7959744 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

うたのおけいこ 短歌の領分

うたのおけいこ 短歌の領分

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
2021年09月19日
XML
カテゴリ:近代短歌の沃野
梨1.jpg



若山牧水(わかやま・ぼくすい)


児等こら病めば昼はえ喰はず
       小夜さよ更けてひそかには喰ふこの梨の実を

こほろぎのしとどに鳴ける真夜中に
            喰ふ梨の実のつゆは垂りつつ



歌集『くろ土』(大正10年・1921)

子供たちがやまいで臥せっている手前
昼は食べられず
清らかな夜が更けてからはひそかに食う。
この梨の実を。

秋の虫がはなはだしく鳴いている真夜中に
食う梨の実のつゆは垂れつつあって。


こほろぎ:今でいうコオロギ類だけではなく、広く鳴く虫全般を指した古来の意味で用いていると見て間違いないだろう。

しとどに:はなはだしく。したたかに。ひどく。やや被害的な感情を含意する。ここでは、秋の虫が「うるさいぐらいに」鳴いていて、その合唱と夜陰にまぎれて、といった意味合いか。

垂り(つつ):現代語の動詞「垂れる」ではもちろんなく、中近世以降の「垂る」(下二段活用)でもなく、鎌倉時代頃までの、とりわけ(おそらく作者の意識としては)万葉時代(奈良時代)の上古語としての「垂る」(四段活用)の連用形なので、この形になる。
一種の古拙(アルカイック)な素朴さと格調を醸し出している。
私の印象では、牧水はこういった文法的な技巧に凝るのが好きで、かつ得意だったと思う。言葉に対して、今でいうマニアックな気質があったのだろう。詩歌人としては、なかなか幸福な資質である。


梨.jpg





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2021年09月21日 05時05分56秒
コメント(0) | コメントを書く


PR

日記/記事の投稿

プロフィール

くまんパパ

くまんパパ

コメント新着

くまんパパ@ ようやく暖かくなってきましたね(^^) やすじ2004さん、いつもありがとうござい…
くまんパパ@ もっと気楽に生きていいんだよ(^^) penchan929さん、やあやあ、お久しぶりで…
penchan929@ Re:大嶋信頼  無意識さんの力でぐっすり眠れる本(04/04) お久しぶりです。 最近はXに作品投稿宣伝…
くまんパパ@ アリでありつつキリギリス 七詩さん、本当にそうですね。 確かに、…
七詩@ Re:グリム童話、深いですよね(03/24) くまんパパさんへ 夢持つな欲は捨てろと…
くまんパパ@ まだまだけっこう寒いですね~ やすじ2004さん、いつもありがとうござい…
くまんパパ@ グリム童話、深いですよね 七詩さん、いつもありがとうございます(^^…

カテゴリ

バックナンバー

キーワードサーチ

▼キーワード検索

お気に入りブログ

気持ちのセンタクだ… New! ナイト1960さん

山形市野草園へ そ… New! masatosdjさん

散歩の時の風景とう… New! 蘭ちゃん1026さん

「白衣」その4 New! しぐれ茶屋おりくさん

雨降りは、やーがん… G. babaさん

アンティーク ミセスkarimeroさん

喜多麻呂君を訪ねて… けん家持さん

さくらの中の神戸ハ… 47弦の詩人さん

システムエンジニア… モモンガ2006さん
こだわる男の「モノ… こだわる男の「モノ&ファッション」さん

サイド自由欄

*このブログサイトは、ご覧の端末によっては管理者の意図するフォント(書体)やレイアウトが正確に表示されない場合があります。ご了承下さい。
なお、フォント表示の設定は、(ウィンドウズの場合)左下のスタート・アイコンから入って、設定(歯車)→個人用設定→フォント入力の画面で出来ます。


新宿会計士の政治経済評論
アトリエぺんちゃん
山下達郎 サンデーソングブック
松村邦洋 DJ日本史
東洋経済オンライン
世界は数字で出来ている
お料理速報
パンドラの憂鬱
Forbes スピリチュアルババア
goo 教えて!goo

© Rakuten Group, Inc.