「家電チェーンの舞台裏」と題して番組をやっていたのは、
カンブリア宮殿だった。
年商5239億円越えのチェーン店は、ノジマである。
私には、聞き覚えの無いお店の名前だった。
ここの経営戦略は、ライバルとは違うやり方で、業績を伸ばしているのだが、
その戦略とは、メーカーに媚びない、お客様本位の接客だった。
ノジマ流接客術その1は、メーカーへの忖度ナシ。
接客術その2は、お客様のベストを一緒に探すというもので、
何が欲しい?そしてその家電とお客様が目指すものは何か?
用途を聞くだけでなく、お客様の暮らしにマッチしているかどうかを考える。
例えばその家電を、昼使うことが多いのか、夜使うことが多いのか、
それによって家電の音が気にならないかを考える。
更には、家族構成やお手入れ法等々‥、
徹底してそのお客様に合った家電を探すのである。
一つの利点だけでなく、多方面の利点を一緒に考えてお勧めする。
ノジマの従業員に徹底した家電の知識が有るからこそ出来る接客業だ。
「今日、即決する気はなかったが、他店より接客はノジマが最高」
と言って、即決でお買い上げされたお客様は、満足して帰っていった。
これこそがノジマの、他店には真似が出来ないコンサル接客だ。
ノジマは神奈川を中心に、全国250店舗を展開している。
店舗の特徴として、とにかく品数が多い‥。
店舗によっては、マニアックなものを中心に販売しているお店もある。
お店によって、コンセプトが違うのである。
どうしてそれが可能なのか‥。
それは、社員に権限を渡したお店作りをしているからだ。
その上驚くことに、販売員や店に予算もノルマもないのである。
社長曰く‥、数字を追いかけてしまうと、
お客様に喜ばれない商品を販売することになるから‥ということだった。
社長は「売り上げを意識すると、最終的には成長が止まってしまう。
数字は結果であって、お客様に喜んでもらえばお客様は戻ってくる。」
という信念なのだが、中々それを実行できるお店は少ない。
なぜならそういう売り方をすると、
開業最初の数年間は、赤字になってしまうからである。
それを良しとするトップの経営者など、まずいないだろう。
少なくとも私は、聞いたことが無かった。
赤字でも焦らない経営なんてある?
普通は途中で、心が折れてしまわないか?
人には生活が有るわけで、最低限の生活の保障が無い状態が続いたら、
不安で押し潰されてしまうだろうが‥。
でもノジマの社長は、もっと長いスパンで、お店の経営を考えていた。
こんなにも肝が据わっている社長も、
実は若い時には、人の意見を聞かない独断専行の人間だった。
今でいうワンマン経営である。
しかも、社長は母親‥本人は、課長という身分にも関わらず、
ワンマンだったのである。
でもそのやり方で年商100億円越えまで会社を急成長させたのだが、
ある時彼に悪夢が来る。
社長である母親と弟が結託して、彼の経営権を剥奪してしまったのである。
彼なりに努力をしてきたのだが、後ろも見たら誰もついてこない状態。
そしてお家騒動に発展していってしまったのである。
課長の身分でありながら、ワンマン経営で急成長させてきた、
現社長のノジマさん。
でも、そのやり方が問題だったからこそ、母親も弟も彼から経営権を剥奪。
更に古参の従業員たちも、母親と弟側に付いてしまったのである。
彼は数ヶ月の間、引きこもりになってしまった。
でもその時間は、彼に自分の仕事の取り組み方を反省する、
またとない良い時間になったのである。
人を信頼しないで、経理から仕入れから何から何まで、
全て自分で切り盛りしてきて、実績を伸ばしてきた彼。
なので、自分と同じように出来ない部下を叱りつけることになる。
そういうやり方で実績は上がったが、誰もついてこなくなった時、
果たしてそのやり方でよかったのかどうか‥。
色々な本を読んで、彼は反省したのである。
経営は彼が抜けたことで悪化していった。
結局彼は戻ることになったのだが、戻った時には彼は全く違う彼になっていた。
そしてそれが現在のノジマを作り上げていったのである。
人は、時々自分を振り返る必要があると思う。
あえてその為の時間を作ることが、今後の自分の成長の幅に、
大きく影響を及ぼすことになる。
自分の生き方の点検‥時間を作って見つめ直していきたい。