カテゴリ:生徒に向けて
彼が僕に本気でやると宣言したのは11月だった。 それまでも、やっているのはやっていたが、ちょっと受験生って感じじゃなかったよね? 彼が宣言して、僕がそれに関してある提案をしたのだが、彼からの返事が「少し考えさせて。」だった。 確かにリスキーな方法だ。 即答できないのもわかる。 そうしているうちに、数日が過ぎ、僕はあせりを感じていた。 貴重な時間が減っていく。 彼が腹を決めてくれないと、ダッシュがかけられない。 11月の1日は、ものすごく貴重だ。 1日減るごとに合格率が2%ずつ下がっていく。 そんな数日間だった。 「先生。俺やってみます。」 やっとメールが来たことで、彼と僕の勉強が始まった。 僕は、それまで別の娘に大幅に時間を使っていたのだが、その子が合格を決めたので、今度は彼にかかることした。 11月から急上昇させないといけない。 本人は偏差値を30上げると言ってた。 30はちょっと大げさにしても、かなり上げないといけないのは明白だった。 まず、センターの過去問を解くことにした。 最初はものすごく間違いが多かった。 具体的には書けないが、もう確率に支配されているような得点だった。
でも、僕には少しだけ勝機があった。 1つは彼が元々賢かったこと。 もう1つは彼が誠実だったことだ。 それからは激しい勉強が始まった。 彼のブログに、「涙が止まらない…」「不安だ…」「苦しい…」というような文字が目立つようになった。 毎日メールのやり取りをした。 10月までのブログとは内容が激変した。 昼夜逆転で、塾で夜通しがんばる日が続いた。 毎日される質問の数も20問~40問と半端じゃない量だった。 僕もできるだけ彼の質問に答え続けた。 彼は少し甘えん坊でかわいいところがあるので、「次は何をしよう?」って必ず相談してくる。 そして僕が「あれとあれとあれ。」って言うと、彼は確実にそれをこなしていった。 努力に比例して成績が順調に上がり始めた。 彼は、そのことを素直に喜んでいた。 「先生、俺○○点、突破したよ。」 その点は、ハイレベルなみかみ塾の中ではまだまだ高い点ではなかったが、彼がきちんと自分と戦っていることを確認できて僕はうれしかった。 このまま行けば、2月に間に合うかもしれない。 そう思っていた。 薬大なので求められる偏差値は低くくはない。 そこまで上げないといけない。
その大学は、方式の関係で複数回受験することが可能だった。 1月の末と2月の末だ。 正直、僕は最後の試験に標準を合わせていた。 最後の1回だけにフォーカスする。 最後の1回以外は全部練習だ。 僕はそう考えていた。 最後の1回の倍率が何倍であっても、絶対に最後の1回で決めるつもりだった。 最後のテストで、偏差値70を超えること。 それが僕のプランだった。 まず、最初の試験が1月末に2回あった。 彼はそれを受験した。 「先生、俺悔しい。ケアレスミスをけっこうした。」 試験後、彼はそう言っていた。 「きわどいかもしれん。」 こうも言ってた。 「よし、次に行こう。」 僕の目標はあくまで最終試験だ。 彼が、今回のテストから、最終試験への教訓を学んでくれればそれでいいかと思っていた。 試験がすんで数日後。 彼が受験票を2枚持ってきた。 「他の大学の受験で家にいなくてパソコンが見れないから、先生に見て欲しい。」 「ああ、いいよ。」 その発表が今日だった。
昨日、つまり発表の前日に彼の書いたブログを勝手にコピーしたい。 勝手にはりつけるけどいいよね?
『他人の合格』 たまに他人の合格を聞く。
この記事を見て、感動した。 彼は、勉強しながら他人の喜びや悲しみを分かち合っていた。 出来なかった子のことを考え、涙していた。 とても優しい心の頑張り屋だった。 受験を通じて、彼は優しい心とがんばる心をの両方を学んだのだと思った。
彼は僕の予想をも超え、初めて受けた第一志望の大学に合格した。 しかも2日とも合格していた…
君? お疲れ様。 大学に入ったら、チャラチャラせずにいい薬剤師になろう。 他人のためにきちんとがんばれるいい薬剤師を目指そう。 なんのためにがんばったのか? 神様が君に何かを学ばせるためだよね? …きちんと学んだはず。 成長は永久に出来るんだから。 わかったね?
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Last updated
2007/02/08 12:50:00 AM
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