カテゴリ:百人一首
小倉百人一首 八十六
西行(さいぎょう) なげけとて月やはものを思はする かこち顔なるわが涙かな 千載和歌集 929 思う存分嘆けと言って 月が私に物思いをさせるのだろうか (・・・いや、本当はつれないお方ゆえの憂いなのだけれど) 月のせいだというような顔つきをした私の涙なのだよ。 註 月やはものを思はする:擬人化された月を主語にして、「月がそのように思わせる(のか)」という構文になっている。 かこち顔:古文で一般的には「恨みがましく嘆いている・愚痴を言っているような顔つき」の意味になるが、ここでは本来の意味の動詞「託つ」(かこつける、ほかのもののせいにする、口実にする)の意味から「月のせいにするように装う、振りをする」という意味で用いており、全体の文意も凝った趣向になっている。 あまりひねりすぎない比較的ナチュラルな歌風の作者にしては、やや異色な一首と思う。彫心鏤骨の洗練された(ソフィスティケイテッドな)表現を好む選者・藤原定家の嗜好が反映されているようだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022年10月22日 03時00分25秒
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