カテゴリ:近代短歌の沃野
佐佐木信綱 ゆく秋の大和の国の薬師寺の塔の上なる一ひらの雲 歌集『新月』(大正元年・1912) 註 今では、映画技法(カメラワーク)の用語を用いて「ズーム・アップの歌」といわれるようになった近代の名歌。格助詞「の」を6つも畳み掛けて、対象をぐんぐん絞り込んでゆく話法が斬新。 万葉集に詳しいブロガー仲間のけん家持さんに以前ご教示いただいたところによれば、この歌は志貴皇子の名歌「石走る垂水の上のさ蕨の萌えいづる春になりにけるかも」(万葉集 1418)の本歌取りではないかという。まことに鋭いご指摘であり、首肯できる。皇子の歌の方は視野の変化が「ズーム・ダウン」になっており、「(来る)春」と「行く秋」もちょうど逆の好対照になっている。万葉研究の泰斗でもあった作者による見事なパステーシュである。 国宝 薬師寺 東塔 ウィキメディア・コモンズ パブリック・ドメイン *画像クリックで拡大。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024年02月27日 04時47分24秒
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