安全保障関連法案については、手続き上の問題点を7/20の本ブログで取り上げた。その中でも指摘した通り法案を適切な単位に分割し提出するべきであり、その条件が満たされてから審議すべきものと考える。
内容については問題点が多すぎて私にはまとめることは不可能なので今回は一番入口の問題を指摘したい。
まず、そもそも「なぜこの安全保障関連法案が必要なのか?」という点がほとんど説明されていないのではないか?
7/27に参議院平和安全特別委員会で「趣旨説明」が行われたが、平和安全法制整備法の提案理由は「我が国を取り巻く安全保障環境の変化を踏まえ…」、国際平和支援法の提案理由は「国際社会の平和及び安全に資することができるようにする必要があります」と説明している。
平和安全法制整備法の提案理由(1:00~2:30)、国際平和支援法の提案理由(6:20~7:10)
平和安全法制整備法の提案理由は「安全保障環境の変化」とさらりと流しているだけである。これだけ論議になっている法案がなぜ必要なのかという所なので最重要ともいえる。趣旨説明だからこれだけなのか?
あたかも「変化」が存在し且つよく理解されコンセンサスが出来上がっているように話している。何が・いつ・どの程度、量的・質的に変化したのか正確に把握しなければ正しく対処することはできない。そこを抜かして対処するのは無計画と言わざるを得ない。詳しくは防衛白書を見てねということなのだろうが、やはりその場合でもどう変化しているからこう対処するのが有効だという説明が必要な筈だ。
与党が説明するまで「どう変化したのか」追求すれば良いだけだが、先回りして推測すればこの点については7/28の参議院平和安全特別委員会で一応説明があった。この説明が納得できるものかはよく考える必要があるだろう。(2015/8/13修正)変化の一つは最近強調している中国の脅威の増大ということになるのだろう。
参議院平和安全特別委員会(2015/7/28) (中国脅威については11:30~30:00あたり)
中国の脅威については防衛白書を読んで分析すべきだが、おぢさんには荷が重いので断念。2015年版(平成27年度)の防衛白書は7/21に公表されている筈だが、防衛省HPでは2014年版が最新である(2015/8/2現在)。尚全国官報販売協同組合にて予約受付中である。平成27年版の防衛白書は防衛の当事者である防衛省も認める以上に中国の脅威が強調されておりとても額面通りに受け取ることはできないだろう。
防衛白書関係リンク
平成26年版防衛白書
予約 日本の防衛(平成27年版)
平成27年版防衛白書「日本の防衛」概要 第I部 我が国を取り巻く安全保障環境(2015年7月21日)(朝雲新聞社)
以下2014年度版からざっくりとイメージを掴める図を転載する。
中国への対抗勢力となりうるフィリピン軍、ベトナム軍は載っていない。
領海侵入は3年前の国有化を期に急増、以降漸減。強硬な対応が事態の悪化を招いていないか検証が必要。棚上げ状態を維持する努力が必要だったのでは?政権、事件はおぢさんによる追記。
政権による水増し疑惑があるにも関わらず、中国軍機に対するスクランブル増加は鈍化傾向。
冷戦期のピークの方がスクランブルが多い、過去の方が危機だったのでは?という疑問が沸きます。ロシア軍機に対するスクランブルも負けずに多い。
ロシア軍機の方が脅威じゃね?何で中国を強調するのか?総合的判断?それとも嫌中感情を見越してでしょうか。
この軍事費増大にまともに付き合っていくのか?中・露の脅威に対して米に追随し二極化に加担するのが本当に最良の選択だろうか?
膨大な債務を抱えつつ、防衛費をどこまで増やせば十分な抑止力が得られるのか?無計画でよいとはとても思えない。
2014年版を見ていて気になる記述があった。第I部の第2節に「冷戦終結にともない欧州地域でみられたような安全保障環境の大きな変化はみられず」という記述がある。防衛省はアジア太平洋地域に関して2014年までは安全保障環境の大きな変化は無いと認識していたということである。つまり変化はそれ以降ということである。