カテゴリ:百人一首
小倉百人一首 八十
待賢門院堀河(たいけんもんいんのほりかわ) 長からむ心も知らず 黒髪のみだれてけさはものをこそ思へ 千載和歌集 802 末長く変わらないお心なのかも知れませんが この寝乱れた黒髪のように心乱れて あなたがお帰りになったこの朝は 物思いに深く沈んでいるのです。 註 恋愛の恍惚と不安感の両方を色濃く漂わせた妖艶な秀歌。 長からむ:末長いであろう(心)。「長から」は形容詞「長し」の未然形。「む」は推量の助動詞「む」の連体形で「心」にかかる。「長し」「みだる」は髪の縁語。 心も知らず:(あなたの)お心なのかも知れないが(よく分からず、確信が持てず)。「ず」は打消しの助動詞「ず」の連用形で、「人はいさ心も知らず」(紀貫之、小倉百人一首 35)などのように、多くの場合逆接のニュアンスとなる。 黒髪のみだれて:「黒髪が乱れて」と「黒髪のように心が乱れて」の両義を表わしている技巧的な言い回し。 けさ:後朝(きぬぎぬ、衣々)。男女が思いを遂げたあとの朝。 ものを思ふ:不安な物思いに沈む。憂愁(メランコリー)に沈淪する。今風にいうと「ブルーになる」か。「ものをこそ思へ」は、これを係り結びで強調した形。 * 与謝野晶子が、一世を風靡した第一歌集『みだれ髪』(明治34年・1901)で、タイトルをはじめ数首に引用・本歌取りしている。 くろ髪の千すぢの髪のみだれ髪かつおもひみだれおもひみだるる その子二十 櫛に流るる黒髪のおごりの春のうつくしきかな 髪五尺ときなば水にやはらかき少女ごころは秘めて放たじ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
October 23, 2022 11:08:06 PM
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