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私訳・源氏物語

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November 5, 2013
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11月3日、母が93歳になるはずの日に、納骨した。

局地的に大雨の予報が出ていたので、石材店主がテントまで用意してくださったのだが、
墓地は霞みがかかった程度で傘もいらず、
それでいてしんみりとして雰囲気のある空模様になった。

90歳を過ぎていれば大往生とは思うのだが、我が母親なれば格別な思いがあって、
ちょっとしたはずみにわけもなく涙が溢れ、困った事に自分の気持を持て余している。

人間は必ず死ぬのだから、安楽に母を死なせたいと思ったし、
その通りになったのだから後悔はない。

しかし日々衰えていき、目を開ける力もなく、
水を吸うことさえできなくなっていく母を見ているのは辛かった。

10月17日、午前9時4分絶命。

母の左の目じりから涙が一筋伝うのを見た時、
『老人介護の辛さは、死を看取るところにある』と、しみじみ思った。

翌日、湯灌の時刻には饗応夫人が駆け付けてくれて、
ありがたいことに最後まで私に付き添ってくれた。
家人はちょうど退院したところだった。

母には濃紫の総絞りの和服を着せて、
彼女が何より愛した庭の、栗の木の下で納棺してもらった。

秋の木漏れ日がやわらかで、化粧を施された母は生きる苦しみから解放されたからか、
あるいは敬愛する父に出会えたからか、
にっこりしているように見えたのが私には救いだった。

その後、思いがけない早さでこの土地が売れたので、
周囲の変化に私の気持が追いついていかなくなった。

この家土地を持て余しているのだから、母が亡くなった今、
雪が降る前にちんまりとしたマンションに引っ越ししたいという思いは
変わらないはずなのに、いざ売れてしまうと寂寥感で胸がいっぱいになる。

一日中太陽の当たる気持のいい居間、西日がきれいな広い玄関ホール、
特注したルーバードアの玄関収納、静かな寝室、見晴らしのいい食堂、
キッチンとの間仕切りにはヤマハの両面ハッチを奮発した。

黒いタイルにヤマハの白いホーローバス、
洗面台もお洒落で上品なヤマハの家具に拘った。

私が愛したこれらをみんな壊すのは、とっても辛い。

「家にも庭にも、無駄が多すぎる。何より、雪の心配が嫌だろう?」

家人の言う通りなのだ。

私が喪失感や寂寥感に襲われるのは、未練でしかない。それは分かっている。

私はまだ、気持の整理ができていないだけなのだ。
だから徒に悲しまないようにしよう。

そうして『時間が経てば、気持が浮き上がってくる』と考えることにしよう。

死別の悲しみは世の常なのだから。






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最終更新日  March 4, 2017 10:46:20 PM
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