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うたのおけいこ 短歌の領分

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2011年04月05日
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カテゴリ:シネマ/ドラマ
日曜夜、いつものようにNHK大河ドラマ「江 姫たちの戦国」の第12話「茶々の反乱」を見た。

結論からいうと、かなり楽しめた。「評判悪いけど面白い」というpopy5333さんの意見に一票。

評判が悪いのは、ひとえに田渕久美子原作・脚本の時代考証・歴史解釈(歴史改変・・・捏造?)が奔放すぎる、あるいは戦国時代を描くのに現代の民主主義・男女同権的な価値観を安易に持ち込みすぎているといった側面であり、「フェアリーテイル(お伽話)ファンタジー大河」と揶揄されていることにも、かなり同意する。

今回も、身分こそ高いが寄る辺なき哀れな孤児(みなしご)の三姉妹が、秀吉に反抗して「ハンガー・ストライキ」だって!?
深く考えなくたって、それ絶対あり得ませんから。

田渕氏が、古代ギリシャ喜劇、アリストパネス「女の平和」を読んでいることは分かったが、これを戦国乱世に換骨奪回するのはどう見ても強引すぎると思った。

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・・・とはいうものの、「NHKスペシャル」の歴史捏造・政治的偏向問題などとは異なり、娯楽時代劇としては、諸手を挙げて賛成とまでは言わないが、ストーリーの膨らませ方としてはギリギリ受忍限度内といえるかな~?
ホームドラマ風予定調和的な展開だったが、面白かったことは面白かったし、クライマックスでは泣けもしたので、まあ今回は不問に付すとしよう。

・・・すいません、なんで俺こんなに上から目線なんだろ?うっしっし

閑話休題、それにひきかえ、役者の演技面では今年の大河は相当スゴイなと思う。

まず、なんと言っても岸谷五朗の“チョイ悪”秀吉。
全てのシーンで、一挙手一投足、一台詞一表情に至るまで研究し計算し尽くされ、ほとんどの芝居においてリアルさの上に微妙なデフォルマシオン(意図的誇張)を乗せていることがありありと分かる。
気合い入りまくりである。

それでいて、全体の間と流れは全く不自然さがなく、超スムーズ。
かねがね上手いとは思ってたが、ここまでとはね~。
独壇場ではないか。こりゃ「男杉村春子」だと感服。

多少やりすぎ・作りすぎ・コミカルすぎという意見もあるし、見る人それぞれの好みもあろうが、何せまだまだ伸びしろのある演技派俳優の岸谷のことである。あまたの名だたる歴代名優が演じてきた豊臣秀吉という「超大役」を演じるに当たって、これぐらいやらなくちゃ埋没してしまうぞよ~という、芸能「業界」的な玄人筋の評価の“大人の事情”があることも斟酌しなくては気の毒であろう。

そういった消息は、どこの世界にもあることだ。
わが「歌壇」(短歌業界?)といえども、もちろん例外ではない。

俵万智さんが「サラダ記念日」を引っ提げて颯爽と登場した直後、たちまち多数の熱心な信者を獲得する一方、守旧派のバッシングたるや凄まじいものがあり、25年経った今もなお記憶に新しい。

「こんなものは短歌でない」という、旧陸軍内務班系、もしくは小姑お局さま系の定番新人若手いびりはもちろんのこと、「いい子ぶりっ子」などの人格攻撃や「タヌキ顔のクセに~」なんていう顔面攻撃まであり、俵さまフリークの僕としては同情を禁じえなかったびっくり

当時、誰が俵さんをいじめたか、ファンはきちんと記憶している。
その後、声望高まる一方の歌の女神の前に、理不尽な攻撃者は全て滅んだ、自滅した。

ちなみに、当時も今も歌壇重鎮の岡井隆「未来」主宰が、俵さんをいち早く評価して、自らも批判者のとばっちりの火の粉を満身に浴びた武勇伝は、改めて特筆大書に価するといえよう。

この事績によって、岡井氏の選歌眼も評価されたという「逆七光り効果」があったのは事実と思う。

このように、誰が勝利者であるかは、時の流れが解答する。
表現者は、すべからく気を強く持つべきだ。
気が強いことは、あらゆる表現者の「いろはのい」の要諦である。

現在では、思想史的な観点から、俵さんはたった一人で「反体制的な全共闘運動の余燼とジェンダーフリー・フェミニズムにとどめを刺したジャンヌ・ダルク」といったあたりが、彼女の驚異的な業績の最大公約数的評価であろう。
このように、新基軸には賞賛と批判は常に付いて回る。岸谷も戦っているというべきだ。

ともあれ、岸谷の表現意欲と意気込みを、もちろん僕は評価する。
まだ先は長い。彼の大胆な挑戦と冒険を温かく見守りたいものである。

そのやんちゃな秀吉の正妻・お寧を演じる、現在日本演劇界のトップ女優・大竹しのぶの落ち着いた演技も、定石通りながら巧まざる巧みの極み。
彼女の手綱の締め具合が、役柄の上でも演技の上でも成否を握っているといえる。

加えて、萩原聖人の、ちょっと気弱でオロオロしがちだが、ソツなく知的で気が利いて心優しいナンバー2の三成が、破天荒秀吉とのベスト・マッチングで、まさに天の配剤。

そしておあとに控えしは、北大路欣也の家康のさすがの貫禄。
ただ黙って坐って映ってるだけでも、何を考えているのか分からないが最後には必ず勝者となるだろうな~と思わせる圧倒的なカリスマ感を醸し出して、重量感溢れる人物造形。
・・・僕は性的には全くノーマルだが、こりゃ男も惚れますわ~うっしっし

石坂浩二の千利休は、この人については常に言われる通り、やや優男の二枚目にすぎるが、余人を以て代えがたいというほかはないハマリ役。現在のベストなキャスト。
・・・鑑定士・中島誠之助さんもご納得だろう。

そしていよいよ、輝く女優陣 おとめ座きらきら
鈴木保奈美のお市の方亡きあと、ここ2回ぐらいは実質的な主役といえる宮沢りえさまのお茶々様の、楚々として凛たる意志の強さを秘めた美しさが、もののあわれの極致。

最近少しダイエットしすぎではないかと、女性週刊誌などで陰口を叩かれていたりえさまだったが、この役柄には全くもってうってつけ・もってこいのはまり役となった。

・・・で、ここまで環境諸条件が整っていて、しかも今やおのれの掌中にある珠玉のごとき彼女を、手付かずでほっとくわけがないだろうな~と、完全に秀吉の目線に同化して見てしまった(笑)

そういえば、お市の方、淀殿(茶々)、お初の方、お江与の方(江)には、それぞれよく知られた立派な肖像画があり、今に伝えられている。
詳しくはないが、戦国時代当時の係累の女性の肖像画が、これほどまとまって残っているのは珍しいことなのではないだろうか。

やはり美人親子・三姉妹として当時から有名だったのだろうな~と想像を逞しゅうしてしまう。
江の肖像画も、剃髪後の晩年のものだろうが、当時の美人の条件である切れ長の眼と下ぶくれの輪郭を備えており、母・お市の方の面影も確かに感じられる気がする。
伝えられる通り、さぞや気が強くて気位の高いお姫様だったろうなと思わせる美しさと凄みを湛えている。敵に回したくない感じだ。

その江を演じている上野樹里さんは、今のところ錚々たる役者の芝居の狂言回し的な役どころであり、まあ当分はこんなもんでいいんじゃないんですか~と思って見ている。

わがまま勝気な次女の初姫は、後に天下を巡って対峙した徳川方と豊臣方の調停・つなぎ役に奔走した誠実・真摯さを思えば、たぶん史実の人物像とはまるっきり違うんじゃないかと思うが、演じている水川あさみさんは可愛くてキュートでお茶目、見ていて楽しい スマイル





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最終更新日  2011年04月26日 10時49分42秒
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