そんなぁ~!
楽しみには、自己満足がつきものですが・・・今日はそんな話です。 着物に目覚めたばかりの頃は、華やかな訪問着やかわいい小紋ばかりに目がい っていたのですが、ひとたび、織りの着物に目覚めてからの私は、若い頃から渋好 み! 色は、黒、紺、茶、グレーを中心に、柄は控えめ・・・というのが定番でした。 そんな時に、出会ったのが「吉澤与市」さんの着物でした。紬地に、染めや絞りを施 した、その着物のおもしろさに強く惹かれました。 私の中で「与市ブーム」が起こりました。 ちなみにこの頃は、「某着物チェーン」との関係が終わり、「呉服屋ジプシー」時代に 突入していた時期でした。 着物に関する一般的な知識も少しはつき、呉服屋さんに入るというハードルも跳び越 えられるようになり、立派な「呉服屋ジプシー」に成長していました。 すると、呉服屋さんによって、個性があり、並べている品物にも店の特徴がよく現れ ているということが分かるようになり、その呉服屋さんで商品を見ながら、いろいろな染 めや織りについてのお話を伺うのが楽しみになりました。 そんな時に、ある呉服屋さんで、「吉澤与市」さんの着物を多く取り扱っていたので す。「わー!こんな着物もあるんだぁ!」とますます着物の虜になりました。 そんな時に、気に入って求めたのが、この着物です。「吉澤与市」さんの着物です。 茶色の紬地に絞りと染めで菱や葡萄などの模様が入っています。枯れた感じの色に 惹かれました。 合わせた帯はこれ!「越前竹紙布」の帯です。藍を中心に、いろいろな彩りの糸が 織り込まれ、ざっくりとした風合いと相まって、私好み! ある日、褒めてもらおうと、仕立て上がったこの着物を着て、主人に、 「どう?いいでしょ?」と見せたところ・・・。 「なんだか、博物館にある、うんと昔の古い着物みたいだ・・・変な臭いがしそう」 と一言。 「そんなぁ・・・、もっと言いようがあるでしょうに・・・」 私の弾んでいた心が一気に萎みました。 その日以来、私の中でこの着物は「博物館の古い着物」という、暗い名前が付いて しまいました。