日々草

言葉が溢れ出ようとする時（コトちゃんの育児支援）

写真：公園で遊んだコトちゃん。後ろのベビィカーを押しているのは爺さんですよ。

コトちゃんは小柄な幼児であるが、見かけによらず丈夫で、保育園で伝染性の病気が流行っていても、軽くて済み、今のところ爺婆の育児支援の出番は極めて少ない。

昨日は久しぶりに育児支援となった。コトネのママが日曜日なのに１日研修の勉強に出かけ、パパは出勤したからである。

コトネは１歳１０ヶ月になり、すっかりヒトらしいコミュニケーションができる子どもになってきた。
まさに言葉が体から溢れ出ようとしている時期にさしかかっている。

爺婆二人で一人前と思って、コトちゃんのお守をするのだから、年寄りに過重な負担をかけるなと、若い夫婦に言い渡してた爺さん。自分が言い出した手前、自ら運転して車でコトちゃんを朝早く迎えに行く（日曜で朝ゆっくり休みたいにもかかわらず）。
帰り道すがら自然林の公園でお昼まで遊ぶ。ここまでは爺さん、コトちゃんを抱っこしたり、ベビィカーを押したり確かによく働いて下さった。

さて、お昼に自宅に帰り、昼食やらお昼寝やらとなったら、「子守はたいへんだ。疲れたから休憩時間にする。これからコーヒー店に行って来るワ」と言って、それっきり姿をくらましてしまった。（育児には休息はありませんぞ）
さて、てんやわんやのお昼ご飯の後、「お昼寝しよう」と呼びかけても「いやー」の連発で寝る体制になりそうもない。車のなかで３０分ほど寝たためか元気一杯なのである。

「糸巻き巻き」や「ひげ爺さん」や「大きな栗の木下で」や「むすんでひらいて」や「上がり目下がり目」などなど、この婆さんの知っている限りの手遊びをさんざんした後で、「本を読んで」となり「アンパンマン」の絵本で人物探しごっこをした後、「くつしたくん」という絵本を読むことになった。
ばあさんの膝にチョコンと座り（本を読んでもらう時は膝に座ることが習慣らしい）２回ほど繰り返して「くつしたくん」を読んだ。
えらく集中して絵本を見ている。
婆さんの方が、いい加減疲れ気味、気分が悪くなってきたので、「ねんねして読もうよ」といって私は横になる。
コトちゃんは寝るどころか益々元気になり、一人で、電気スタンドのスイッチを入れたり、切ったり、テレビやクーラーのリモコンのボタンをいじくりまわし、挙句の果ては目覚まし時計の針をくるくるまわしている。

しかし、ただ単にあちこち探索しているだけではない。
この婆さんに、「もう一回読んで」と、「くつしたくん」を読むことを要求する。読み終わると又「もういっかい」。繰り返すこと７回。何度も何度も繰り返して読むことを要求。

きいろい　くつした
たたた

あかい　くつした
ととと

やぁ　こんにちは

ブランコしよう
ブーラン　ブーラン

シーソーしよう
ギッタン　バッタン

ジャングルジムだ
のぼっちゃおう

ヤッホー　ヤッホー

あ、うさぎさん

うさぎさん　あれあれ
おみみが　くつしただぁ

きいろい　くつした
きゅきゅきゅ

あかい　くつした
きゅきゅきゅ

どう？
にあうかな？

コトちゃん、少し前には、この絵本に余り興味を示していなかった。

身体は部屋の探検に忙しく絵本の絵は見ていないけれど、耳は、ばあばの言葉に集中しているのがよくわかる。

「くつしたくん」になりきって、コトちゃんもブーラン、ブーランとかギッタン、バッタンとかヤッホーとか唇を動かしている。

１２ページのこの絵本。とても柔らかな線で黄色と赤い靴下が出会い遊ぶ。ストリーは単純だが、コトちゃんの日常体験をドラマチチックに展開していて、口から出始めた言葉が歌うようにリズミカルに並べられている。何度も何度も口の中で繰り返して飽きない。

コトちゃんの保育園での豊かな遊びの体験と言葉がしっかりとドッキングして、コトちゃんの体の中に沸き上がるように生まれ出た言葉。そのうれしさがコトちゃんの体から溢れている。


絵本「くつしたくん」への関心や興味の変化は、コトちゃんが言葉を獲得していく確かな道すじを、私たち大人の前に見せてくれている。
遊びの豊かな体験が、言葉と意味とをしっかりと結びつけて、生き生きと生きた言葉を自分の体内に蓄えていく。

幼い子どもの成長に接することは、明るく、
希望や元気を与えてくれる。

絵本:「くつしたくん」　ぶん；中川ひろたか　え；100％orannge