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私訳・源氏物語

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May 22, 2012
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カテゴリ:キリスト教関係

「だから明日のことまで思い悩むな。明日のことは明日自らが思い悩む。その日の苦労は、その日だけで十分である」(新約聖書マタイ伝6:34)

 何日か前に、恐山の坊主をゲストとした番組を見た。よく喋る坊主で、詭弁と感じる部分も多かったが「なるほど」と思う言葉もあった。彼は生きる上で「やりすごす」という言葉を提示していたが、上記マタイ伝の「明日を思い煩うな」と同義だなと感じた。

 これは一見「やさしさ」や「慰め」に満ちているが、問題を「明日」に先送りしただけで、実は悩みの本質的解決とはなっていない。

 解決を明日に引きのばしてやりすごしていると、常に「明日もまた思い煩う」ことになる。それでもこうしたレトリックともいえる文言に、かりそめにでも「やさしさ」や「慰め」を求めるのが人間であって、その求めに応じた振りをしているのが宗教なのであろう。

 ルカ15:11では「放蕩息子のたとえ」が述べられている。

 親の財産を兄弟二人で分割したところ、弟は家を出て行き「放蕩の限りを尽くして」全財産を使い果たし、喰うに困って親の元に帰って来る。父親は襤褸をまとった息子の哀れな姿を遠方から見つけ、大喜びして祝宴を開くのだが、長年贅沢もせず忠実に父親に仕えてきた兄は、(当然の事だが)不満を言う。

「このとおり、わたしは何年もお父さんに仕えています。言いつけに背いたことは一度もありません。それなのに、わたしが友達と宴会をするために、子山羊一匹すらくれなかったではありませんか。ところがあなたのあの息子が、娼婦どもと一緒にあなたの身上を食いつぶして帰って来ると、肥えた子牛を屠っておやりになる」

 私は「兄息子の言い分は尤もだ」と思う。
 ところが父親はこう言って兄を宥めるのだ。

「子よ、お前はいつもわたしと一緒にいる。わたしのものは全部お前のものだ。だが、お前のあの弟は死んでいたのに生き返った。いなくなっていたのに見つかったのだ。祝宴を開いて楽しみ喜ぶのは当たり前ではないか」(15:31)

 父親の言葉には包容力があるようにも解釈できるが、不平等で無責任だ。だからこれで兄息子の気持ちが納まったとは思えない。反論できない分だけもやもやとした思いが胸につかえて、腑に落ちないことだろう。

 しかし「説得力」がある。

 父親の言葉は現実的でも実際的でもないのだが、人を黙らせるだけの力があるのは確かなのだ。

「貧しい人々は、幸いである、神の国はあなたがたのものである。
今飢えている人々は、幸いである、あなたがたは満たされる。
今泣いている人々は、幸いである、あなたがたは笑うようになる。
......

しかし、富んでいるあなたがたは、不幸である、あなたがたはもう慰めを受けている。
今満腹している人々、あなたがたは、不幸である、あなたがたは飢えるようになる。
今笑っている人々は、不幸である、あなたがたは悲しみ泣くようになる。
すべての人々にほめられるとき、あなたがたは不幸である。」(ルカ6:20)

 この「幸不幸」についても、やはりすっきりしない。
 幸福であることが不幸をもたらし、不幸が幸福を招くとは、ずいぶん皮肉な解釈をするものだ。貧しく、飢えに苦しみ、悲しみに泣いている人に「幸いである」と説いたからとて、実際「幸福感」に満たされるものだろうか。

 私は新約聖書、特にイエスの言葉にこうしたレトリックを多く感じる。

 読み手によってどうとでも解釈できる曖昧な表現と、喩え話の一つひとつに強引な意味づけをする理屈っぽい新約よりも、人生の不条理をダイレクトに嘆き、訴え、そして諭す旧約の知恵のほうが、私の心にストレートに響くのだ。

......と書いてはいても、私は無神論者なのだ。






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最終更新日  March 5, 2017 09:58:31 PM
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