カテゴリ:古今憧憬
藤原高子(ふじわらのたかいこ、二条の后)
雪のうちに春は来にけり 鶯の冰れる涙いまやとくらむ 古今和歌集 4 雪の残っているうちに春はやってきたのだなあ。 ウグイスの氷った涙を 今は春が融かしているのだろうか。 註 藤原高子:清和天皇女御(にょうご)、のち陽成天皇の母(皇太后)。武家の棟梁・清和源氏の祖となった。 入内(じゅだい)する前の、在原業平(ありわらのなりひら)との悲恋で知られ、この歌も、「鶯の冰れる涙」あたりが、その心情を忖度されつつ読まれるのは、惻隠の情というものであろう。 (や)とくらむ:「融かすのだろう(か)」の意味か。 ただし、文法的にはやや微妙な問題もある。「らむ」は動詞・助動詞の終止形に接続する(例外として「あり、をり、はべり」などのラ行変格活用動詞は、その連体形に付く)ので、この「とく」が他動詞か自動詞かは判別できない。 他動詞とすれば、主語は「春」、目的語が「涙」で前述の意味。自動詞ならば、主語が「涙」で「融けるのだろうか」の意味になるが、全体の文脈から見て、前者の他動詞と見るのが穏当か。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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