カテゴリ:現代短歌の曠野
紀野恵(きの・めぐみ) 晩冬の東海道は薄明りして海に添ひをらむ かへらな 第一歌集『さやと戦げる玉の緒の』(昭和59年・1984) 冬の終わりの東海道は ほのかに薄明かりして海に寄り添っているのだろう。 帰ろう。 註 作者の代表作で、現代短歌の傑作。 女性版塚本邦雄ともいうべき難解晦渋な歌が多い(そこが魅力でもある)作者にしては、割と分かりやすい一首といえよう。 かへらな:「新古典派」とまで称えられた作者の教養・歌風から見て、現代の関西弁の「帰らな(あかん)」ではないだろう。 「な」は「~しよう」。活用語(この場合は動詞「帰る」)の未然形に接続して、話者の意志を示す上古語終助詞。万葉集に頻出する。おそらく、奈良時代当時の口語だったのだろう。平安時代以降は「む」に取って代わられた。 東海道 富士山付近 / 薩埵峠(静岡県清水市)付近 ウィキメディア・コモンズ パブリック・ドメイン *画像クリックで拡大 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024年02月26日 02時55分56秒
コメント(0) | コメントを書く
[現代短歌の曠野] カテゴリの最新記事
|
|