も温和な教えで、無理がなかった。その後営々と制度を整え、儒教の朱子学を公式イデオロギーとして、政権の正統性も獲得していった。

秀吉が、いわば現在の内閣総理大臣に当たる関白まで上り詰めた以上、豊臣政権の正統性に問題はないとは言え、兼続や三成の言うところの「義」は、成立していたというにはどうも無理があり、抽象的観念に過ぎるのではないかな~と思いながら見ていたが、やはり歴史は収まるべきところに収まったのであろう。

徳川260年の天下泰平は、やはり伊達ではなかったと思った。





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最終更新日  2009年11月25日 15時23分44秒
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